■増子瑞穂さんの「キャスター・マッシー通信」連載 - 53(03/30/2008)
「3人乗り」
季節はすっかり春になり暖かくなってきましたね。桜、思う存分楽しみましたか。日芸でも大勢の学生が新しい生活に胸おどらせていることでしょう。保育園や幼稚園でも入園の季節を迎えています。
この春から、自転車の3人乗りに対する取り締まりが厳しくなるといいます。前後の補助椅子に子供2人を乗せて自転車をこぐ母親、という光景を見たことはありませんか。違反すると2万円以下の罰金または科料にするそうです。
もともと3人乗りは以前から禁止されています。ひもなどを使って一人をおんぶし、補助椅子にもう一人を乗せた3人乗りを認めている自治体はありますが、前後に補助椅子を使った3人乗りは違反。しかしこれまで黙認されて来たのが現状です。現に多くの母親がこの方法で幼稚園や保育園の送り迎えを行ってきました。同じところに通わせている年子や双子の場合もありますし、やむを得ず別々の保育園に通っている場合もあります。また赤ちゃんを自宅に置いていくのは危険なため、送り迎えに連れて行く場合もあります。
この3人乗りの取り締まりに対して、2人以上の子を持つ母親達から猛反発の声があがりました。いったいどうやって子供を保育園や幼稚園に送り迎えしたらいいのか。
たとえ近い距離でも、小さな子供は歩くよりも自転車に乗せた方が安全なことが多々あります。小さな子供は信号が赤だろうと車が迫ってこようと急に飛び出します。たくさんの荷物を持ってそれぞれの方向に走り出そうとする子供の手をひきながら目的地まで歩かなければならないなんて非現実的です。いったい保育園や幼稚園までどれくらい時間がかかることでしょう。
この3人乗りの取り締まりは少子化対策や子育て支援と逆行しているように思います。また車を使えばいいのではという意見もありますが、全ての人が車に乗れるわけではありません。我が家も車を所有していません。現在子供は1人だけですが、自転車の3人乗りができないとなると、2人目が生まれたときどうやって生活していけばいいのか私には想像できません。
これら母親達の反発を受けて、安全に走行できる3人乗り自転車の開発ついて今後検討されることになりました。お母さん達の声で、世の中が少しでも動いたというのはうれしいことです。安全性の高い3人乗り自転車の開発。まるで軽井沢セミナーのテーマになりそうです。マスコミでも現在開発中の3人乗り自転車が紹介されていましたが、いずれも数万円から十数万円と高価。子供を育てるだけでもお金がかかるのに、これではますます子育て中の家庭は苦しむことになります。少子化にも拍車がかかることでしょう。
確かに3人乗りが危険をともなうことも事実です。ならばまず、安くて安全な自転車を開発するとか、自転車専用レーンを整備するとか、子供用ヘルメットを助成するとか。法律で取り締まるよりも先にできることはあるのではないでしょうか。3人乗りが危険だからといって、様々な事情を考慮しないまま法律で排除すればいいってものではないと感じます。
将来、自転車メーカーで3人乗り自転車をデザインすることになるかもしれない学生の皆さん。是非とも機能的でローコストで、そして何よりも安全性の高い3人乗り自転車を開発してくださいね。子育てに奮闘している卒業生からのお願いです。
2008.3.28
増子瑞穂
■3人乗りの自転車のイメージ図
(ランドウォーカー社/丸石サイクル)は朝日新聞=asahi.comにあります。
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