■増子瑞穂さんの「キャスター・マッシー通信」連載 - 98(1/31/2012)
「キャスター業とお母ちゃん業」
● 東京ゲートブリッジの上で。車の向き、逆走です。
2月12日、東京に新しい橋が誕生します。「東京ゲートブリッジ」新木場駅あたりから見えるので気になっていた方もいらっしゃるのではないでしょうか。江東区若洲地区と中央防波堤外側埋立地をつなぎ、東京湾をまたぐようにかかる全長およそ2.6キロメートルの橋です。橋の長さもさることながら、目を引くのはその形!巨大な生き物が二体、向き合っているような不思議な形をしています。
開通からちょうど1ヶ月前の1月12日。この橋を取材してきました。
取材の車に乗って、まだ一般公開されていない東京ゲートブリッジへ!ワクワクします。この日、海側の車線では走行実験を行っていました。そのため、通れるのは都心側の車線のみ。特別に道路を逆走させてもらいました。逆走なんて、まるでレーシングゲームのようです。開通してしまったら絶対に出来ないこと。もう、テンションは上がりっ放しです。
この橋の不思議な形、それには理由があります。橋の下を船が通るのは当たり前のことなので、当然、水面から橋までは高さ制限があります。東京ゲートブリッジにはもう一つの制限が。この場所は近くに羽田空港があり、飛行機がひっきりなしに離着陸します。飛行機の運行のため、橋全体の高さにも制限があるのです。ちなみに横浜ベイブリッジの全体の高さが172メートルなのに対して、東京ゲートブリッジの高さは87.8メートル。比べるとかなり低く設定されているのが分かります。船が通るための水面からの高さ制限、そして飛行機が飛ぶための全体の高さ制限、もちろん橋そのものの耐久性。これらの条件からこのような不思議な形をした橋ができたわけです。骨組みを三角形に組み合わせるトラス構造という形式が使われていますが、全体がこのような形なのは世界でも類をみないそうです。(連続トラス・ボックス複合構造という名前がついています。)
この橋が開通することによって、物流の効率化や、東京港内の交通渋滞の緩和が期待されています。都心側には歩道もあるため、日中は散歩をすることができ、天気のいい日には富士山が望めます。間違いなく東京の新名所となることでしょう。開通は2月12日。まもなくです。
そしてもう一つ貴重な体験が。兵庫県神戸市にある、理化学研究所計算科学研究機構にお邪魔してきました。ここにあるのは、スーパーコンピュータ「京」です。「けい」と読みます。「世界一速いコンピュータ」としてもメディアで取り上げられたのでご存知の方も多いことでしょう。この京が一望できるフロアからスーパーコンピュータ京を生放送で紹介しました。
「京」という名前の由来ですが、すごく難しい計算(1.24390294758938×10の3乗 × 8.93282647827562×10の6乗みたいな。浮動小数点演算というらしいです。)を1秒間に1京回できる、ということから名付けられました。いうまでもなく「京」という単位は「兆」の次です。国家予算でさえも「○兆円」までしか聞きません。「○京円」というのは耳にしたことがありません。とんでもなく速い計算ができるまさにスーパーなコンピュータというわけです。ファミリー向けの冷蔵庫くらいの大きさのユニットがいうなれば一台のパソコンのようなもの。(中身はもっとぎっしりですが)それが、全部で864台、CPUの数は合計82944個。コンピュータにそれほど詳しくなくとも、数を聞いただけで、ものすごいことなんだなと感じます。
その数や、計算能力もさることながら、驚いたのはそれらを支える技術。これだけのコンピュータを稼働させると大変な熱を発します。「京」を守るのは水冷システムと空調システム、つまり「水」と「風」です。これらでコンピュータを冷やして守っているのです。
コンピュータの内部には細い銅の配管が張り巡らされ、その中を純度の高い水が循環しています。銅を使っている理由は熱伝導率が良いためです。そして、風。スーパーコンピュータ京の階と下の階の両端は空間があり、空気の通り道となっています。空調フロアに入ると、風がビュンビュン吹いています。風速5メートルから6メートルくらい。室内で風速5メートルというのは相当なものです。目も、喉も、カラカラになります。この風を京のフロアに送り込んでいるのです。このように、「水」と「風」で効率的に京を冷やし、その計算能力を支えています。
