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コラム「創造力の根っこ」VoL.41(9/02/2012)

『おばけ屋敷』の復活 ゲーム時代−2               鈴木淳平

 「ドラキュラ、やってみろ」と企画会議後、決定のGOサインを聞き驚きました。
どうすればよいか尋ねると「自分で創れば!」と直属上司から、なんともストレートで明解な〔やさしい〕返答でした。(商品化決定ではなく開発GOサインでした)
その後約半年、集中と〔自発〕によって商品化・発売まで、勢いがつきました。
(おもちゃの企画開発の基本は、莫大な投資額を必要としないものあるので商品化して市場にその答えをきくのが正しい意思決定者の仕事です)(当時)

競合調査―想い当たる売り場に足を運ぶ
―市販のゲームを買って家族や友人、皆で遊んだ受け身から、今度はゲームを創り、買って遊んでもらう仕掛け側に変わる自分を感じながら―
当時、東京中心部で盤ゲームを販売している店は、六本木に専門店(今はありません)、大手百貨店、おもちゃ専門店など数十店。『ドラキュラゲーム』の競合商品と想う、売り場にある盤ゲーム・ボードゲームを、もれが無いように徹底的に列挙し、その数、121点と記憶します。(パソコンが普及していない時代です)

競合分析―日本国内で入手できるボードゲーム、すべてを遊ぶ
遊んだことのないゲームは、サンプルとして買い社内領収書で落とし、土日になると自宅に友人たちを招きゲームに興じ感想を聞き、数週間位、就業時間中も遊びゲーム分析の長短所、共通点、特長を競合商品分析表に書き出しまとめていきました。すでに遊んだことのあるゲームがほとんどでした。

今憶えば、2、3歳ころから、メンコ・ビー玉・ジャンケン・双六(すごろく)や『バンカース』、正月には「百人一首」と「坊主めくり」に、花札遊び、家族麻雀を小学3年頃覚え、「セブンブリッジ」、「ナポレオンゲーム」、「うすのろまぬけ」などのトランプ、白と黒を逆転させる『オセロ・ゲーム』、インドで生まれた『チャトランガ』が西のヨーロッパで『チェス』に、東では『将棋』になったと薀蓄しながら両方を当たり前に遊び、比較的新しい海外の『モノポリー』、『リスク』、チップで遊ぶ「ルーレット」、「ダイス(サイコロ)ゲーム」などのカジノゲーム等々、真剣に遊ぶゲームっ子(ゲーマー)だったのが、運命的で、合っていたのかもしれません。

競合商品分析表

等、比較表に競合商品を網羅したことから、達成感でスッキリしていました。

『ドラキュラ』を、どんなゲームにしたら買って遊んでくれるか?
答えは、競合分析の現場(競合商品)にあり、偶然性から能動性へ、でした。
マーケティングの他社競合リサーチ・分析は、「非常識を常識にする、過去の延長に未来は無い」を心得た、非常識から常識が生まれる第一歩になります。
競合商品のゲーム進行方法は、圧倒的にサイコロ・ルーレットが多く主流でした。当時、水道管カードをつなぎ合わせ競う『水道管カードゲーム』が『ドミノ』を想わせ、スペイン語の「1」の意味の『UNO』カードゲームも元のゲームに新しさを加えアレンジし違った遊びに見え、ヒットしました。単純さが面白くヒントでした。
カードゲームの夜明け
コマの運命をサイコロ・ルーレットの偶然性に託すゲーム進行が多いことに着目し新しいゲーム進行を提案すれば他社競合と区別(差別)化したゲームになるると想い始め、「これからのゲームは、サイコロ・ルーレットの偶然性からプレイヤーが自分でカードを選ぶ能動性のゲームが流行る。」と決め込むようになりました。
ボードゲームと表記せず、選んだカードでコマを進める特長をカード3枚の扇型にカードゲームの表記を強調する、パッケージの底面以外の5面に〔見える化〕したことの原点がこの発想からでした。(前述の添付写真、拡大で見えます)

処女作の『ドラキュラゲーム』から『おばけ屋敷ゲーム』を経て『Dr.スランプ アラレちゃんゲーム』、1,000円の廉価版ボードゲーム『パーティ・ジョイ・シリーズ』も含めゲーム進行方法でカードを活かし、数年後、後輩が自販機で買う『カードダス』を大ヒットさせ、1980年代が、カードゲームの夜明けです。

ドラキュラ〔らしさ〕とは?
ドラキュラの〔らしさ〕は、吸血鬼ドラキュラが人の血を吸い生き永らえ、太陽の光に絶命し、ニンニクと十字架に弱く、ドラキャラが眠る不気味な城、対決・退治に行く勇敢な人の物語などです。誰もがドラキャラに抱く〔らしさ〕だと想います。
〔らしさ〕を融合させ醸(かも)し、再現すれば〔怖いもの見たさ〕の子どもたちも、喜んで買ってくれるはずだと。数分でコンセプトに置き換わり納得していました。

キャラクター・ビジネスの三要素(前述)の、〔名=ネーミング=商品名〕、〔絵=ヴィジュアルパッケージ〕、〔中身=コンテンツ=ゲーム内容〕は、ドラキュラの〔らしさ〕を想うことから生まれた理念です。
ゲーム世界観に感情移入し〔なりきる〕プレイヤーを想い浮かべたコンセプトと商品化の結果が比例する良い例を経験し多くを学べました。(続く)