■増子瑞穂さんの「キャスター・マッシー通信」連載 - 86(01/30/2011)
「育児の行事」
第二子の娘は9ヶ月になりました。ハイハイが始まり、つかまり立ちが始まり、これから歩き始めたらますます目が離せなくなります。(このマッシー通信も途切れ途切れに書いています。)
産まれたその瞬間から赤ちゃんの世話は大変なものですが、寝返り、ハイハイ、つかまり立ち、と赤ちゃんが自分の意志で動けるようになると、大変さは次の段階に入ったことになります。赤ちゃん自らが、命にかかわることをするからです。生後まもない産まれたばかりの赤ちゃんは自ら率先して危険なことはしません。
親は一日のほとんどを、子どもの命を守る作業に費やすことになります。この作業は、ある程度子どもが自分自身で危険なことが分かるようになるまで続きます。そして赤ちゃんや子どもは、なぜか危険なものに近づく習性があります。きっと危険なものは魅力的に見えるのでしょうね。
娘のハイハイが始まったのをきっかけに、部屋にベビーゲートをつけることにしました。ベビーゲートをつけるのは2回目。息子のとき以来です。
赤ちゃんを一番入れたくない場所は、なんといってもキッチン。コンロや炊飯器、ホームベーカリーなど火傷の危険があるもの、そして包丁やキッチンバサミなどケガのおそれのある刃物など、赤ちゃんにとって危険なものだらけです。
我が家のキッチンは居間と隣り合わせながらも別々の部屋になっている昔ながらの間取り。いわゆるDKと表されるタイプです。(サザエさんの家もそうですね。)普段はキッチンと居間の間にあった扉を取り払って生活しています。ですからキッチンと居間の間にゲートを設置すれば、赤ちゃんはキッチンに入れません。
でも、今どきの間取りはLDKというのが主流。リビング、ダイニング、キッチンがまとまっていて、同じ空間で料理をしたり食事をとったりくつろいだり。LDKは子育て世帯にとって、便利で暮らしやすい間取りだと思います。
しかし、赤ちゃんのゲートを取り付けるとなると、ちょっと頭を悩ませるところ。同じLDKでもキッチンが、対面式か対面式でないかでゲートの種類や設置の仕方が変わってきます。どうあれ赤ちゃんとキッチンはなんとしてでも切り離したいものです。
「対面式のキッチンとゲート」
対面式のキッチンなら、キッチンの入口にゲートをつければ、ほぼ解決します。対面式のキッチンは、料理をしながら子どもの様子が見られるので、子どものいる家庭に向いているキッチンの代表といえるでしょう。対面式キッチン内のスペースに危険なものをすべて入れてしまい入口をゲートでふさいでしまえば赤ちゃんとキッチ ンを切り離すことができます。ゲートを設置しやすい、というのも対面式キッチンが子育て向きといえる理由のひとつだと私は感じます。
注意点としては、食事をとるスペースはゲートの外、つまり赤ちゃんが自由に動き回れるスペースになるので、危険なものは片づけることが必要です。そして思わぬものが事故の原因になることも。例えば、ダイニングテーブルのある家庭。赤ちゃんはテーブルには登れないものの、低めの椅子になら登れてしまうことがあります。 椅子からテーブルに移り、テーブルから落下してしまう事故もよく起きるので気をつけなければなりません。
「対面式ではないキッチンは?」
では対面式ではないキッチンの場合。やはり基本はキッチンと赤ちゃんスペースを区切るようにゲートを設置します。赤ちゃんスペースをどれくらいとるか、ダイニングテーブルをゲートの中にするか外にするかなど、その家のライフスタイルに合わせてゲートの場所を決めることができます。
しかし、ここで大きな問題が出てきます。壁から壁へゲートをつけようとしても、それだけ長いゲートはなかなか見つかりません。また取り付ける幅が長すぎると、ゲートの強度も問題になってきます。
我が家のようなDKタイプならば居間とキッチンの間に一枚、壁があるためゲートもつけやすいのですが、LDKタイプだと広々とした間取りであるがために、壁から壁までが遠く、ゲートを設置しづらいのです。
「サークルはオリ!?」
解決策の一つとして、「サークル」タイプのものがあります。赤ちゃんを囲むように設置するタイプです。大小様々なサークルが販売されています。
しかし、これも大きさによって、赤ちゃんにとっても親にとっても新たなストレスの原因になることも。このサークル、ときには赤ちゃんにとって「オリ」のような存在になってしまうのです。
