■増子瑞穂さんの「キャスター・マッシー通信」連載 - 151(04/07/2016)
「海底広域研究船「かいめい」」
●海底 広域研究船「かいめい」
5月、神奈川県横須賀市にある海洋研究開発機構JAMSTECで、海底広域研究船「かいめい」の一般公開が行われました。
去年6月に秋篠宮家の次女佳子さまが「かいめい」の進水式に出席され、今年5月には秋篠宮家の長女眞子さまが「かいめい」を視察されました。ニュース映像でこの様子を見た方も多いかと思います。
「かいめい」は全長およそ100メートル、幅およそ20メートル。比較的横幅の広い船です。定員は65人、うち研究者は38人乗ることができます。船の甲板は木でできていて、乗せる機器への衝撃や人の体への負担が少なく、温かみがあります。完成したばかりの船体は真っ白で、色々な設備が新しく、新車(新船?)の匂いがしました。
海底広域研究船「かいめい」。一言でいうと、色々なことができる船です。調査機器、観測機器を積み替えて様々な目的に対応できます。例えば、海底下の地殻構造の探査。そして海底資源の調査です。
地殻構造の探査は、「かいめい」から海の上へ、ケーブルを浮かばせます。そしてエアガンから海底に向かって音波を発 信。海底下からの反射音をケーブルで受信します。解像度の高い3次元で、海底下の地殻構造がわかるしくみです。
この地殻構造の探査によって、地震のメカニズムがわかるようになるのかもしれません。ぜひなってほしいです。
海底資源の調査は、パワーグラブという機器を使って、水深6000メートルの海底サンプルを1立方メートルの塊で持ってくることができます。まるで巨大なUFOキャッチャーのようです。パワーグラブは、固いサンプルをつかむ6本爪型と柔らかいサンプルをつかむシェル型の2種類あります。
さらに40メートルピストンコアラーを搭載。水深12000メートルにある海底サンプルを、長さ40メートルにわたって取ることができます。加えて水深12000メートルの海水を採取することができる機器も搭載されています。
なぜ、12000メートルなのか。地球上でもっとも深いところは水深10911メートル、北大西洋のマリアナ海溝チャレンジャー海淵だといわれています。海の最深部のことを「フルデプス」というそうです。なので12000メートルに対応しているということは、地球で最も深い場所にいわば手が届くということです。「かいめい」が、地球の一番深い場所のサンプルを持ち帰ってくるのはいつなのか、ワクワクします。
これらの 調査は、最先端の推進システムによって支えられています。360度旋回できるアジマス推進器とバウスラスタという推進システムで、風や潮があっても流されず、広い海の上で同じ場所に留まっていられるのです。(すごい!)
また様々な調査をする際、鯨などを守るための監視室も設けられています。鯨の監視はとても大変な業務かと思いますが、船の一番上に部屋があり見晴らしが良く(当たり前ですよね)特別室のように感じます。素人考えですみません。。。
現在「かいめい」はおよそ1年後の本格的な運用を前に、様々な試験航海が行われています。
まずは「かいめい」に関わる人々の安全を。そして「かいめい」によって未開の深海を解明してほしい。嬉しいニュー スが飛び込んでくるのはいつなのでしょうか、楽しみです。
2016年7月1日
増子瑞穂
https://twitter.com/massykachan
マッシー通信関連コラム
「地球を掘る船、ちきゅう」
http://www.nudn.net/maccy/144.html
「しんかい6500(本物!)」
http://www.nudn.net/maccy/117.html
「30万人で海底探査の旅〜しんかい6500」
http://www.nudn.net/maccy/115.html
参考
佳子さま、海洋調査船の進水式に出席
http://www.asahi.com/articles/ASH674GHMH67UTIL008.html
眞子さまが新海底調査船「かいめい」を視察
http://www.news24.jp/articles/2016/05/18/07330458.html
●監視室の中、見晴らし最高です
●船尾、調査機器を海底へ降ろすためのクレーンがあります