白紙撤回となってしまった五輪のエンブレム問題・・・。
これまでの失敗を繰り返すまいという組織委員会、「エンブレム委員会」が、新しいエンブレムの応募要項を発表している。
今回は、18歳以上の日本人、または日本在住の外国人が代表者であれば、グループとして作品の応募ができる。経験やデザイン関連の受賞歴も問われないグループ応募を可能にしたことで子供や外国人の参加も考えられるというものだ。日本の老若男女と言えるほどにすべての人々を網羅した多様なグループの参加もあるということだろう。
そして、オリンピック・パラリンピックとしてのビジョンのキーワードも・・・。
「スポーツの力」「日本らしさ・東京らしさ」「世界の平和」「自己ベスト・一生懸命」「インクルージョン(一体性)」「革新性」「未来志向」「復興」などだ。
いうまでもなくエンブレムを発想する手掛かりとなるもの・・・。まずは、よく咀嚼しながら発想の糧とし、「形」としてのイメージを浮かび上がらせること。1人、あるいは、グループで探りひらめきを得たさまざまなアイデアを記述していく。「ひらめき」はテーマについて考え続けたある時、突然に生まれるもので忘れないように素早く紙面にとどめることだ。そんな、メモや図形のスケッチは手描きがなにより効率的だろう。
ここに、幼児や小・中学生などの参加があれば、彼らにとっては代えがたい貴重な体験になり、記憶として残るものにもなるに違いない。もちろん戦力としては、とらわれることのない「素」のスケッチに大人とは異なる「なにか」を潜ませたものであり、それらの発想をひろい上げるリーダの感性と眼力しだいということにもなるのだが・・・。
応募間口の広がりに審査委員もまた、各界から選ばれた人材が並んでいる。
しかし、応募作品に対する条件・内容については多士済々の委員であるとはいえ、プロとアマの差があり、視点や感性の差、審査・評価の差(そういう人を選んだということも)はあるものだろう。
選考の公正さ、透明性を保つことは当然だが、何より発想の新奇性を読み取り、1点に絞り込むプロセスでの解釈や判断の差をどのように収束してゆくのかは極めて難しく懸念されることなのだ。
多くの人々の意識を喚起する国民投票も、それらの過程、結果を経た作品数点に限られ、それが問題でもある。デザインの経験や受賞歴は不問としたことで応募は多く、内容表現のレベルも雑多であろうことも想像される。煩雑さで混乱も多いのだろうが、新奇性をもったアイデアを見落とさないで欲しいものだ。
エンブレムの審査は、「共感性」「シンボル性」「オリジナリテイ」「デザイン性」「展開性」「再現性」などが考慮される。応募者はこれらについても十分に考えを巡らせておかねばならないことだ。
エンブレムの展開、応用の可能性として、構築物、交通機関の壁面や空間・・・。
グッズなどにも展開、応用していくということもあり、形式的要件を満たしているかなどのチェックを経た予備審査が行われ、幾つかの審査を経て徐々に絞り込まれていく。
応募についてはネット上の専用サイトでのみ受け付け、作品のタイトルは20字以内、エンブレムについては、200字以内で自分の思いや制作意図、形の意味などの文章を提出することが条件だ。
描画ソフトで製作した作品に限定され、手描きでは難があり受け付けないのだという。しかし、常識的な形状、文字、色彩、レイアウトなどの狭い範囲でのデザイン要素を組み合わせての使用は、類似性が重なることであり、オリジナリテイの主張を弱いものにしかねないようだ。「コンセプトが違う」、「発想が異なる」とは言え、結果の「形状」が類似性を持っていれば明らかに疑われることになるものだろう。
来春、新エンブレム最終案の決定を目指すことになるが、日本が国を挙げて作りだしたともいえるエンブレムが世界で共感され、優れたデザインと言われ記憶に残るものになって欲しいものだ!
(2015/10・31記)
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メモ:
・エンブレムの制作、限られた時間の中で究極の可能性を試みる・・・。その事を考え実現に向けて努力されているが課題は多い。エンブレムを商標登録前に公表すると、第三者が先だって登録してしまう恐れがある。候補数点に絞り込んでも1点が5000万円?なのだとか・・・。宮田委員長は「予算やタイムスケジュールがある、『確実にやります』とは明言できない」と。国民投票が難しい場合はエンブレムのコンセプトなどについてネット上で随時アンケートを行い、結果を審査の参考にすることなどが挙がっている。 国際オリンピック委員会は、エンブレムが「発表まで機密事項として管理すること」を定めており、「事前の公開審査が許されるものかは検討中なのだとか。応募締め切りは12月7日。(日本経済新聞2015/10/17)