■清水教授のデザインコラム/連載 - 130(01/12/2013)
「いまの若いビジネスマンに言いたいのは、
戦略的思考を磨きたいのなら、『自分の目で現象を見ろ』ということだ。
勉強の基本は1に観察、2に観察である。」
(「今日のプレジデント言行録」president online news vol.536 2013.11)
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折々に配信して頂くプレジデント編集部のオンラインニュース。冒頭で見た「言行録」だ!
「観察」については、コラム126(「デザイン力―観察力による情報と記憶のためのツールとしてのスケッチ力」2013/8・1)に、ほぼ同様の内容で書いたばかり、気になる文言だった。
「観察」とは対象の見方であり、ヒトやモノ、様々な現象を注意深くみることで、全神経を集めて本質を見抜き、核心に迫ること。これまで気付くこともなかったことに気付き、読みとることも可能になるもの。観察とスケッチ、その繰り返す経験と記憶量が自らのデザイン力になり、人間力の根幹ともなって思考や行動の動機となるものだ、と。そう、実は、これまでにも繰り返し述べてきたことでもある。
しかし、いま私たちの周辺を見渡してみても、観察するという意識は薄れ忘れ去られているのではないか、とも思えることばかりだ。IT機器を駆使することに忙しく、そう錯覚させているということ。冒頭の「言行録」はまさに、そのことを指摘したものだろう。
私たちは生まれながらに、目に映るさまざまなものを見ており、生きる術(すべ)としての本能であり、周辺のすべてに好奇心で一杯だった・・・。
人の成長は興味の対象や好奇心の内容を変へながら、幼児期の個性をゆるやかに形づくることになる。学校では、「朝顔の成長」や「水槽のメダカ」の観察・・・。あるいは、両親の似顔絵を描き、風景画の家や木などを写生する頃になると、見ることが観察として意識したものになる。ビジネスマンに限らず、すべての人にとっても「観察力」は極めて重要なことであるといえる。勿論、デザインを志すビジネスマンには「眼と手で考える」こと、つまり、観察力と思い描く力(戦略的思考)が強く求められることになる。
ところで、あまりにも専門性を狭くしすぎたようにも思う。
ときには対象を広くし、俯瞰するのもよいだろう。大空のもとで流れる雲の形を、山の、峯の連なりを眺めることも・・・。季節や時間の移ろいは自然の、大気や地表を覆う木々の彩りを鮮やかに変えて見せてもくれる。あるいは、そこに潜む動物や昆虫などの密かな営みを想像し気配を感じることも楽しく、素晴らしい!
まさに、森羅万象ともいえるものの変化を「鳥の眼」、「虫の眼」になって観察してみることだ。大気中にある光、目に映る色をパレットにおき、絵具を絞り交ぜ合わせながら紙面に写し取ること。数度、数十度も繰り返し試みることも・・・。