さらに、このスーパーコンピュータ京。なんと20万本ものケーブルが使われているとのこと。これら1本1本を職人さんが手作業でつないだとか。ジーンと胸にこみあげる熱いものがありました。開発の方が「縁の下の力持ち」と表現されていた日本の技術力の高さに心が震えました。
余談ですが、何とも大変だったのが、あらゆる場所が飲食禁止だったこと。コンピュータは水分が大敵なことは皆さんご存知のとおり。(水冷というのはまた別のことです。)放送を出すフロアも、空調システムの部屋も、どこもかしこも飲食はできません。ですから、準備段階から放送中までも気軽に飲み物を飲むことができず。決められた場所まで行って、水分補給をしていました。水分補給ができない場所での放送ということで、ご出演いただいた方にも大変なご苦労をかけてしまいました。
「東京ゲートブリッジ」と「スーパーコンピュータ京」この二つの取材に負けないくらいの貴重な体験がもうひとつ。新幹線一人旅です。
スーパーコンピュータ京は兵庫県神戸市にあるので、新幹線で往復しました。一人で新幹線に乗るなんて何年ぶりのことでしょう。新幹線に乗るときはいつも子どもと一緒。落ち着いて座ってなどいられません。自分のトイレ以外、席を立たずに済んだのはいつ以来でしょうか。普段は、子連れで東北新幹線や上越新幹線に乗って北上することが多く、西に行くのも私にとってはあまりないこと。西へ走る新幹線N700系はあこがれです。東京駅では700系とN700系が並んでいる姿を思わず激写。大阪駅では、初めて生で見る九州新幹線さくらに感動。これまでテレビかyoutubeか、息子のプラレールでしか見たことがありませんでした。
一人新幹線の座席に座って、コーヒーをすすりながら、台本を確認しつつ景色を眺める優雅さ。普段からは考えられないことです。あぁ幸せ。それにしても、東北、上越新幹線に乗るときは休日ということもあってか、家族連れが多いのですが、関西方面の新幹線はビジネスマンでぎっしりですね。みな、パソコンを開き、カタカタと忙しそう。同じ新幹線でも、行く方面によってかなり車内の雰囲気が違うものだなと感じました。
夜の生放送を終え神戸に一泊し、さて東京に戻ろうと再び優雅な新幹線の旅を満喫していたその時。名古屋あたりで携帯がふるえました。見ると、娘の保育園から。「○○ちゃん、お熱が出ましたので、お迎えにきてくださ〜い。」とのこと。とほほ。どんなに急いでも、名古屋から保育園までは2時間かかりますが、できるだけ急いで向かったのは言うまでもなく。優雅な新幹線一人旅も、呆気なく終わりました。娘が発熱したとあっては、楽しめるはずもありません。奇しくもその日は、私の誕生日でありました。さ、さ、39回目の…。ある意味、一生思い出に残る誕生日となりました。幸い、流行りのインフルエンザではなく安心はしましたが。
そんなこんなで、迎えた新しい年。キャスター業とお母ちゃん業をバタバタとやっております。
2012年1月31日
増子瑞穂
http://members3.jcom.home.ne.jp/massyweb/
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経歴やら何やらをちょこっと整理整頓して見やすくしました。
マッシー通信のバックナンバーもジャンル分けして見やすくするつもり、です。
そのうち、そのうち…。
マッシー通信連載96「子どもと大江戸線めぐり」で紹介した大江戸線の旅が開催されます。2月19日の予定です。興味のある方はぜひ。
http://www.nudn.net/maccy/96.html
ニコニコ生放送、視聴環境にある方はぜひ。
(東京ゲートブリッジの全体像、うかれて写真に撮るをすっかり忘れてました。こちらからご覧ください。)
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ニコニコカーで行く開通目前の「東京ゲートブリッジ」橋の上からの絶景を単独取材!
http://live.nicovideo.jp/watch/lv77332940
これが世界一の速さだ!スーパーコンピュータ『京』のスゴさを開発現場から徹底解明
http://live.nicovideo.jp/watch/lv77717027
● うれしくて変なテンションになっています。
● N700系と700系が並んでいる姿にも興奮。
● 整然と並ぶ「京」お邪魔しました!