■増子瑞穂さんの「キャスター・マッシー通信」連載 - 79(07/31/2010)
「カタチのない椅子」
毎日暑いですね。言ってみても仕方がないことですが、「暑い」という言葉がつい出てしまいます。
さて前回、連載79でご紹介したエルゴベビーの抱っこひも。その後、ご近所のママ友達がしばらくの間貸してくれることになりました。私もエルゴの抱っこひもで、娘の育児をしています。実際使ってみて、やはりいい。友人たちへの取材から使用感や利便性の良さは伝わってきましたが、毎日のように使ってみると想像以上の良 さでした。腰のベルトが赤ちゃんの体重を支えてくれているので首や肩への負担は少ないし、肩ひもも中綿入りで厚みがあるので、さらに体への負担を和らげてくれます。フードもやはり便利。特に今年の日差しは刺すような強さ。赤ちゃんの頭に直射日光が当たるのを防いでくれています。
そして驚いたのが、抱っこひもをしたまま授乳も出来たこと。そもそもエルゴで抱っこをすると、赤ちゃんの顔がおっぱいの前あたりにくるので授乳の体勢に近いのです。授乳のときは肩ひもをはずすのですが、腰ベルトが赤ちゃんを支えてくれるので、授乳の体勢になっても安定感があります。
しいていえば、この季節は暑いのが難点。腰ベルトはしっかり幅があるし、肩ひもは幅も厚みもあるので、まさに抱っこひもを着ている感があります。しかし、だからこそ赤ちゃんの重さを分散してくれているのですし、暑いのは今だけ(と信じたい)ですし。総合的に考えると、やはりいい製品であると確信しました。日々、抱っ こひもはしているのですね。
赤ちゃんの成長とともにもうすぐ4歳になる息子の成長にも驚かされます。やはり男の子、一日中飛んだり跳ねたり走ったり。活動の幅が広がり、ひとときもじっとなんかしていません。寝ているときくらいでしょうか。外ならまだいいのですが、家の中でもドタバタ。少しでも高いところがあると、のぼっては飛びおりて、の繰り 返しです。友人の家に遊びに行っても、ソファーがあると必ずと言っていいほど子どもたちはそこにあがってみんなでジャンプ。もちろん、飛び降りないように言い聞かせるのも親の役目ですが、いくら言っても届かないものです。我が家は一戸建てですが、アパートやマンションだと下の階への騒音が気になって仕方がありません 。
そんな我が家にはソファーがありません。つわりがひどかった妊娠中、一日リビングの床に直接寝ていてソファーが欲しいと思ったこともありましたが、狭い部屋がますます狭くなってしまうし、なにより息子のトランポリンと化すことが容易に想像できたので置かないことにしました。
そのかわりに大きなビーズクッションを使っています。大手のスーパーや通信販売会社でも多数取り扱っていて「ビーズクッション」とネットで検索するだけでもたくさんヒットします。
我が家のビーズクッションは無印良品のものです。幅は65センチ×65センチ、高さは43センチの直方体。中には直径0.5ミリの微粒子ビーズが無数に入っていてとても軽いのが特徴です。カバーは柔らかなストレッチ素材と固い帆布素材の2つの素材を使い、布の特性を活かすことで多様な座り方ができます。例えば、柔ら かい面に座ると、横の固い面が重さを支えて四角いクッションの形を保ってくれ、しっかりとソファーのような状態で座ることができます。私は授乳のときにこの形で座っています。体が沈みすぎず、赤ちゃんを抱っこしたままでも楽に立ったり座ったりできます。また固い面に座ると、今度は柔らかい面が形を変えるため横に広が って平たくなり、ゴロ寝をするときに最適です。息子はこの状態がお気に入りのようです。マットレスのように広がるため、そのまま寝てしまうこともあります。
形を自在に変えるということも、ソファーにはないメリットですが、子どもがいる家庭にとって、この製品の最大のメリットは移動が簡単にできることではないでしょうか。
息子の友達が遊びに来て部屋を広く使いたいときには、他の部屋に簡単に片づけてしまうことができます。形が流動的なのでちょっとしたスペースに押し込むことができます。ソファーを動かすとなると大仕事ですものね。
また赤ちゃんがいる家庭は、アレルギーを気にしてダニがつきやすいソファーを置くことを敬遠しがちですが、このビーズクッションならカバーを丸洗いできますし、中のクッションも日干しすることができます。汗などを吸ってしまっても、中のビーズを動かしながら干すことで、湿気や匂いが蒸発するようです。これまたソファ ーの日干しともなると年末の大掃除でするかしないか。引っ越しでもない限り、一度部屋の中に入れたソファーを屋外に出すなんてこと、ないかもしれませんね。ビーズクッションは軽いからこそ、様々な状況に対応できます。
このビーズクッションの草分け的存在ともいえるのが、イタリア、ザノッタ社の「サッコ」という名前の椅子です。1968年、ピエーロ・ガッティ、チェザレ・パオリーニ、フランコ・テオドロの当時30代の若手デザイナー3人によってコラボレートされた作品です。椅子というか、クッションというか、固定した形を持たない このデザイン。中身は包装のために使われていたポリスチレン製の粒を使用しています。座る人の体に合わせて中の粒が動き、スツールだったり、ソファーだったり、カウチだったり。人が椅子に合わせて座るのではなく、椅子のほうがその人の座り方に応じて形を変えてくれます。(あ、バーバパパに近いかもしれません。)それ までの椅子という概念を覆したこのデザインは話題を集め、今日にいたるまで広く親しまれています。ニューヨーク近代美術館の永久展示品にも選ばれているイタリアデザインの名作です。お値段はというと、ちょっと子育て向きではないかもしれませんね。
「サッコ」を手に入れるのは難しくても、無印良品をはじめ、手頃な値段で手に入るビーズクッションはたくさんあります。複数揃えたら、よりソファーの機能も満たしてくれそうです。子育て世帯におすすめのよいデザインです。
さて息子。このビーズクッションでは上からジャンプする、という遊びはしませんが、助走をつけてクッションに飛びうつる、という遊びを開発しました。飛びうつった瞬間、クッションが形を変えて体を受け入れてくれるのが面白いようです。ビーズクッションの特性を活かした遊びですね。それほど、危険でもないし、音も気に はなりませんが…。子どもは何としてでも遊びを考える天才ですね。いやはや。
前回のマッシー通信のあと、同じように子どもを持つお母さん達からいくつか共感の声をいただきました。そう、子どもを連れて歩くのって決して大げさな表現ではなく命がけなのです。何よりも大切な子どもの命を守りながら日々お母さん(お父さんも)は頑張っているのですね。同じような境遇のお母さんお父さん達はもちろん 興味を持ってこのマッシー通信を読んでくれています。ですが、これから子育てをする若い世代や、社会にこのような事情を広く知ってもらい興味を持ってもらうためにはどうすればいいかと最近考えます。マッシー通信これからの課題ですね。
2010年7月30日
増子瑞穂
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遅ればせながら140字ゆるやかにつぶやいています。
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●エルゴ。刺すような日差しから頭を守ってくれます。
●ビーズクッション。色々な店で目にします。
●「サッコ」ビーズクッションの草分け的存在。
●授乳はこの形で。体重をしっかり支えてくれます。
●ゴロ寝はこの形で。このまま寝てしまいます。