■清水教授のデザインコラム/連載 - 136(02/06/2014)
ところで先日のニュース―京都大学医学部の手術は、「夫の右の肺の一部を前後に回転させ、妻の左に。ドナーの肺の一部を左右逆にした生体肺移植の成功は世界で初めてのこと。この難しい手術を成功させたのは3Dプリンターによる肺の精密なモデルを使い手術のシミュレーションを重ねたことが大きい」のだとか。
人間の骨、臓器などは極めて小さく難度は極めて高い。患者個人のCTスキャンデータから3Dプリンターを用いて製作。素材は実物に近い超軟質の感触を持った樹脂で、内部の大動脈の太さ、内壁まで緻密に再現する事が出来るらしい。表面の血管部分は空洞でカテーテルが通る。実物感覚としてメスで切除することも、糸で縫合することも可能だというのだ。近い将来、超軟質の素材が開発されると生体の臓器すらも作成することになるのではないか、そう思わせる精度の進化だった。
そんな多くの事例を見るまでもなく、発想力があれば10個、20個、或は、100個200個という少量生産の「モノづくり」もあるのでは・・・。
(2014/5・31記)
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メモ:
3Dプリンターの進化は・・・
・高速で動くノズルから樹脂などを吹き出すことで、連続した造形、大量生産も短期間で可能であり、開発コストが大幅に削減されるのでは。
・中空形状・複雑な内部構造形をも1体形状として作ることが出来る。
・精細度が良いだけでなく超軟性の材料が使え、複数の異なる材料を混ぜながらの造形やカラー造形も。
・透明度の高い樹脂を使うと構造の仕組みや液体の流れを見る事が出来る。
・硬質樹脂や金属粉末などで機器の金属部品や医療用の人骨部位などの造形も可能になるのでは。
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・何時だったろうか?この機械―「光造形機」をはじめて見たのは・・・。多分、国際見本市の会場が晴海にあった時代だったのかもしれない。
デザイン実習のモデル製作が比較的簡単に出来るのではと真剣に導入を考えたこともあった。しかし、発明者が言われるように当時はまだまだ造形が粗雑だったこともある。が、教育上の「モデル製作は、その便利なモノ作りを学ぶことではなく、複雑な具現化のプロセスを学ばねばならないもの。加工性、材料、部品を組み合わせた造形の質、美意識などを考えるものである」と・・・。
その後、「3Dプリンター」と呼ばれるようになって、コラムのメモ欄?にも取り上げたこともあったが・・・。これほどの進化、用途の可能性を予測したものではなかったようにも思う。良識ある発想を!とも思う。