■コラム「創造力の根っこ」VoL.29(09/01/2011)
「漫画の歴史」 鈴木淳平
国宝になっている戯画(漫画)の存在に驚きます。
平安時代から明治維新、戦後から復興後の団塊ジュニア誕生の1970年代初頭くらいまでが〔漫画〕と漢字で表現していた時代だったといえます。
一般的な常識に左右されずに、漫画のセンスを感じさせられるエポック・メーキングな漫画をとりあげながら漫画史を観るのも楽しいものです。
現在、漫画を大方、マンガと表現するようになったのは、加速した情報化時代とマスメディア化したアニメ(アニメーション)の影響が大だと感じます。
漫画からマンガに、マンガからアニメに発展し、それぞれがさらに進化し続けている漫画・マンガ・アニメ文化の歴史を観ることにします。
漫画の揺籃期(ようらんき)
「マンガの歴史」と打ち込めばGoogle検索オプション:約67,500,000件とウィキペディア:「日本の漫画の歴史」がネットに引っかかります。
詳しく知りたい人は検索してください。(ウィキペディアは以降Wikiと記します)
・国宝の漫画
「日本の漫画の歴史」によれば、「滑稽な絵という意味での「漫画」は、平安時代の絵巻物・『鳥獣人物戯画(鳥獣戯画)』が日本最古であると言われている。」とあります。テレビでも度々登場するカエルやウサギの漫画です(欄外参照)。
平安時代の12世紀中頃〜13世紀中頃のものだそうで国宝です。
ガガでなくギガ(戯画)が、たわむれに描いた漫画の始まりのようです。
〔鳥獣を人物に見たてた〕ところが以後の漫画文化の要となるポイントです。
紀元前6世紀頃の古代ギリシャの「イソップ物語」を髣髴とさせ、6世紀の時空を超えギリシャから遠い日本の平安時代によみがえった感じがします。
シルクロードを伝わり日本にイソップ物語がもたらされた可能性を否定できない氣がしますが、人の想うことは古今東西共通のHumour(ユーモア)があり、また必要だとつくづく感じさせてくれます。
・浮世絵も漫画
〔歌川 国芳(うたがわ くによし、1798年1月1日(寛政9年11月15日)1861年4月14日(文久元年3月5日〉)は、・・・同時代に活動した葛飾北斎や歌川広重らの人気絵師に比べ、日本における知名度や評価は必ずしも高いとは言えなかった。「幕末の奇想の絵師」として注目され、再評価されるようになるのは20世紀後半になってからである。〕とWikiにあり、人の顔を奇想天外に裸の人たちを組み合わせた浮世絵で知られています。
Google検索オプション:約321,000件でした。(欄外参照)
〔鳥獣を人物に見たてた〕平安時代から6世紀後の18世紀末、江戸時代になると、今度は〔人の顔を人でみたてた〕当時の江戸庶民の一般的な、いでたちを表現しているところに斬新なアイディアを感じ、よく見ると手も同じように表現しています。
この裸体の人たちを組み合わせて人の顔にした浮世絵とよく似た絵画が16世紀のルネサンス後期あたりのイタリアに観ることができます。
「ジュゼッペ・アルチンボルド(Giuseppe Arcimboldo,1527年-1593年7月11日)は、イタリア・ミラノ出身の画家。」(Wikiより、検索オプション約14,300件)の作品です。(欄外参照)
アルチンボルドは人の頭を果物や野菜を組み合わせて描き、4つの絵を『四季』というタイトルで絵画として描き残し、後世のわれわれも楽しむことができます。
かつて澁澤龍彦が1970年代にその著作の中で、これだったか似たものだったか記憶がかすんでいますが紹介していました。
・明治維新から戦後の挿絵(漫画)
『さわるな危険!宮武外骨・〜反骨の闘士 時代と格闘す〜』(NHK、『歴史秘話ヒストリア』、2009年7月1日放送)で紹介された「明治〜昭和期のジャーナリスト」の宮武外骨(みやたけ がいこつ、慶応3年1月18日(1867年2月22日)-昭和30年(1955年)7月28日)が、明治34年(1901年)に大阪で創刊した有名な『滑稽新聞』で腕の良い挿絵職人に依頼した数々の〔風刺挿絵(漫画)〕が〔1コマ漫画〕としてファンを魅了し発行部数を増やしたことで分ります。
すでに〔異才能クリエーター集団〕として分業化が行われ、外骨がプロデュースし挿絵家に指示し描かせた〔1コマ漫画〕が功を奏してかなりの売れ行きになった『滑稽新聞』だと、歴史秘話ヒストリアでもWikiでも披露されています。
放送があった2009年7月の検索オプションでは約74,500件でしたが2011年8月には約141,000件となっていますのでNHKの影響力もさることながら、宮武外骨の命を賭したジャーナリストとしての正義感と情熱が〔1コマ漫画〕に、にじみでていると感じます。
漫画に貫かれる精神がいかに重要で氣高きものであるか理解できます。
・戦後の漫画(劇画)
『ねじ式』が、「つげ義春により1968年月刊『ガロ』6月増刊号「つげ義春特集」に発表された短編漫画」(検索オプション約3,460,000件、Wiki『ねじ式』)と漫画を知る上で語り継がれている名作です。
「漫画を語るなら『ねじ式』読んだよね」といわれたくらい漫画の代表作です。
漫画は、文化を感じさせながらどこかその業績を低く見られがちでした。
漫画は、文字と違いビジュアル情報を瞬時に理解できる強みがあります。
西洋での絵画としてアルチンボルドの絵を漫画と決め付けるのに異論を挟む人がいるかもしれませんが斬新な発意が間違いなく漫画の基本であり人類に笑いと潤いを提供し多大な貢献をしてきたことが漫画なのだと感じさせます。
マンガとして市民権を得る〔夜明け前〕が漫画の時代だったといえます。