■増子瑞穂さんの「キャスター・マッシー通信」連載 - 58(08/30/2008)
「いっぱいカバンにつめて」
夏休み。夫の故郷であり、私も中学高校時代を過ごした新潟に新幹線で行ってきました。この夏に我が家に仲間入りしたベビーカーもこの旅に同行。以前使っていた大きなベビーカーは、新幹線ではデッキや一番後ろの座席の下に申し訳なさそうに追いやられていました。ベビーカーを席から離れた場所に置かなければならないことにもやきもきしていましたが、今回からは家族と一緒に席で過ごせることに。コンパクトに畳めることの良さをあらためて感じました。
さて、比較的バリアフリーが進んだ新幹線。ですがベビーカーに不向きな車両もあります。意外と大変なのがMAXの2階建て車両。2階の座席にいくには階段を上がらなければなりませし、1階に行くにもらせん状の階段を下りなければならないのです。1階といってもデッキから見て半地下になっているのですね。ホームでベビーカーを畳んで乗れば少しはスマートに乗車できるのかもしれませんが目の前には子供の憧れのマト、新幹線。いまにも駆け寄りそうな勢いです。恐ろしくてホームでベビーカーから子供をおろせません。車内に乗り込むまでは子供はベビーカーにしっかり座らせたままでいたいものです。この日はMAX1階の指定席をとっていました。車内に乗り込みドアが閉まったのを確認。そして狭いデッキでベビーカーから子供をおろして、ベビーカーを畳んで、子供の手をつないで荷物抱えてらせん状の階段を下りることに。これがひと苦労。席に子供を座らせるとドッと疲れがでます。ホッとしたのもつかの間。らせん状の階段が面白いらしく今度は階段をのぼったりおりたりを始めます。揺れる車内で階段に付き合わされるのもヒヤヒヤものです。2階建て新幹線、見ごたえあるし子供は大喜びなんですけどね。子連れベビーカーに優しいのが、昔ながらといいましょうかフラットな1階のみの車両。車内での移動が楽です。席でぐずられてもすぐにデッキに移動することができます。車両によっては3人掛けのシートの後ろよりが2人掛けになっていて座席一つ分スペースがあるところがあります。ここを指定で選ぶことができれば乗るときも座席のところまでベビーカーで行ってからゆっくり畳めるし、降りるときもベビーカーに子供を乗せて準備ができるので助かります。それにしても小さな子供を連れての長時間の電車での移動。なかなか大変なことが色々あります。
2歳の女の子と2人で石川県の金沢に帰省した友人の話しです。東京から金沢へ列車で行くにはまず、上越新幹線で新潟県の越後湯沢まで出てから、越後湯沢と金沢を結ぶ在来線に乗り換える必要があります。地図上に弧を描くように大回りしなければなりません。
金沢での夏休みを満喫し、こちらは戻ってくるときのこと。今年は豪雨が多く、金沢でも川が氾濫するなどの被害がでました。その日も雨の影響で越後湯沢までの在来線が徐行運転をしなければならず、電車に遅れがでました。そのためあらかじめ指定席をとっておいた東京行きの新幹線に間に合わなくなってしまったのです。そうなると指定席は無効となってしまい、次の新幹線の自由席に並ばなければなりません。お盆シーズン、もちろん次の新幹線の指定席もいっぱいです。
彼女は2歳の子供とベビーカー、子供の着替えやら食事、おもちゃなどがいっぱいつまった荷物を抱えて、越後湯沢駅の階段を上り下りし在来線から新幹線に乗り換えたそうです。もちろんおなじような境遇の他の乗客も自由席を確保するため猛ダッシュで乗り換え。子連れだからといっても誰も優先してはくれません。乗り継ぎの時間も短く、エレベーターを使っていたら自由席に座れないばかりか新幹線に乗り遅れてしまいかねなかったそう。おかあちゃん何ともお疲れさまな出来事です。
新幹線の車両や駅構内はかなりバリアフリー化が進んでいます。けれど新幹線の駅構内に辿り着くまでが大変なのが現状です。新幹線の停車駅に住んでいる人はそう多くないことでしょう。階段しかなかったり、エレベーターの設置場所が電車の乗り換えに不便なホームの端っこに追いやられていたり。乗り換え時間の厳しさもまたしかり。そして気持ちも。たくさんのおもちゃや食べ物を用意して荷物が大きくなるのも子供が騒いで周りの人の迷惑にならないよう配慮してのこと。おもちゃも音がでないものや、飽きてしまわないようページ数の多いかさばる絵本など工夫が必要です。狭い車内で長時間おとなしくなんてしていられないのが小さな子供。しかし、ぐずった子供とその親への冷たい視線のいたたまれないことといったら。そんな子供たちを温かく見守る気持ちが増えれば、子連れの荷物も心も軽くなるのかもしれません。
2008.8.30
増子瑞穂
● 狭い2人掛けの座席に大人2人と子供1人ベビーカー1台。
● 座席一つ分スペースがあるだけでいろいろ助かります。