■OBの仕事・作品紹介

□西澤直也さん＜カシオ計算機(株)デザインセンター＞(H9度卒)からの最近作品の報告。

西沢さんは卒業と同時に「CASIO」に入社。今回紹介して頂くデジタルクロック、防水液晶テレビはカシオのメインプロダクトの一つです。西沢さんの最近作を御覧下さい。

●CASIO ソーラーパワーと電池駆動「ハイブリッドソーラーシステムデジタルクロック(DQS-200)」

みなさんは「電波時計」を知っていますか？
時計は従来長期間の使用に伴って時刻の遅れが生じていました。
その問題に着目し国内にある二ケ所の標準時間発信基地からの電波信号を受信する、「絶対狂わない目覚し時計」として開発されたのが「電波時計」です。
今回の機種はその機能にさらに一歩踏込み、太陽光を利用して電力を補うことで飛躍的に電池寿命を延ばし「電池交換からの解放」を実現しています（厳密には7年寿命）。



デザインにあたって様々な形状提案をしましたが常に念頭にあったのは、今後長い付合いになるであろう高性能な目覚し時計を、目障りでないシンプルでスマートな外観にまとめることでした。結果筒状の本体を基本として、浅く切取った部分が表示となり、両端が各種設定の為のスイッチとなりました。それを支える土台部分を効率良く受光出来る様意識したスラント形状とし、そこにソーラーパネルを配置しました。



製品化の際に、限られた構成部品点数と製造上無理のない形状であること、そして上で述べたようなデザインの意図を両立できるかが最大の難関でした。



●CASIO　デジタル無線伝送システム採用「8インチ防水液晶テレビ XFER (XF-800)」

カシオ計算機では近年新しく「防水」というコンセプトで水回り（キッチン、お風呂）での利用を考えた商品を開発しています。
この機器の最大の特徴は「無線で映像、音声を乱れ無く送受信出来る」ということにあります。
従来の電波受信型TVの場合、どうしても屋内や地下での受信感度の低下が避けられませんでしたが、XF-800の場合送受信部は常にアンテナ線と繋がっているため、モニターに送る画像/音声への障害が少なくて済みます。以上のことから屋内でも安定したデータの送受信が可能になった訳です。



デザインにあたってはまず最初に、その後アイデア展開をする時の指針となるイメージボードを作成しました。それを元にイメージを膨らませ、新しい形状、表面処理、構造提案を進め、最終的に脱衣での使用を考慮したソフトな形状とし、顔となるモニター周りは映像鑑賞時に目障りにならないようなすっきりしたデザインとしました。表面処理もクリーンなイメージのパールホワイトを用いて、ベロアメッキボタンやミラー印刷といった「高級感」のある処理を施しました。
最も難しいポイントだったのが、「防水感」を持たせながら部屋にあっても違和感の無い物に仕上げる、ということでした。設計的、コスト的な制約も多々ありましたが、結果的には狙っている以上の物が出来たと思っています。この商品は苦労の甲斐があって2002年度グッドデザイン賞に選ばれました。


●学生諸君へ
実際のデザインという仕事は決して楽しいだけの作業ではありません。スタイリングは最も大切なことではありますが、それ以外にも製造側の制約やコスト的な問題への対処、企画意図に対して的確な回答をしなければならない為、必ずしも自分の思い通りにはなりません。
ただ、色々と障害やハードルがあった中で最終的に商品として完成させ、それが市場を通して誰かの生活を楽しく出来る、ということはとても有意義なことだと思います。（西沢さん：談）


●ホームページは下記アドレスです
QDS-200：http://www.casio.co.jp/flash/0211/4_2_d.html
XF-800：http://www.casio.co.jp/tv/xfer/