■増子瑞穂さんの「キャスター・マッシー通信」連載 - 59(09/30/2008)
「イッタラのタンブラー」
先日、息子が2歳の誕生日を迎えました。誕生日プレゼントにお絵描き用のおもちゃ(磁石式のペンで絵を描いたり消したりできるアレ、とでもいいましょうか)とグラスをひとつ買いました。
グラスはフィンランド、イッタラ社のアイノ・アールトのタンブラーです。最近の北欧インテリアブームも手伝って扱う店も多く、インターネットでも簡単に手に入ります。2歳になるとスプーンやフォーク、ときにはお箸を使って食事が上手になってくるころです。それでもまだまだ遊び食べをする月齢でもあります。手づかみでご飯を口に入れたり、お味噌汁の中に手を突っ込んでみたりするのは日常茶飯事。納豆を握りしめられたりするとさすがにグッタリします。そんなベトベト、ギトギト、ヌルヌルの手で飲み物の入ったコップを持つとスルッ、ヌルッとグラスを落としてしまいます。お茶や牛乳もこぼれ怒りとともに脱力します。牛乳も値上げの波が押し寄せているのですよ。
でも、このアイノ・アールトのタンブラーは波型のデザインが指にフィットし、ヌルヌルの手でも持ちやすいのです。ガラスの厚みも4ミリあるのでとても丈夫で割れにくく気軽に使えます。飲み物もこぼれにくく家計にも優しい?です。
このタンブラーは今から75年以上も前にデザインされました。デザイナーのアイノ・アールトは建築家アルヴァ・アールトの奥さんでもあります。アイノ・アールトのタンブラーは1936年のミラノトリエンナーレで金賞を受賞し、今も世界中で愛され使われています。現在、日本での価格は1個1000円前後。万が一、子供が割ってしまったとしても何とか涙をのむことが出来る価格ではないでしょうか。
実はこのアイノ・アールトのタンブラー、お恥ずかしながら数年前の私の結婚式の引き出物にもなりました。はっきりとは覚えていないのですが、当時はもっとリーズナブルだったような。(来賓の皆さんすみません)その頃は子供も使いやすいことに気がつかなかったのですが、子供がいる友人から「子供の手に馴染みやすい。すべりにくくていい」と言われたのをうっすらと覚えていたのです。今、自分の子供に使わせてみて、なるほどと実感しました。引き出物にはグリーンを選びましたが、今回は飲み物の色がわかりやすいクリアを選びました。
子供が使うものだから、取っ手がついているキャラクターのついたプラスチック製のコップでもいいのかもしれません。でも少しずつ、いいもの、デザインの優れているものにも触れてほしいのです。幼い頃から日常的に目に映るもの手に触れるものは子供の心に残るのではないかと思っています。
それにしても色んなものが値上げされていますね。ボックスティッシュも以前と変わらない値段だと思ってよくよく見てみると枚数がガクンと減らされています。値上げの波は北欧デザインのインテリアにも。いつかダイニングにヤコブセンのセブンチェアが欲しいと思っているのですが、さすがに今はとても買う気になれません。息子の怪獣ぶりは増すばかり。セブンチェアにクレヨンでなぐり描きをされて平静でいられる自信もありません。いずれはと夢に思っているのですが。手元にある1988年のインテリア誌に掲載されているセブンチェアの価格は2万5千円。現在の価格はこの夏、さらに値上がりして6万円前後。この20年で2倍以上に跳ね上がりました。買えるようになる頃にはいったいいくらになっているのでしょう。少し怖くなります。
75年も前にデザインされたアイノ・アールトのグラス。彼女がデザインした機能的なグラスは、時代も国も超えて、怪獣の子育てを手伝ってくれています。
2008.9.29
増子瑞穂
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●小さな子供の手でも持ちやすいデザインです。