■増子瑞穂さんの「キャスター・マッシー通信」連載 - 49(11/30/2007)
「使わない」
また今年も残り少なくなってきました。街はクリスマスムード一色でにぎやかですね。
休日、夫と息子の3人で買い物に行きました。デパートでの出来事。5階の紳士服売り場で買い物をして、1階に戻ろうと下りエレベーターを待っていました。4機ならんだエレベーターのうち、1機は車椅子・ベビーカー優先エレベーターです。ベビーカーに息子を乗せて買い物をしていた私たちは優先エレベーターの前で待っていました。しかし、いくら待っても昇りも下りも優先エレベーターは満員。ベビーカーや車椅子の買い物客に混じって一般の人も多数乗っていました。何台も満員の優先エレベーターを見送ったあと、たえかねず「優先エレベーターなので、エスカレーターを使える方は譲っていただけると助かるのですが。」とお願いしました。つとめて丁寧な言葉使いを心がけたつもりですが、降りる人は誰一人いませんでした。それどころか「いったい何を言っているんだ」という冷ややかな目すら感じました。優先エレベーターは目の前で閉じ、また見送ることになりました。私は憤りや悔しさを通り越して、悲しくなりました。
デパートやスーパーなどに設置されている障害者用の駐車場でも似たようなことが起こっています。実際に障害者の人が車を止めることができるのは少ないとか。店の入口付近など、障害者用の駐車場は便利な場所に設置されていることが多いためか、一般の人が利用してしまい、本来利用するはずの障害者が使えなくなってしまっています。一般の駐車場は幅や奥行きが狭く、車椅子の人が車を乗り降りするのは困難なのだそうです。
電車やバスの優先席などでもしかり。電車やバスの場合は、「譲るのが恥ずかしい」、「譲ることが失礼にあたるのではないかと思ってしまう」などの声も聞かれます。その気持ちもわかります。しかし、積極的に「ゆずる」という行動に恥ずかしさを感じる人でもできることがあります。
それは優先エレベーターや障害者用の駐車場などを使わないようにすることです。その場所を必要としている人、そこでなければ困るという人がいることを理解してもらい、「使わない」という選択をしてもらえるととても助かるのです。
私の住んでいる最寄り駅には1カ所しかエレベーターが設置されていません。そのエレベーターの近くで現在、超高層のタワーマンションが建設されています。完成は再来年か、またその先か。近い将来、人口がぐんと多くなるのは確実です。冒頭のようなことが改善されなければ、たった1カ所しかないエレベーターに高齢者やベビーカーはますます乗れなくなってしまうでしょう。その頃には私のベビーカーでの子育ては終わっているかもしれませんが、なんだか今から気が気でなりません。
2007.11.29
増子瑞穂