■清水教授のデザインコラム/連載 - 139(02/10/2014)
より良いデザインのアプローチ――そのためのアイデアは、「質」よりも「量」を考えるべきだと、これまでも繰り返し述べてきた。
学び思考する初めには、解決すべき可能性の広がりを知ることが大切だからだ。
しかし、最近はIT使用時間や他の課題に追われるということもあるのだろう、その意図をくんだアイデアの量を見ることは少なくなっている。
それほど「テーマ」についての理解に時間を掛けずとも、デザインは出来ると考えている者も多くなったということもあるのだろう。
確かに・・・それらしき「もの」は出来きている。「良いか」「良くないか」は即断し難いもの。デザインには絶対といえる答えはなく、ユーザーの手の中で満足がいくものであるかの結論が得られるというものだから。しかし、だからこそあらゆる可能性について熟慮することが要求されることなのだ。分からないままに最終プレゼンを済ませれば、1つの課題は終わってしまい、記憶すら残していないのではと思うこともある。そんなゆるい生き方、その繰り返しでは、「デザイン力」の拡張は絶対にあり得ないということになる。
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課題となる「モノ」――その多くは既成品、受講生の興味と理解力に合わせて選ばれ提示されていることが多い。
確かに、「知っている」と言い、「使ったこともある」とも言う。しかし、詳しくは説明出来ないというレベルの理解力で、これまでの知識や経験も少なければ、それがどういう「類のものか」、それを「どうアプローチするのか」と言うことすらもわからないということになる。しかも、「わかった」つもりのアプローチ。その程度のことで出来てしまう「デザイン」であれば、誰もが「出来てしまう」と考えるべきことだろう。
前々回のコラム「気になるキーワード」でも取り上げた、「理想化のイメージを描いてみる―現状、その先を考えながら、自分なりの理想、イメージをスケッチやメモにしてみる」という、日常的なトレーニングだ。そのことによって、テーマに対する初期の乏しい理解力でも起点となるイメージを描けるものだ。
テーマとなる「モノ」とその望ましいカタチ→「理想形」との「ギャップ」となるところが問題となるものだ。その十分な理解、把握がなければ「解決のイメージ」も頭に浮かばない。当然、アイデアが無くスケッチの量も進まないということになる。しかし、それらしきアイデアに出合ってしまうと、もはや「出来た!」と思い込んでしまう。なより問題となるのは、そのことに終始し他の可能性、自らの限界を超えて発想が広がるという貴重な体験の機会を失ってしまうことだろう。冒頭の「アイデアの量を」とは、そのことを避けたいがためにでもある。
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ただ、演習という限られた時間の中では、「テーマ」について十分に考え、「コンセプト」を作成してから取り組むという訳にもいかない場合が多い。なにしろ、乏しい理解力では「何が分からないか」すら、実は「分かっていない」という訳だから。「分かるまで調べる」という時間は得られなし、問題の前で立ち止まっていても解決はしない。歩きながら考えるという行動力と覚悟が必要だろう。コンセプトが不十分でもテーマに取り組むプロセスの中で「わからない」ことがわかり、関わるデーターが視野の中に集まりはじめると理解は格段に進むようになるものだ。
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もちろん、個人の脳力にもよるが、その可能性の「アイデア」は無限と言えるほどにある。自分の頭の中にあるものの全てを、まずは、イメージスケッチにしてみる。
あくまでも自らの乏しい理解レベルを自覚するもの、次への一歩を踏み出すためのものだ。「イメージスケッチ」を前にし、さらに、気付いたことを「スケッチ」や「メモ」などに・・・。5点、10点、20点、30点・・・50点・・・100点と、初めに思い付くことは平凡で独創性に乏しい。しかし、わかったつもりの狭く偏向した判断力、そして、未熟な理解力での否定に走りがちでもあるからだ。面として眺め、比較できるまで評価は避けることが肝心だろう。
徐々に発想量を増やしていく中で、「ヒラメキ」を得てアイデアは飛躍する。少なくとも期待した数、あるいは期待を超える数量を努力目標にすることで多様な解決の可能性が確実に見えてくるようになるものだ。
その事を繰り返し、確りと自らの脳裏にとどめることが大切なことでもある。
多くを広げ学ぶとき、知り得た知識・情報からこれまでは考えられなかった斬新な発想力にも気付くことになる。
(2014/9・30記)
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メモ:多様な可能性を網羅、整理し、自らの知力を知る・・・
「マインドマップ」は、トニー・ブザンが提唱し、自分の考えを絵や文字で整理する表現法。デザインを学ぶ者にはうってつけの方法。
脳の思考を開放し、「放射思考」に基づくノート術・発想術のこと。
1枚の大きな紙に、表現したい概念=テーマやキーワードを中央に書き(描き)、そこを起点に放射状に連想するキーワードやイメージを連ね発想を広げていくというものだ。
情報を網羅、整理し、俯瞰しながら考え記憶する。
勿論、情報の整理だけではなく発想法や複雑な発想時の整理分析や記憶法としてのデザインに有効。
PCソフトに依存するのではなく、まずは自分流に手描きしながら俯瞰して欲しい。問題の構造を明確にすることで、解決のための可能性を、イメージを描いて見ることもできる。
○自分自身を俯瞰し確認することが出来る―個性―知識―知恵―発想力
○デザイン開発―テーマに対する理解―問題の構造―現状と理想のギャップ―解決の可能性―解決するための方法―収集すべき情報・資料―競合・類似製品―しなければならないこと―目標や計画の立案・・・・
○記憶力―集中力、脳力のブラッシュアップ
○プレゼンテーションやレポートのための資料リスト
○その他