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増子瑞穂さんの「キャスター・マッシー通信」連載 - 99(3/3/2012)

大人の「ものづくり」

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●ランドウォーカー撮影風景(榊原機械さん撮影)

「ものづくり」と聞くと、それだけでなんだか心が躍ります。それも人が乗れるロボットとなれば。なおさらです。
2月の終わり、群馬県榛東村(しんとうむら)にある榊原機械株式会社さんに取材でお邪魔してきました。(さかきは木へんに神)昭和47年設立のこの会社。畜産飼料やたい肥を作るための産業用機械を制作し、販売してきました。設計や、制御、プログラミングなど、全て自社製。基板の一つ一つも社内で作っています。外注はほとんどしません。従業員は8人と、少数精鋭。仕事は朝の8時半から夕方5時半まで。残業することは滅多にないといいます。
設計、開発、電気、制御システム、CAD、プログラミング、そして、ものづくり。その全てを基本的に一人で担当します。一つの機械の全てを、一人で責任を持って作っています。疑問点は社員同士でコミュニケーションを図りながら解決していくそうです。ものづくりの全てを一人で担当するこの会社。社員教育のためにロボットを作り始めたのだそうです。え?社員教育でロボット?なんだか不思議な会社です。榊原機械株式会社、開発の榊原豪(さかきばらごう)さん、南雲正章(なぐもまさあき)さんにロボットをご紹介いただきました。

●キッズウォーカー
子供用の搭乗型ロボットです。担当したのは榊原豪さん。歩行部分の動力は産業用エンジンです。ひもを引くとブルルル…という音とともにエンジンがかかります。産業用機械を作っている会社というのがここからも感じられます。足元には矢印の形をしたペダルがついていて、どういう動きをするのか子どもでも想像できるようになっています。つまり、誰にでも操作しやすいということです。前後に動き、右旋回左旋回もできます。アームの部分の動力はバッテリー。指先が開いたり、閉じたりします。が、子供用ということもあり、何かが挟まると安全装置が働き、ストップします。3リットルほどのガソリンで、3〜4時間動くことが可能です。これまでに十数台販売されています。
「このキッズウォーカーを作ったときは全てが初めてのことばかり。挑戦して製品のレベルまで上げていくのが難しい。」と話されていた榊原さん。この形状だけではなく、好みに合わせてカスタマイズもしてくれるそうです。お値段はというと、要相談、なのだそうです。

●バランスウィング01、02
人が乗って操縦するアミューズメントマシンです。担当したのは南雲正章さん。バランスウィング01とさらに改良したバランスウィング02の2種類あります。バランスウィング01はハンドルをつかんで、左右の体重移動でバランスをとりながら走らせます。動力はバッテリーです。ハンドルについているボタンを押すと進み、ボタンを離すと止まる仕組みです。ハンドル中央部には銃がついていてゴムボールを発射することができます。発射装置は圧縮空気を使っています。発射させると、パンッという驚くほど大きな音がして、と同時に圧縮された空気が一気に押し出され、顔に強い風を受けます。しかし、音の大きさや風圧の割にはボールはそれほど強くは飛びません。やはり、子ども向けのアミュー ズメント、あえて威力を控えめにしているとか。このあたりの加減も、研究開発を重ねた成果です。
このバランスウィング01を進化させたのがバランスウィング02。しかし進化といいますか、この02は01に比べて乗りこなすのが難しくなっているのです。01のハンドル部分がなくなり、そのかわりにロープが使われています。走行のためのボタンも消え、ロープをひっぱると進む仕組みになっています。バランスをとるのも01では左右だけだったのが、02では前後左右にバランスをとらなければうまく進みません。後ろに倒れそうになるか、前につんのめりそうになります。通常改良型というと、より乗りやすく簡単に、と考えがちですが違うのだそうです。
「機械というと楽をするものと思われがち。このバランスウィングは人間のバランス感覚をやしなうためのアミューズメント。02は楽できない、乗りこなすのが難しい。乗り方をあえて難しくすることによって、苦労をする。すると、乗りこなせたときにより一層うれしく感じる。それが面白い。」南雲さんのうれしそうに話す姿が印象的でした。