赤ちゃんはとても好奇心旺盛です。そして行動範囲は日に日に広がっていきます。その赤ちゃんを「オリ」に入れてしまうと、危険なものに近づけないのと同時に行動範囲が限られるため、ストレスがたまって泣きっぱなし、ということに。赤ちゃんから親が見えていればなおさらです。「なぜ、こんな狭いところに閉じこめられて いるの!?」とばかりに泣き続けることも。よほど大きなサークルでない限り、赤ちゃんも親もお互いにストレスが溜まってしまいます。
ほんの短い間の家事、例えば洗濯物を干すとか、ゴミを出すとかならば、赤ちゃんを危険なものから守るために「サークル」タイプに赤ちゃんを入れておくのもいいと思います。
しかし長時間の家事、たとえば料理をするときなどに、ずっとサークルに入れっぱなしにしていると、それは赤ちゃんにとっては「オリ」になってしまい泣き続けることでしょう。こうなると親にとっても大変なストレスになってしまいます。ほんの少しの時間しか使えないのであれば、「サークル」はよほど広い家でない限り、邪 魔になってしまうかもしれません。
赤ちゃんの行動範囲はなるべく広くとってあげたいもの。そうすれば、赤ちゃんのストレスは減り、親のストレスが軽くなることにもつながります。
「親がオリに」
ゲートやサークルを設置するときのヒントをひとつ。赤ちゃんを「オリ」に閉じ込めるのではなく、親が「オリ」の中に閉じこもるのです。つまり「オリ」の中に危険なもの極力まとめて、親が「オリ」に入って作業できるようにゲートやサークルを設置するとうまくいくのではないかと思います。
赤ちゃんのいるスペースには危険なもの、触られては困るものは置かない。赤ちゃんは「オリ」の外で自由に動き回れるようにするのです。「ダメ!」「危ない!」と言っても分からない月齢なのですから。
「ぜひ階段にも」
そしてゲートは階段の上はもちろん、階段の下にも必要です。上から落ちることは心配されるので、ゲートをつける人が多いのですが、意外に階段の下は危険性を見落とされがち。赤ちゃんは階段を降りるよりも、昇る方を楽しみます。ハイハイやつたい歩きで見上げる階段は、富士山か、エベレストか。澄んだ瞳に、それはとって も魅力的に映るのでしょうね。階段を見つけると赤ちゃんは一目散に向かって行きます。階段を昇ってしまって、上から転落してしまう事故が多いのです。
「まとめ」
と、ここまでゲートを設置して万全、と思っていても赤ちゃんは思わぬケガをするもの。つまずいて頭をぶつけたり手を挟んだり。全くケガをさせずに育てるのは無理というものです。それでもなるべく軽いケガで済むように工夫や配慮をすることが大切です。
そして、どんなゲートやサークルをつけていても、やっぱり赤ちゃんは泣くときは、泣く。眠いとき、機嫌の悪いときは親に抱っこして欲しいもの。そんなときは、家事をあきらめ、手を止めて抱っこしてあげるのが一番です。ゲートはあくまで育児をサポートしてくれる道具。万能ではないのです。
危険なものから赤ちゃんを守るゲート。確か、息子のときは2歳くらいまで使っていたでしょうか。使わなくなったきっかけは、息子が自分でゲートを開け閉めできるようになったから。ゲートにぶら下がりながら自分で開けたり閉めたり。むしろゲートがあることが危険にすらなります。こうなるともうゲートはお役ごめんです。 子どもの方も何が危険なのかも大体わかるようになってきます。とはいえ、危険と分かっていても危ないことをする習性は持っていますけれども。(特に男の子は。)4歳を過ぎてとっくの昔にゲートを卒業した今も、毎日のように色んなことをしでかしてくれます。
ゲートに助けられながらの子育てから、ゲートが邪魔に感じられる日まで。ゲートの設置、そしてゲートの卒業というのも誕生日のように、育児の節目をあらわす行事のように感じます。
2011年1月30日
増子瑞穂
http://members3.jcom.home.ne.jp/massyweb/index2.htm
●赤ちゃんスペースからキッチンを見る。左側に壁があるためゲートの設置が楽です。
●キッチンから赤ちゃんスペースを見る。「危険なものは置かない」のが楽に過せるコツ。
●プラン
上:赤ちゃんをオリに入れると親も子もストレス。
下:親がオリ側に入って作業をするとストレスも軽く。