藝術系か工学系か?デザインの2極性
鈴木淳平
科学万能?のこの時代、デザインは、感性(美)なのか?科学(機能)なのか?
感性(美)と科学(機能)を融合・調和させた〔機能と美の間〕を感じとる目の肥えた、それを知る能力をもつ消費者・生活者は増え続けています。
感性が主体の藝術系、科学が主体の工学系、言い換えれば右脳型、左脳型かを知ることにつながり答えが見えてきそうです。
科学流行り
3.11以降、とくに科学万能の傾向がより強くなりました。
公知の〔放射能〕を科学的な表現の〔放射性物質〕と言い、汚染された地域、家や屋根、校庭を除染する、水で放射性物質を洗い流せば消えそうだと誤解を招くような報道がこの2年間、あちらこちらで観られました。
未だに〔放射能〕を消せず海にも漏れ被災者と一般人を苦しめ続けています。
難しく感じさせる表現の放射性物質、知らないよりはマシな専門用語をもち出す、その道にだけ詳しい専門家や加害者側の人たちが科学的見地に助けられている一方、感覚的に危険性を感じている被災者と一般人は救われていません。
工学系の科学的発想に客観性はあるか
科学万能の現代、デザインでも無駄をなくした機能美や人間工学に裏打ちされたフォルムなど、確かに客観的な数字が説得力の基本であり、デジタル社会も手伝って優勢のようです。人間の科学に、本当に客観性などあるのでしょうか?
実証科学と言われ仮説を実験、観察し実証するプロセスにおいて、つきつめれば観察者の意識が実験結果を左右すると言われています。
[科学者の役割とは、自分を離れた「あちら側」をできるだけ客観的に観察することにある。客観的な観察とは事前に何の偏見も持たずに観察するということだが、偏見(意識)を持たずに観察することなど人間には不可能で、そう考えること自体が物ごとを意識した見方(偏見)となってしまう。観察するという行為には必ず意識がともなうからである](出典:欄外)と。(ハイレベルなケースの話です)
藝術系の感性的発想に説得力はあるか
デザインに悩み右往左往した日々の後、最初に〔ひらめき〕・直観・インスピレーションでイメージしたアイディアに巡り巡って辿りつくことが往々にしてあります。
鋭い感性による問題発見能力と問題解決能力を有効にするのは右脳のなせる技です。右脳の能動的・主体性による意識が創造力の根っこを正常に働かせ感性を養っているからこそ直観・インスピレーションが湧いてくるのでしょう。共通言語化と同じヴィジョン化し共感を得るものに仕上げる能力も感性を培わなければなりません。作家的な独りよがりにならず多くの人が賛同してくれるデザインを感性は説得力をも感性で補えるのでしょうか。工学の数字は、万国共通言語と同じで説得力があり分かりやすく共感しやすいのかもしれません。
左脳と右脳の作用
〔「…人間の脳の左半分と右半分は、機能の仕方が違うことはよく知られている。
左脳の機能は身体の右側をコントロールし、ものごとを理性的、論理的、機能的に考えることを優先する。
いわば技術系や理工系タイプに多く、古典物理学やアインシュタインの考え方がこれに合致し、物質先行型という欧米科学の原点ともなる。
対する右脳の機能は身体の左側をコントロールし、思考体質が直接的かつ情緒的で、ものごとを巨視的なパターンでとらえることを優先する。
いわゆる芸術家や文科系タイプに分類され、東洋哲学(仏教)やボーアの
「コペンハーゲン解釈」でいう思考体質に適合する。
こう見ると日本文化は完全な右脳型といえるが、車が欧米とは逆の右ハンドルであるのは、もしかするとそれゆえかもしれない。〕(同上、P123)
引用でも理解できる通りまさしく、芸術系は右脳型であり工学系は左脳型です。
右脳型か左脳型か、見きわめ方
デザイン授業でも習った記憶が蘇ります。左右の指を濡らし、ざらついた紙をこすれば右脳型か左脳型かを知ることが出来ます。(詳しくは欄外)
カワイイは右脳、クールは左脳
右脳は女性的、左脳は男性的と言われる傾向があります。
女性的なカワイイの表現を好む人は、右脳型の人が多いのかもしれません。
男性的なクールの表現を好む人は、左脳型の人が多いのかもしれません。
左脳は、デジタル的で、経済など数式で成り立つと思い込み、損得の計算を働かせそうで、動物の〔爬虫類(はちゅうるい)〕のドラゴンや「龍」に例えられます。
右脳は、アナログ的で、幸福など直観や感情などの感覚を働かせ、動物の〔哺乳類〕のマウスや「牛」に例えられます。
やっかいでありすごいのは、右脳左脳両方が我々の脳に存在しているのです。
進化の歴史や過程を見るようですが多様性と言いかえることも出来ます。
一人の人間のデザインに関する可能性は藝術的でも工学的でもありうることを裏付けています。工学や芸術を超えた脳の中に答えがあるということです。
動物の脳でありながら機能は、植物の〔意思〕のような脳
太陽光のエネルギー変換効率の比較で植物の光合成は、動物である人が造った太陽光発電パネルよりも優れ真似のできない合理性と調和を備えています。
工学系のデザインは、数字など科学的に調合された養分を、藝術系のデザインは、直観など本能的に必要な養分を創造力の根っこが吸い上げますが、動物よりも植物の成長をイメージする方が脳を理解しやすいのかもしれません。
手法・プロセスに差はあっても説得力あるデザインを上げるには、効率良い多くの葉が生い茂る植物のような養分の取り方を目指すべきではないでしょうか。
工学系にも藝術系にも創造力の根っこをのばすことです。専門的になり過ぎずまんべんなく太陽光を浴びる植物のように総合的なバランス・調和こそがデザインの合理性であり理屈抜きに説得力につながる時代だと感じます。
P20、『死後の世界をつきとめた量子力学』コンノケンイチ著、徳間書店刊、1996年出版
〔自分が右脳型か、左脳型か簡単に分る方法がある。
両手の人差し指の先を濡らして、ザラザラした紙の表面をなぞらってみる。
凸凹の感触がより明瞭に知覚される指の逆の側がそうで、左指が鋭敏な人は右脳人間で、逆の場合が左脳人間となるわけである。〕
P123、『死後の世界をつきとめた量子力学』コンノケンイチ著、徳間書店刊、1996年出版