■コラム「創造力の根っこ」VoL.26(06/02/2011)
鈴木淳平
マンガ・アニメは芸術・アート
マンガ・アニメは芸術・アートなのか!?
芸術・アートの定義は、創造された作品から鑑賞者が〔美〕を享受できたか、感動のエネルギーを表現者と共有できたかということになります。
マンガ・アニメが芸術・アートである理由は、表現者が創造した作品に鑑賞する受動者が感動したことで、芸術・アートの定義を満たせています。
芸術・アートを分類すれば音楽・演劇・絵画・彫刻・舞踏・文学に商業性を強く感じさせる建築・映画・放送・写真・デザインなど〔分野〕も様々で、さらに広がりクラブのV.J(ヴィジュアル・ジョッキー)を代表にPC(パソコン)を道具にし表現するものを加えれば多岐にわたり、多様性に富んだ表現活動も入ります。
マンガ・アニメはその代表格の一つとして日本に根ざし半世紀を超えました。
芸術・アートに数字を加えたマンガ・アニメ
芸術・アートにハッキリとした数字を加えたものがマンガ・アニメです。
マンガ・アニメからの感動は数値化され価値となり〔感動の変換〕を確認できるところが今までの芸術・アートよりも前面に出ているところかもしれません。
現代は芸術・アートといえども数字が決め手になることが多いのです。
マンガは、読者がどの位いるのか、発行部数でそれを知ることができます。
アニメは、視聴者がどの位いるのか、視聴率でそれを知ることができます。
同じように音楽で言えば〔小屋〕にどの位、鑑賞者が入場したか、CDがどの位の数売れたかでそれを知ることができます。
経済的な商業に結びつき数値化された価値に対価する芸術・アートは、時代の移り変わりを示しているという人も中にはいますが、古くから切っても切れない関係に芸術・アートと経済性はその形こそ違えど互いに支えあってきました。
作曲家はレコード・CDの無い時代には楽譜の売れ行きが生活の糧でした。
ルネッサンスの彫刻家や画家はパトロンに支えられ創造に集中できました。
芸術・アートのマンガ・アニメは商品
純粋な創作活動、表現活動に価値の対価は必要か?必要なのです。
芸術・アートは〔作品〕と言い、商業では製品ではなく〔商品〕と言うことからすれば、両者を関連させるべきでないと難色を示し避ける傾向が過去にありました。今も一部ではそれが正論のように想われていますが、果たしてそうでしょうか。
芸術・アートの定義から、表現者と鑑賞する受動者側とが〔感動〕を共有することで、その作品を所有したい欲求から需要と供給のバランスが成り立ちます。
表現者は、「感動を与える」ことで経済性を意識するようになります。
表現者が意図的(マーケティング)に受動者である鑑賞者に「感動を与えたい」と表現することこそ芸術・アートに経済性抜きには語れないことなのです。
感動を価値に変え共有する芸術・アートのマンガ・アニメ
経済が表面化する以上「感動を与える」は、いささか傲慢な聞こえ方です。
「感動を与える」が上から目線に聞こえ、「与える」という表現が上下関係を連想させるからです。
「共有する」とか「互いに」などの表現に置き換えることが大切な精神で、謙虚さと好感度を意識しなければ芸術・アートと経済性の商業に折り合いをつけることが難しくなり表現者にとって相手ありきの、必要な気遣いです。
「感動を互いに分かち合う、共有する」表現が芸術・アートの定義の通り、表現者は意図的に受動者との間に、需要と供給を心がけるようなるからです。
芸術・アートは表現者と鑑賞者の共同作業だと付け加えておきます。
鑑賞者が何を求め、何に対価させたくなるか。
表現者の創造力の根っこから湧き上がる発想・発意・創意の感性はエネルギーそのものであり、鑑賞者に共有してもらえるか悩む瞬間に意図が生まれます。
表現者は創造する表現物にエネルギーを移し宿らせ、そのエネルギーが鑑賞者へ連鎖されるか、感動してもらえるか、感動の字の通り〔表現者の感性エネルギーが鑑賞者へ移り動き、あらたな感性エネルギーが鑑賞者に湧き上がる〕ことで「感動」となり、エネルギーがインフルエンスし、感動の共有が起こるのです。
この作用を「娯楽」と訳すには少し抵抗のある〔エンターテイメント〕と同じです。
エンターテイメントと変わらない側面と本質の両面をもちあわせるのが芸術・アートのマンガ・アニメの最大の特徴です。
対価してでも鑑賞し感動のエネルギーを受け取りたいと感じさせるのです。
作品は商品に変わる
『印象派からMANGA派へ』で時代の移り変わりを感じ取りました。
マンガ・アニメはパソコン普及以前から日本で多様性に富む発想・発意・創意の宝庫として圧倒的に多くの名作を生み出してきました。
表現者と鑑賞者を感動の共有でつなげたマンガ・アニメは、芸術・アートの中でもシンプルに経済性の商業と密接に結びつける数字を全面に出してきました。
表現者が創造力の根っこから湧き上がった感性エネルギーによって創造する表現物で貪欲なまでにより多くの鑑賞者を獲得しようとする意図が原動力となることは他の芸術・アート作品を商品に変える行為と何ら変わらないのです。
芸術・アート作品は商品に変わり、その価値は対価させる額が決めるのです。