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増子瑞穂さんの「キャスター・マッシー通信」連載 - 112(01/04/2013)

J-WAVEで「保育園、足りないんだってば」を叫ぶ。

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●J-WAVEスタジオから電波に乗せて・・・・。

 前回のマッシー通信連載111「保育園、足りないんだってば」がひとつのきっかけとなり、ラジオJ-WAVEの番組「kiss and hug」でこの保育園の待機児童問題について話す機会をいただきました。(すいません、叫んではいません。)放送は3月30日、新年度が間近に迫った土曜の朝でした。

いつもはゲストのお話を伺う司会業の身。自分の話を聞いていただくゲストの立場なんて、生まれて初めてです。加えてラジオも初体験。40歳にして、初めてづくしの朝を迎えました。最寄りのひばりが丘駅、始発。J-WAVEのある六本木駅に到着したのは番組が始まる朝6時ちょうど。私が出演するコーナーは7時過ぎから。番組が始まっているのに自分がスタジオにいない経験も初めてなのでドキドキします。番組開始時間に司会がいないなんて、ありえないですものね。スマホのradikoで番組を聴きながらスタジオに向かいました。地下鉄内でもラジオが聴けるなんて、便利になったものです。それも大江戸線の六本木駅は、地下深いことでも有名ですが、radikoは快適。オープニング最初の曲はSwing Out Sisterの「Am I The Same Girl」、大好きな曲です。六本木駅の長いエスカレーターを上がりながら、ワクワクしてきました。ちなみにこの曲、途中、男性が「マシコー」と叫ぶ箇所があります。(完全に空耳ですが)おヒマな方は聴いてみてください。どうでもいい情報です。失礼しました。

六本木ヒルズ33階にあるJ-WAVE。あいにくの曇り空でしたが、素晴らしい眺め。東京タワーが見えます。スタジオ内ですでに番組を進めているナビゲーターのシェリーさんをガラス越しにチラチラ見ながら、出番を待ちました。スタジオに入ったのは番組が始まるほんの3分前。シェリーさんに初めましてのご挨拶をして、ヘッドフォンやマイクの位置を確認したら、もう本番です。前回のマッシー通信と重複する部分もありますが、おつきあいください。

ーシェリーさん
今年2月、東京杉並区で保育園の選考に漏れたお母さん達が区役所の前で抗議デモを行うなど、大きな話題を巻き起こしている待機児童の問題。子どもを預けるところがない場合、働くお母さん達はどうすればいいのでしょうか。3年もの間、保育園の入園が認められなかった経験をお持ちのお母さんにスタジオにお越しいただきました。6歳の息子さんと、もうすぐ3歳の娘さんをお持ちのフリーアナウンサー増子瑞穂さんです。おはようございます。

ー増子
おはようございます。

ーシェリーさん
待機児童問題に直面されたのはいつ?

ー増子
一人目の息子の時。ちょうど昨日、その息子が保育園を卒園したばかり。保育園の思い出と、待機児童の思い出が入り交じって大号泣した。初めて保育園に応募したのは息子が1歳半の時。保育園の選考に漏れて実に3年間、待機児童を経験することに。これがその時の書類、「保育所入所不承諾通知」。言ってみれば、「保育園に入れませよ通知」。

ーシェリーさん
「定員に余裕がないため、定員に余裕がないため、定員に余裕がないため…」3年とも同じ。(笑)

ー増子
平成20年2月、21年2月、22年2月…。(笑)

ーシェリーさん
保育園の選考ってどのように決まる?

ー増子
ほとんどの自治体が保育園に入れる基準をポイント制を使っている。
例えば、月に20日以上、一日8時間以上働いていれば30点、12日以上16日未満で、一日6時間未満なら22点。親の介護をしているのか、子どもが何人いるのかなど、ひとつひとつポイントにしていく。一般的に夫婦フルタイムの共働きはポイントが高く保育園に入りやすい。夫婦どちらかがパートタイムで働くなど、労働日数や時間が少ないほど、ポイントは少ない、保育園に入りづらくなる。「忙しい親選手権」を勝ち抜くと、保育園に入れる。

ーシェリーさん
保育園に入れないと分かったときはどんな気持ち?

