■増子瑞穂さんの「キャスター・マッシー通信」連載 - 47(9/29/2007)
「よい道具」
育児生活が始まって1年。先日、お陰さまで息子が無事1歳の誕生日を迎えました。
育児ほど多くの道具を使う仕事はないと日々感じます。哺乳瓶、おしゃぶり、抱っこひも、ベビーカー、ベビーラック、月齢に合わせたおもちゃなど。数えあげたらきりがありません。この1年、育児用品の事故も目立ちました。ベビーカーの折りたたみ部分に幼児が指を挟み切断するという事故。お風呂用の浮き輪に乳児を乗せたまま目を離し、溺れてしまうという事故。マッシー通信でもとりあげましたが、ベビーカーをドアに挟んだまま電車が発車する事故もありました。つい先日もまた同じようなベビーカーの事故が起こってしまいました。
様々な事故が起こったときにまず問われるのは親の責任です。「子供から目を離さない。」鉄則のように言われます。確かに、危険と思われる場所で子供から目を離さないのは当然のことです。
しかしこの1年で実感したことですが、1日24時間、1分1秒たりとも子供から目を離さないなんてことは、とうてい無理です。親だって食事もすれば睡眠もとりトイレにも行きます。たまにはゆっくりトイレに入りたいものです。
でも子供は、まばたきしているようなほんの一瞬のあいだに、こちらが想像できないようなことをします。そんな親の目が追いきれない部分をよい道具は助けてくれます。
例えば、まだ危険がわからない乳幼児を危険な場所に近づけないようにするためのベビーゲートやフェンス。我が家にも、気づかないうちに外に出てしまわないよう窓のところにひとつ、火を使う台所にひとつ、ゲートを設置しています。少なくともまばたきしているような時間の事故は防げると考えています。
しかし何でも道具に頼ればいいというわけでもありません。ここもあそこも危険と全てを囲ってしまい子供を閉じ込めてしまうと、逆に子供の発育を妨げてしまいます。子供は様々なことを経験して危険を知り、学習していくからです。またどんなに優秀な道具でも使い方をあやまれば、危険なものになってしまいます。そして、道具を過信しすぎないことも大切です。使うだけで、子供が安全で健やかに成長する道具などありません。子供を育てるのは道具ではなく、親や周囲の人間の愛情だからです。それは24時間子供から目を離すなということとはまた違います。愛情あってこそ、よい道具はその機能を発揮するのだと思います。
今は、モノが氾濫し何でもネット上で手に入る世の中です。企業も事故を起こさない道具をつくる努力が必要ですが、その一方で、親も本当に必要な道具を選び、見抜く目が必要になってきます。
子供が生まれてからの毎日。よい道具を吟味し失敗もしながら、友人や地域の人々、そして夫に助けられた1年でした。
2007.9.28
増子瑞穂
●窓際のベビーフェンス。日に日に知恵がつき、これがないとあっという間に窓を開けて脱出してしまいます。