■増子瑞穂さんの「キャスター・マッシー通信」連載 - 61(11/30/2008)
「手のひらに夢を」
ベビーカーや子供乗せ自転車など、毎日のように使う育児アイテムは色々あります。おもちゃの中で今一番お世話になっている育児アイテムはというと、我が家では間違いなく「トミカ」でしょう。
朝、目が覚めると息子はかならずトミカのあるところへ一目散に向かいます。十分にトミカで遊んでから昼寝をするときも、寝室へ必ずトミカを2、3台持っていきます。そして夜、寝るときも。その日によって手にするトミカは違いますが、お気に入りはバスのようでかなりの確率で手にしています。子供によってバス派、乗用車派、建設車両派と様々なようです。IDの学生だったころ、カーデザイナーを目指し車のスケッチをする同級生の姿を毎日のように見ていました。卒業から10年以上経った今。あの頃と変わらずこんなに毎日いろんな種類の車を見ながら過ごすことになるとは思いませんでした。
今から38年前の1970年8月、ミニカーの「トミカ」は誕生しました。当時1個180円。現在は378円ですから今も昔もお財布に優しい価格設定になっています。安全性や強度の面からドアミラーなどの外付けパーツを省略していますが実車のイメージを大切にしながらスケールダウンしています。回転可能な車輪や開閉式のドアは子供の遊びの幅を拡げます。なによりも国産車を中心としたラインナップは、普段街中を走っている車を自分の手にする喜びを子供たちに与えてくれます。トミカの大きさはおよそ7.5センチ。「まだクルマの運転ができない子どもたちに夢を与えよう」というコンセプトのもと、子供の手のひらに乗るサイズを絶対基準としたそうです。息子の手のひらにもいつもトミカが乗っています。現在、市場に出回るトミカは120種類と決められています。毎月のように新しいトミカが発売されますから、その数だけいくつかのトミカが姿を消します。ほかにも車メーカーではない企業・団体とのコラボレーションによるトミカや、期間限定・頒布場所限定のトミカ、ご当地トミカにトミー社長の結婚式の引き出物トミカなど。市場に出回らないものも数多くあります。子供だけではなく大人も夢中になる人が多く、すべてのトミカの完全制覇を目指すコレクターはさぞかし大変なことでしょう。
トミカで遊ぶ子供の姿をじっと観察していて気がついたことがあります。床で遊んでいるときは腹ばいになり、テーブルの上で遊ぶときもかなり身をかがめて低い姿勢になるのです。そう、トミカの高さに目線を合わせて遊んでいるのですね。これは普段彼が道路で見ている自動車の目線と同じ。1メートルに満たない子供の目線は自動車よりかなり低いのです。実際に道路で子供の目線までかがんで、走る車を見てみると迫力があります。目線をトミカに合わせて遊ぶことで、普段見ている車の迫力をトミカで疑似体験し楽しんでいる(らしい)のです。日々、新しく買ったりおさがりをもらったりして増えつつあるトミカ。熱心なコレクターは傷やホコリ、湿度や日光にも気をつけて保管しているそうですが、我が家では傷も色落ちも気にせずガンガン遊ばせています。そうやってトミカに我が家だけのプレミアをつけている、といえば聞こえはいいのですが、そうしないと私がトミカに夢中になりコレクションしてしまいそう。集め始めたらどんなに大変な思いをするか想像するだけで怖くなります。でもクリスマスプレゼントはやはりトミカにしようか。私が欲しいものを選べるのも、あれが欲しいこれが欲しいと具体的に言えない今のうちだけでしょう。
軽井沢セミナーで、徹夜で車をデザインしていた同級生の姿も思い出されます。(眠さをこらえて描いている彼のスケッチは、パッドから線があちこちにはみ出し火縄銃のようになっていましたが)卒業してカーデザイナーになった同級生たち。いつか彼らがデザインした車が街中を走り、さらにトミカにもなって自分の子どもの手のひらに包まれる、なんて夢のようなこともあるのでしょうね。
2008.11.29
増子瑞穂
http://members3.jcom.home.ne.jp/massyweb/
●同じ車種でもパトカーだったり乗用車だったり。とても楽しい。
●今年8月のトミカ博から。こんなに大きなクレーン車だって、
●自分の手のひらにおさまるのです。うれしいですよね。