ー増子
呆然、途方にくれていた。抗議の声をあげた杉並区のお母さん達の勇気や行動力は素晴らしいと思った。

ーシェリーさん
子どもを預けられない場合どうする?

ー増子
仕事をあきらめてしまう人も。一時保育などを利用して仕事を繋いでいく方法もあるけれど、月金で保育園に入れる場合に比べて、働ける時間も日数も限られてしまう。ポイントだけでは見えてこない問題というのも。フルタイムでも、両親が近くに住んでいれば保育を助けてもらえる場合もあるし、パートでも、頼れる身内が近くにいなくて保育に困る場合がある。
このポイント制、ちょっとショッキングな話しも。母子家庭や父子家庭の一人親だと、ポイントが高くなるので保育園に入りやすい。これを利用して、カタチだけ離婚して、保育園に申し込む。入れたあかつきには、もう一度結婚する、なんてことも。もちろん、絶対にやってはいけないこと。ポイント制だけで決めていくのはどうかと。

ーシェリーさん
離婚!そこまでしなきゃいけない!?

ー増子
私の場合も、ポイント制に疑問を持った経験が。3回目の申し込みのとき。お腹に2人目の子どもがいたから今回こそは保育園に入れると思った。でも、ふたを開けてみると、妊娠がネックになって、入れなかった。

ーシェリーさん
え!?

ー増子
保育園の申請の時期と、出産の時期が重なっていたので、書類上は働けない。ポイントが下がってしまった。子どもを産んで、これからより大変になろうとしているのに。

ーシェリーさん
全部マニュアル化されてて、人としての判断ではなく、点数だけということ?

ー増子
まさにそう!このポイント制に疑問を持つ人、結構いると思う。

ーシェリーさん
1曲お聴きいただいたあと、さらに伺います。

〜曲〜

ーシェリー
さて、3年連続で保育園の入園が認められなかったわけですが、4年目にしてようやく認められた。なぜ?

ー増子
お腹にいた子どもがこの世に出てきたから。妊娠中に下がってしまったポイントが、子どもが増えたことによってポイントが増えた。でも、子どもが増えたからといって保育園に入れるというわけではない。子どもが増えてより働きづらくなって、保育園にも入れなくて、仕事をあきらめてしまうというケースもある。こんな状態だと、子どもの数は増えない。

ーシェリーさん
2人目3人目頑張ろうって気にはならないですよね!

ー増子
ならない、ならない!

ーシェリーさん
そんな体験から、この待機児童問題、どう思う?

ー増子
色んな課題があると思う。こんなに待機児童の数がふくれあがるまで、保育園を増やさなかった、保育サービスを広げなかった国や自治体の責任もある。
その一方で、女性の雇用形態にも課題がある。こんなに保育園が足りない中で、育休が終わるまでに職場復帰しなければ、仕事がなくなってしまうなんておかしい。そもそも、非正規雇用が増えているので、育休がないケースも。ある期間内に戻ってこないと、職場復帰できないなんて、おかしい。

ーシェリーさん
女性はハタチから30代まで10年以上働いてキャリアを積んで、そこから子どもを産んで、職場復帰しようと思っても、できない。雇用のカタチがうまくいっていないから、日本の女性達は、宝の持ち腐れになってしまっている。

ー増子
子育て期間は、人生の経験値がグッとあがる期間。一日中言葉の通じない人間に対して、コミュニケーションをとろうとしている。これは忍耐力や包容力がつく。それって、仕事でも必要なスキル。本人が子どもを産んでも、仕事に復帰したいと望むのならば、いつでも戻れる社会にしないと。最初は、仕事から離れていた分、不慣れなこともあると思う。
現場で、他の人がサポートしていかなければならないことも出てくると思う。それはお互い様。
保育園も増やすし、もし保育園に入れなかったとしても保育園に入れるまで待つ。小学校にあがってからでもいいんだし、いつでも戻っておいでよ。という社会になって欲しい。
このままでは子どもの数は増えない、子 どもの数が増えないということは、その自治体は活性化しない、シャッター商店街になってしまうなど、住みづらい地域になる。待機児童問題は、働くお母さんお父さんだけの問題ではなく、社会全体の問題。

