■増子瑞穂さんの「キャスター・マッシー通信」連載 - 3(12/20/2003)
マッシーこと増子瑞穂です。
暮れも押し迫ってきました。
この時期になると年賀状の事が気掛かりなんですけれども例年の如くまだ手をつけていません。早々と準備ができる人になりたいと毎年思ってるんですけどねぇ。
さて前回は緊迫の生放送のスタジオをご紹介しました。
今回はちょっと一息ついてゆったりしたお話を、その名も「東海道ぶらりうなぎ旅」です。いえ、これ一応ちゃんとした仕事なんですよ。
展示会場などで流される地上デジタル放送向けのプロモーション映像で、映像にデータ放送をリンクさせた試験映像コンテンツで、・・・まあ難しい話は抜きにして
今回は、2泊3日の「東海道ぶらりうなぎ旅」ご堪能下さい。お腹が空いてくるかもしれませんよ。
11月27日曇り AM8:00日本橋
東海道の起点、日本橋から旅は始まりました。最初の収録は日本橋を背景にこの旅の主旨説明です。『ここ日本橋から静岡、名古屋と、東海道を旅しながら各地のうなぎの魅力に迫りまーす。楽しみ!』でもこの時点ではうなぎは食べられませんでした。残念。しばしおあずけです。
日本橋で簡単なコメントを収録したのち、スタッフはロケバスに乗り込み一路、東海道を西へ。ディレクター、カメラマン、音声、VE(ビデオエンジニア)そしてリポーターの私という5人体制です。
AM10:00 静岡県沼津市 東海道 原の宿(はらのしゅく)さすが静岡、富士山が大きく見えます。毎日こんな立派な富士山を見ながら生活していたら人間大きくなりそうだなと思いました。
さあ待ちに待った初うなぎです。ここではうなぎの代名詞、うな重をいただきました。
うなぎを頭を取って背開きにし焼いた後、蒸して蒲焼きにしたものをご飯の上にのせる、おなじみのうな重。この調理方法は関東風なんだそうです。
ちなみに関西風は、うなぎを頭をつけたまま腹開き、白焼きの後、蒸さずにご飯の間にはさみこむそうです。まむしとよばれています。
さてこの蒲焼き、目からウロコの美味しさです。当たり前なんですけど、うなぎも魚なんだと実感しました。うなぎそのものの白身の甘さが口いっぱいに広が ります。普段スーパーで買って食べているうなぎの味は、タレの味がするだけなんだということが分かりました。
●蒲焼き
11月28日晴れ AM9:00静岡県浜松市 東海道舞阪の宿
静岡県浜松へ移動。浜名湖の辺りは関東風と関西風の境目といわれているそうです。
不安だった天気も二日目は快晴。午前中は浜名湖近くの養鰻場(ようまんじょう)へ取材に行きました。
うなぎの養殖は二重構造のビニールハウスの中に水を循環させて行われます。中の温度はなんと35度。この日の気温はだいたい13度前後でしたから私は ニットの上下にコートを羽織っていました。前後の映像のつながりもありますからここでだけコートを脱ぐわけにもいきません。顔から吹き出す汗をなんとか おさえつつ撮影していました。
ところがここでトラブル発生。湿度の高さと気温の変動でカメラが止まってしまい電源も入らなくなってしまったのです。
中のテープを取り出す事もできません。一瞬、現場に緊張がはしりました。
中のテープが湿度でくっついてしまうとこれまで撮影してきたものが台無しになってしまいます。一旦ビニールハウスの外にカメラを出し、電源が回復するのを待って、中のテープを避難させました。
人間は暑かろうが寒かろうがなんとか我慢できますが機械はそうはいきません。テープは大事にはいたりませんでした。
ハラハラしながらも、この日もうなぎをちゃんといただきました。二日目に食べたのはワサビ醤油につけて食べる白焼きです。上品でいて香ばしく日本酒にぴったりの味でした。
●うなぎの白焼き
11月29日霧雨 AM10:00 愛知県名古屋市熱田区 東海道七里の渡し
旅もいよいよ大詰め。三日目に名古屋まできました。
この日は 蓬莱軒という「ひつまぶし」で有名なお店を訪ねました。三度美味しいといわれているひつまぶし、皆さん食べた事ありますか。食べ方がとてもユニークなの です。
お櫃に1合強のご飯、そして細かく刻まれたうなぎがぎっしりのって運ばれて来ます。ごはんの間にもうなぎが混ぜてあります。関西風のまむしをアレンジし たものだそうです。
●蓬莱軒のひつまぶし
このひつまぶし、まずはお櫃の中を4等分にします。一杯目は4分の1をお茶碗に入れてそのままいただきます。強火でカリッと焼き上げてあるのでなんと香 ばしい事!また、細かく刻んであるのでご飯となじみ、とても食べやすいのです。あっというまに一杯目は食べてしまいました。
続いて二杯目、今度は薬味をかけていただきます。写真左から刻み海苔、ワサビ、あさつきです。うなぎにネギ!?と半信半疑でいただいたのですが、これが なんとまあさっぱりとしていること。味わいをより奥深いものに変えてくれます。
いよいよ三杯目。薬味をのせたものに「おぶう」というダシをかけます。うなぎ茶漬け、いわゆる「うな茶」です。強火でカリッと仕上げてある理由がここにもありました。熱々のダシをかけてもうなぎがしんなりしないのです。うなぎの香ばしさそのままにうな茶を楽しめます。ああ至福の時。
のこる4分の1は・・・好きな食べ方でいただくそうです。私はちゃっかり最後の一杯で3種類の食べ方をさせてもらいました。
『3度美味しいと言われているひつまぶし、人それぞれの食べ方によって4度5度6度美味しいひつまぶしでした!』率直な感想です。
●3杯目のうな茶
この蓬莱軒は創業130年の伝統あるお店です。
伝統と格式を誇るお店ながら女将の鈴木せき子さんはとても親しみやすく、和やかな名古屋弁を話されるかたでした。
女性の年齢を公表するのは気がとがめますが失礼を承知で・・・女将さんはなんと82歳!お若いでしょう。
毎朝うなぎの肝を二つ、生のまま飲んでいるとか。そのためか眼鏡なしでもよく見えるし、歯もすべて自前だそうです。
名古屋の蓬莱軒に行くと、にこやかに「おいりゃあすばせ」(名古屋弁でいらっしゃいませ)と出迎えてくれます。
●蓬莱軒女将 鈴木せき子さんと私
とまあ2泊3日の「東海道ぶらりうなぎ旅」、食べてばっかりで気楽な仕事、と思われても仕方がないのですが食べながら的確なコメントを言うのも結構大変なんですよ。
本来、私は美味しいものが大好き。本音を言うと美味しいものは黙々と食べたいのです。とはいえこれは仕事。カメラの動きや状況を見ながら、コメントしながら、でも心密かに楽しませていただきました。
美味しい食べ物と美味しい空気、美しい風景で癒されたのもつかの間。先日は過酷な中継の仕事をしていました。中継はスタジオを上回る緊迫感があります。年末も中継があります。
年明けは中継の仕事についてお話しできると思います。次回もどうぞお付き合いください。
では皆さんよいお年を。
2003.12.14
増子瑞穂
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