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増子瑞穂さんの「キャスター・マッシー通信」連載 - 65(03/31/2009)

「輝くシマシマ」

桜がゆっくりと花を咲かせています。暖かい日差しが降り注ぐ日には、冬には人の姿がまばらだった公園にも、子供の姿が多く見られるようになりました。我が家の南側と西側に比較的大きな公園があり、そこでも多くの子供たちが遊んでいます。南と西、2つの公園の間には幅4メートルの道路があり、信号のない横断歩道が2つの公園を結んでいます。
去年の秋頃、その横断歩道がほとんど消えてしまっていることに気がつきました。きっと横断歩道が設置されてから一度も塗り直されたことがないのでしょう。友人に我が家の場所を説明するとき「公園の横断歩道のところの家」と言っても横断歩道なんてあった?と、みな首をかしげます。それくらい印象の薄い横断歩道なのです。

2つの公園を結ぶ横断歩道。午前中は複数の保育園の子供たちが、午後は幼稚園帰りの子供たちが通ります。通学路にもなっている道路なので朝から夕方まで小学生が行き来します。学童の多い場所を示す横断歩道の標識も設置されています。にもかかわらず消えかかった横断歩道は全く無視され、車は一時停止をするどころかスピードを落とすことなく通り過ぎていきます。これは危ない。(ちなみに横断歩道で歩行者をはねた場合、車の責任は100%です。)

あまりにも気がかりだったので行政を通して警察に横断歩道を塗り直してくれるようお願いしました。すると早くても3ヶ月はかかるといいます。ただ塗るだけなのにどうしてそんなに時間がかかるのかと素人考えで思ってしまいました。いっそのこと100円ショップで白いスプレーペンキを買ってきて自分で塗ろうかと思ったほどです。(でもこれは犯罪になるのでしょうね。)落ち葉の季節、雪の季節を迎え、ますます横断歩道が見えにくくなる日々が過ぎていきました。

数ヶ月がたち、桜のつぼみが膨らみ始める季節。横断歩道のことはもう忘れられているんだろうなと思っていたある朝、黄色のごつごつしたトラックがやってきました。ついに横断歩道を塗り直す作業が始まったのです。作業員4人、警備員1人が準備をしています。正直こんなに大勢必要ないのではないかと思いましたが、これからもっと大掛かりな工事に行く途中なのかもしれません。

かすれた横断歩道にマスキングをして、校庭の白線をひく道具をもっと大掛かりにしたような感じのもので横断歩道をひきます。すっと一発で。あっという間に横断歩道5本のラインと一時停止線2本、合計7本の白線がひかれました。仕上げに何か粉のようなものをまいています。乾燥させているのでしょうか。塗り立ての横断歩道が乾くまでしばらく通行止めにするのかと思っていたらそこに1台の乗用車がやってきました。警備員は何事もなかったかのように車を通行させます。そしてまた黄色のごつごつしたトラックに乗って去って行きました。時間にして、ものの10分です。
え?こんなに早く終えられるものなの?連絡してから数ヶ月もの時間がかかるくらいだからどれだけ大掛かりな工事をするのだろうと思っていました。だったらもっと早く塗り直してくれればいいのに。あっけにとられながら家の2階から息子と一部始終を見ていました。息子は黄色いトラックばかり見ていましたけれども。

さておき、くっきりと塗り直された横断歩道のその後。やはり、信号のない横断歩道ごときで一時停止をする車は皆無です。しかし以前に比べて、多くの車があきらかにスピードを横断歩道手前で落として走っていきます。くっきりと白く輝く横断歩道はドライバーの注意を喚起する力を持っているようです。小さなことかもしれませんが子供たちの安全が少しでも守れるのならば幸いです。

年度末には道路工事が多くみられます。電気だガスだ水道だNTTだとなんども掘り返される道路事情や予算のことがあって、横断歩道の塗り直しなどそのまた後の話なのかもしれません。また道路によっては行政や警察などさまざまな管轄が複雑にからみあい、なかなか問題が浮き彫りにならない状況もあるようです。

日本中に塗り直すだけで事故を未然に防げる場所が多くあるのではないでしょうか。歩道橋や信号の設置など、大掛かりなことをしなくても改善できることはたくさんあるように思います。ちなみに今回の塗り直し、この先に横断歩道があることを示す菱形のマークも消えかかっていたのですが、そこは塗り直されることはありませんでした。横断歩道と菱形のマークはセットだと思うのですが。せっかく数ヶ月の時を経てトラックに乗って大人数でわらわらとやって来たというのに。点ではなく線で、面で、広く物事を見てもらいたいものです。

2009.3.30
増子瑞穂
http://members3.jcom.home.ne.jp/massyweb/index2.htm

余談ですが、子供の頃、横断歩道はアドベンチャーではありませんでしたか。白い横断歩道の部分がセーフティーゾーン。で、道路の黒い部分は「底なし沼」だったり「火の海」だったり。黒い部分に落ちてはいけないというルールを作って学校と家を往復したのを覚えています。消えかかった横断歩道では白いところだけを歩くという子供のちょっとした冒険もなくなってしまいますね。




















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●消えかかった横断歩道。注意を促す黄色い看板はありますが。

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●ついに塗り直し。横断歩道が輝きを取り戻しました。

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●横断歩道、あるのとないのとでは大違いです。