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清水教授のデザインコラム/連載 - 111(12/31/2011)

モビリティーの新世紀!」

電気自動車が主役に
 第42回東京モーターショーが東京ビッグサイトで始まった。前回の幕張から会場を移しただけに地の利では圧倒的に来場者が多いようにみえた。
会場で、とくに目についたのは実用化で世界の先端を行くEVの可能性を提案するものだ。 電気自動車(EV)やハイブリッド車(HV)といった環境対応車を今後の主力としていこうとするのだろう空気感も感じとることができた。  
EVは環境に優しいというだけではなく、エネルギー源としている電池を家庭生活の電源としても使うことができるというものだ。
そんなEVを電源にした住宅展示もあり、屋根におかれた太陽光パネルとの組み合わせで、効率的なエネルギーの管理もできるというものだ。
今後は、車と家電住宅のトータルなデザインが課題ともなる。問題となっている原子力発電に変わる自然エネルギー出力の安定を考える意味でもそのシステムは重要。
自動車メーカーが車づくりだけに集中する時代ではないということでもあるのだ。

それでも、未熟な人間が操作することで、悲惨な事故が引き起こされている。その当事者になりかねないリスクの高さを考えると敢えてユーザーであることをやめたくもなる。安心・安全に走行できる環境は、まだまだ途上であり多様化するモビリティ―に対応した在り方の整備が急がれねばならない問題だろう。
自動車、そして電気・電子技術などによる製品の成熟、世界に先行していたことを考えると我が国が世界の追従を許さない技術とデザイン力をもって存在感を示すべき時でもあるのではないか、と。

かつての日本が欧米製品を追い、追い越した過程とおなじ
デザインもまた成熟?
そう見える我が国におけるさまざまな現象を見ることが多い。
沈みつつある船から早くとび下りねばという焦り・・・。

いまは韓国のデザインが日本を超えたと言い、某社幹部が日本のデザインを追い越したとも言い放っていた。深夜のニュースの経済番組だった。
「日本も韓国のデザインに学ぶ必要がありますね!」という番組のコメンテイターの意見は、もう数年も前にも聞いたような・・・。
内容は発展途上の日本が、かってやってきたことでもある。
欧米先進国に習い、学ぶ・・・。
いまはその事を知る者も少なく、世界の市場に学ぶ姿勢を失ってもいるのではとすら見え、過去の手法として捨て去ったことだったのだ。
このことはこれまでのコラムにも繰り返し書いたような気がする。
製品生産をするうえで、追う者は強い。既に市場にある製品を選び、分解し、超えるアイデアを加えることで再び組み上げて自らの製品だ、とすればよいからだ。
ユーザーもまた、「デザインがいいね!なによりも値段が安い・・・、走るのに申し分ないしね!」と。車をはじめて所有する喜びは先進国で求められているものとは明らかに違う質的レベルでもあるのだ。

次世代のデザイン力が求められる
 EV自体の技術も電池の容量も少なく、走れる距離が短いという欠点も数年後には笑い話になるのだろう。電力消費率の低さを可能にする技術は格段に進化することになるからだ。
昨年の「東日本大震災」後の原子力発電の問題。災いは我が国の生き方におおくを考えさせるものになった。電気の無い生活が考えられないほどに多くを依存した製品に囲まれていたことにも驚いていた。
循環型社会という価値観の中で、その移動効率を求めて様々なシチュエーションに応えた車が登場してくることになる。
我が国では、車の充足感の中でエコ車への買い替え需要に限られるのかも・・・。

大学ベンチヤー、素材メーカー、電機メーカー、部品メーカー、医薬品メーカーなどの異業種からの参入が可能であり、また、各国、企業間の思惑の中で技術開発から販売までの提携が進められている。
生産活動に参加する全ての人の試行錯誤を繰り返すことで得られる独自の創造的な環境からは、次世代へ向けた可能性が提案されて来ることになるのだ。
新しい時代の経営者との共感覚、デザイナーの感性と発想力がもとめられることになる!

                              (2011.12.31)