●ランドウォーカー
榊原機械株式会社で、最も目をひく人間搭乗型の巨大ロボットです。高さは3.4メートル、重さは1トン。時速1.5キロとゆっくりですが、すり足歩行をします。全体の動力はエンジンです。5リットルで半日くらい動きます。腕の部分には圧縮空気を使った銃が備わっています。
操縦席は地面から3メートルくらいの高さにあるので、まず乗るのに一苦労です。ロボットの横についている手すりに捕まりながらなんとか乗り込むと、た、高い。あまりの眺めの良さに少し怖くなります。
歩行の操作は車のアクセルペダルのような仕組み。前後のペダルと左右のペダルの2種類です。前後にはすり足するように動き、左右には回れ右するような動きで移動します。

シートベルトをしっかりと締め、エンジンキーを回すと、ギュイイイイン…と、響き渡るエンジン音。さらにハッチを閉めると、もう外の音はほとんど聞き取れなくなります。なおさらロボットが自分の手となり足となる感覚を覚えます。
おそるおそる前のペダルを、それでもしっかりと踏み込むと、ガシャーン、ガシャーンとまさにロボット、超合金を思わせる音が鳴り響きます。すり足歩行ですが、操縦席が高いからか、かなりの揺れを感じます。その揺れがまた、ロボットに乗っているという実感を増してくれます。旋回は回れ右のように、片足を一歩後ろに引いてから回るので、乗っていると一瞬後退するような感じがします。が、その直後くるりと回りたい方向に向いてくれます。
そして空気銃の発射。左右に2種類の銃がついています。バランスウィング同様、圧縮空気を使ってスポンジボールが出てきます。右の銃からは1発ずつ。ポーン、ポーンと気持ちよくスポンジボールが飛んで行きます。左の銃からは連射。一度に6発のスポンジボールが勢い良く飛びます。ですが、圧縮空気によるスポンジボールの銃。当たったところでそれほど痛くはなさそうです。あくまでもアミューズメント用なのです。
ランドウォーカーの操縦、最初は、高いところからの操作で、しかも揺れることで少し怖かったのですが、慣れてくるととても楽しい。自分が行きたい方向に、自分が動くわけではなく、ロボットが行ってくれる。それも「歩行」という人間にかなり近い動作をすることで、自分とロボットとがリンクしているように感じます。ロボットが思った通りに動いてくれる優越感、満足感たるや、かなりのものでした。今後は、腕をつけたロボットを開発予定だとか。乗っている人の腕の動きに合わせて、ロボットも同じように腕を動かすロボットを作りたいと話されていました。

このランドウォーカー、制作には1年10ヶ月かかっています。そうそう、思い出してください。もともとはこれらのロボット制作、産業用機械を開発する社員教育のために始められたもの。にしては、あまりにも規模が大きいのです。なぜここまでやるのでしょうか。
「中途半端だと自分のためにはなるかもしれないけれど、会社のためにはならない。やはり目立たないと。社員教育だけではなく、ビジネスとして人にわかってもらえるようなロボットを作りたい。そして今後は、より大きいものを作っていきたい。小さい頃に見たアニメのロボットはみんなもっと大きい。これからも人々の夢に近づけられるものを作っていきたい。」
産業用機械とアミューズメントロボットという2本柱でなりたつ榊原機械株式会社。ここで「ものづくり」の全てを担い、ロボットについて語る大人の瞳はキラキラと輝いていました。

2012年3月1日
増子瑞穂
http://members3.jcom.home.ne.jp/massyweb/

榊原機械株式会社HP
http://www.sakakibara-kikai.co.jp/


榊原機械株式会社さんを取材した模様です。
ニコニコ生放送
これがNIPPONのロボット産業だ!群馬が産んだ人間搭乗型2足歩行ロボット
榊原機械株式会社から生中継リポート
http://live.nicovideo.jp/watch/lv82534868









































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● キッズウォーカー

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●上がバランスウィング01、下が02

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● ランドウォーカー

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●ものづくりの神髄を見せていただきました!(榊原機械さん撮影)