■増子瑞穂さんの「キャスター・マッシー通信」連載 - 131(01/11/2014)
「祝!ノーベル物理学賞受賞!」
●これらは青色発光ダイオードが誕生しなければ表現できませんでした。
めっきり寒くなってきました。10月は小学校学童や保育園の運動会などの行事、大型の台風上陸2回、さらに皆既月食となんだかあっという間に過ぎて行きました。そんな盛りだくさんの10月、上旬にビッグニュースが飛び込んできましたね。日本人のノーベル物理学賞受賞です!清水先生、鈴木先生のコラムとネタがかぶるかもしれないと思いつつ書いてます。
10月下旬、日本科学未来館から放送された、ノーベル賞解説番組に関わらせていただきました。ノーベル賞のなかでも自然科学三賞といわれる「生理学・医学賞」「物理学賞」「化学賞」についてです。
まずは、ノーベル賞とはなんぞや?ノーベル賞とは、アルフレッドノーベルさんの「人類に最も貢献した人に賞を送って欲しい」という遺言をもとに作られました。アルフレッドノーベルさんはダイナマイトの開発者です。ダイナマイトで得たお金からノーベル賞の賞金が出ています。遺言で残されたのは生理学・医学賞、物理学賞、化学賞、文学賞、平和賞、この5つの分野。途中で経済学賞が加わり6分野になりました。経済学賞の賞金のでどころは別になっています。
自然科学三賞、今年の受賞テーマですが、生理学・医学賞は「自分の場所を知るための脳細胞、細胞回路の発見」
物理学賞は「明るく省エネな白色光源を可能にした効率の良い青色発光ダイオードの開発」
化学賞は「超高解像度蛍光顕微鏡の開発」
……。難しいですね。ここはやはり比較的わかりやすい、いえ、日本人が賞を獲得した物理学賞について。笑。
物理学賞「明るく省エネな白色光減を可能にした効率の良い青色発光ダイオードの発明」
青色発光ダイオード、一般的には青色LEDという言葉の方が身近です。LEDは、家の電球やパソコン、信号機、電光掲示板など。すでに生活の中に普及しています。近くのスーパーやコンビニで普通に売っているものが受賞したんですね。これは珍しことかもしれません。あと、スカイツリーのイルミネーションもLEDですね。
物理学賞受賞者は赤崎さん、天野さん、中村さんの3人。赤崎さんと天野さんはもともと同じ研究室の師弟関係で、中村さんは企業の研究者でした。つまり赤崎さん天野さんコンビと、中村さんはライバル関係。それぞれ切磋琢磨しながら、青色発光ダイオードを開発していました。
かつてLEDは赤と緑しかない時代が続きました。LEDの誕生は赤が1962年、緑が1968年。赤崎さん、天野さんコンビが青色のLEDを作ったのが1989年。赤や緑の登場からかなり経っています。
青色の光を作るには、基板となるサファイアに「窒化ガリウム」という物質をくっつけなければなりません。これがなかなかくっつかない。
そこでサファイアと窒化ガリウムの間に窒化アルミニウムという別の物質を挟んでうまくくっつくようにしました。
(トンカツにいきなりパン粉をつけようとしてもうまくくっつかないので卵を繋ぎにするのに似てますかね。どうかな…)
こうして、試行錯誤の結果、青色のLEDが誕生しました。
が、製品化するにはほど遠い、弱々しい光。そこで中村さんが、青色LEDの明るさを100倍にし、効率よく製品化することに成功しました。赤のLEDの誕生から30年以上経ってからのことです。
さて、青色LEDが登場したことによって、何が変わったのでしょうか。
青色LEDというからにはやはり青。青色の幻想的なイルミネーションや、スカイツリーの青いライトアップを想像する人も多いのではないでしょうか。
青を作ることは白色を作ることです。今回の受賞テーマも「……白色光源を可能にした…青色発光ダイオード…」とあります。
上の写真をご覧ください。ノーベル物理学賞発表後、東京駅で仕事したときに撮影した電光掲示板です。祝!ノーベル賞!気分で。
(ちなみに東京駅は今年開業100周年を迎えます。そのハナシはまたの機会に…)
こまちのピンクとときのピンクの絶妙な違い。あさまのしっとりした紫。そして、鮮やかでくっきりとした白の文字。
これらは青色発光ダイオードが誕生しなければ表現できませんでした。
光の三原色は、赤と緑と青です。赤の光と緑の光を合わせると黄色の光になります。ここに青の光が加わると白になります。赤の光、緑の光、青の光、光の三原色3つを合わせると白の光になるのです。
(ちなみに色の三原色は赤と黄色と青。3色を混ぜ合わせると黒になります。絵の具や印刷など、普段の生活では色の三原色に触れることのほうが多いので、光の三原色の感覚は頭に入ってきづらいですね)
写真の電光掲示板の白は、青色の光がないと作れません。こまちやときのピンクも作れません。
ピンクに染まったスカイツリーが話題になることがありますが、これも青色LEDのおかげでピンクに光ることができるのです。青が誕生したことによって、LEDであらゆる色が作り出せるようになったのですね。
そして受賞テーマの冒頭、「明るく省エネな……」とありますが、どれくらい明るくて省エネなのか。
オイルランプが0.1だとすると発熱電球は16、蛍光灯は70、そしてLEDは300という明るさ。LEDは同じエネルギーから、蛍光灯の4倍以上の明るさを得られます。また寿命は、つけっぱなしだとして、白熱電球で1000時間、蛍光灯で1年2ヶ月、LEDでは11年5ヶ月。
子どもが生まれたことを記念してLEDを取り付けたとしたら、その子が小学校を卒業するまでLEDは成長を照らし続けるのです。あぁ、なんだか感動。(そんな家庭はないとは思いますが)
今年のクリスマスツリーの電飾は、ノーベル物理学賞の受賞を記念してLEDに換えよう。ちょっとお高いけど奮発して思い切って買っちゃおう。
そして、子どもがノーベルなんとか賞を受賞したときに、「これはLEDでノーベル物理学賞を受賞した年に買った記念の電飾なのよ」とか言おう。親バカ妄想は膨らみます。
10月25日に放送したニコニコ生放送。「誰でもわかる今年のノーベル賞〜生理学・医学 物理学 化学賞〜」できっちり詳しく解説されています、ぜひご覧ください。
http://live.nicovideo.jp/watch/lv195203973
またお台場にある日本科学未来館にはノーベル自然科学三賞に詳しい科学コミュニケーターと呼ばれる方達がいます。足を運んでみて、色々話を聞いてみてはいかがでしょうか。
http://www.miraikan.jst.go.jp
2014年10月31日
増子瑞穂
https://twitter.com/massykachan