■清水教授のデザインコラム/連載 - 123(01/04/2013)
日ごとに温かさを感じる季節、はやい桜の開花には驚かされている。
昨年は1000円だったというデパ地下の花見弁当、今年は1500円が売れ筋なのだとか。なかには2〜3千円の豪華版を奮発するものもいる、と云うのだからアベノミクスの心理効果は大きい。 うつうつとした20年!そんな憂さを晴らしたいという気分、きっと良くなると思いたい期待感も大きく膨らんでいるのだ!
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「商品売り上げ、293億円以上(2012年)地方でも、役所でも、ここまでできる!」
「地方公務員集団が起こしたサプライズ、2010年『熊本サプライズ』キャラクターとして登場した、くまモン。ゆるキャラくまモンを全国的に人気の『売るキヤラ』に育てたのはPRの仕事も、キャラクタービジネスも経験ゼロの、しがない地方公務員集団だった! 後略」(『くまモンの秘密』幻冬舎新書)
昨日の読売新聞に幻冬舎の書籍広告が掲載されていた。
いまという時代を映してか、「ゆるキャラ」なるものがブームらしい・・・。
ぎすぎすとした社会の不況感のなかで、笑いと癒しのあるキャラクターを、と。しかし、何よりも仕掛け人のもくろみは、地域経済の活性化をはかりたいことと全国的に知名度を上げたいということ。
最近は、そこここでもやっていることもあって、自分の思いだけの軽いノリの便乗組も結構いるようにみえる。あるいは、ぬいぐるみに隠れた自己表現のパフオマンスくをという考えも潜んでいる?マンガやアニメの主人公のように、その気分を体験したい手作りの参加者もいるのだろう。公私にわたる5千種類余ものキャラクターが競い合っているのだとか。
その中でも「くまモン」はひときわ目立つ存在で人気があり、ことさらにゆるキャラブームに火をつけることになった。ここ数年の八面六臂の活動ぶりに経済効果は測りきれないものになっているというのだから、誰しもが二匹目のドジョウをと考えたくもなるのだろう。
もっとも、その前2006年には彦根市の「ひこにゃん」。ネコの鎧兜すがたのイラスト、ぬいぐるみが可愛いと全国的に人気だったようだ。ただ、原作者と市が実施権の争いをしているというニュースも、くまモンの追い上げもあってか5年にわたる係争も最近、和解が成立したのだとか。
「くまモン」は、熊本の九州新幹線全線開通に合わせて生まれた。
何よりも連想しやすい熊本県の「熊」をモチーフに。シンプルに黒いのは普通にクマのイメージカラーだろう。基調色が黒い熊本城とも重なるのだと。しかし、結構見られるようにくまのイラストは多いわけで、その差別化が面白い。つまり、両頬の赤が効果的なワンポイントになっていること、くまモンのキャラ、アイデンティテーとしていることだ。
黒熊の頬がアンパンマンのように赤いというのはあり得ないことだと思いがちだが、熊本のモン(者)ならば案外抵抗はないのかも。両頬を赤く塗っておどけた仕草で陽気に歌い踊るこの地方の民謡、「おてもやん」を連想するからだ。
やんちゃな男の子だという。黒いダルマのようないわゆる寸胴短足。ご愛嬌の体形はディズニーに登場するちょっと小太りな「クマのプーさん」にも似ている。
いたずらっぽく見える目が印象的だ。
もちろん擬人化した動物のぬいぐるみは、その場の空気に素早く反応し、それらしきユーモラスなパフオーマンスが出来る力が必要だろう。
ところで、「くまモンの秘密」にあるように、「地方公務員の集団が・・・」といわれているが、もう一人、ぷろの仕掛け人としては小山薫堂氏の名が挙がっている。2010年から出身地 熊本県の地域振興キャンペンに取り組んでいるのだとか。
「みんなを驚かせ、幸せな気持ちにさせ、自慢できるものを探す取り組みの中でくまモンは生まれた。『日常の小さな幸せを発見できるキヤラくター』という設定」なのだと、読売新聞/「広角けいざい論」(2013/1・4)の中で、取材に答えている。
デザイナーによるくまモンの正面や側面、後ろ向きの寝姿などイラストパターンは20点余、表情は8点が提示され、使用者が選べるようにされており、熊本のイメージアップを前提に無料での使用権が与えられているのだとか。
ところで、「小山さんは日常的にみる様々なものに対して、『こうしたらいいのに』と、勝手に改善策を考えているという。インタビュー中にも、次々に面白いアイデアが飛び出してきた。アイデアのヒントは、暮らしの中に隠れているようだ・・・」と、聞き手畠山明子さんはコメントをしている。
特別なことではない。優れたクリエターであっても日常的な観察は欠かさないだろうし、自ら感性を磨き、突き抜けたアイデアを生みだす努力をしている、ということなのだ!
(2013年/3・31 記)
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メモ:小山薫堂(こやまくんどう)放送作家1964年生まれ,日大芸術学部放送学科卒「料理の鉄人」「世界遺産」、映画脚本「おくりびと」などの人気番組を数多く手がけている。東北芸術大学デザイン工学部企画構想学科 教授