ーシェリーさん
最後にメッセージを。

ー増子
新年度、桜の素晴らしい季節。なのに、不安に思ってる方いっぱいいると思う。子どもを育てるだけでも大変、これ以上頑張ってとはいえない。困っていることがあったら相談できる人、場所を見つけて。色々模索することは必要だと思うけれど、諦めないでほしい。
私自身も、待機児童の問題について、アイデアや解決策を発信していきたい。3月30日放送「kiss and hug」より

曲を含め、17分半ほどの出演でした。あっという間でした。

Twitterのハッシュタグjwaveや、私あてのツイートでも、色んな意見が寄せられました。
「子どもを預けられないと働けない、一番困っているはずのお母さんが排除される仕込みと昔から指摘されてるけど未だに変わらない。」
「私は正社員で、育休さん達を支えてる側だけど、支えてる方も結構大変。子どもいるなら辞めてほしい。こっちも大変。ママさんいたら新しく雇えないし。」
「日本社会全体に言えること。なんでも仕組みが古い。特に教育分野ではそれが顕著。」
「待機児童の問題。結局、投票率の低さと関係すると思う。地元の議会選挙、首長選挙で投票して意思表示することで変えていける!」
「子供は家庭で育てるという思考の高収入の役人や経営者だけで、その仕組みを検討しているのを変えないとダメ。」
「都会は保育園に限らず少ないキャパを沢山の人が奪い合う構図に自ずとなってしまう。」
「少ないパイを争うのではなく、(杉並区のケースは)皆で協力してパイを増やす判断をされたのは懸命だったと思う。」

私自身、番組で伝えきれないこともありました。
例えば、共働き、専業主婦に限らず、自分の両親に子どもの世話をお願いしている人もいると思います。保育園が無縁の人もいらっしゃるでしょう。でも、その両親が急に倒れて、介護が必要になってしまったとしたら。そんな時、保育園に空きがないと、育児と介護、ダブルでのしかかってきます。女性の子どもを産む年齢があがってきているので、そのリスクはますます高まるでしょう。
また、お父さんお母さん自身が病気になってしまったら。心の病気を抱えて、子どもに接することが難しい状態になってしまったら。いつ自分が病気になるかは、分かりません。保育園は児童虐待を防ぐ意味でも、重要です。
また、専業主婦でもリフレッシュのために、保育園を利用できるサービスもあります。現状の保育園にそんな余裕がないことは言うまでもありません。少しの時間であっても子どもを見てくれる身内がいない人はどうすれば…。保育園は、働くお父さんお母さんだけのものではないのです。

また、現在の保育園にも改善できる点があると思います。0、1、2歳は待機児童の数が多いけど、4、5歳は募集がある場合もあります。預かれる人数が増えるし、幼稚園に入れる月齢になり子どもが分散するからです。その募集分を0、1、2歳にまわせればいいのですが、やはり課題が。保育士一人当たり0歳なら何人まで、保育スペースも0歳ならこれくらいのスペースが必要など、決まりがあるのです。保育スペースが部屋で区切られてしまっている場合、この案は不可能です。体育館のように広いスペースに、月齢と人数に応じてパーテーションで区切るなど、フレキシブルな設計にしてみたら改善できるかもしれません。もちろん、子どもの安全が第一なので、よく考えなければならないと思います 。子どもの安全、子どもへの目の届きやすさ、保育士さんの働きやすさ、預ける親の安心感。ハード面からもソフト面からも、より多くの柔軟な発想と工夫が、この待機児童問題には必要です。

これから、保育園や幼稚園を設計するOB、学生の方もいらっしゃるでしょう。ぜひ、子どものために、お父さんお母さんのために、地域に暮らすみんなの幸せのために。アイデアを練っていただきたいです。私も発信していきます。もちろん、子どもも大切、そして、働きたい気持ちも大切です。

2013年4月1日
増子瑞穂
Twitter: massykachan

kiss and hugサイト
http://www.j-wave.co.jp/original/kissandhug/lounge/