雲間に見え隠れする妙義山を左右に見ながらトンネルを抜けて碓氷軽井沢インターを降りる・・・。
研修所へ右折するいつもの林道口が工事中ということで大きく迂回するハプニングもあってようようにして到着した。
緑に覆われた研修所。軽井沢の香り、風はひんやりとして爽やかだった。
しかし、この避暑地も学生には全く無縁・・・。
「地獄のセミナー」と学生は呼んでいるのだとか、父母会でそう聞いた。
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2階セミナー室の机をグループ単位に並べ替えると早々にデザイン作業が始まった。
集合時に配られていたプリントにはテーマと条件あり、バス移動時にはアイデアを思い巡らせる時間になっていたのだ。
それらのアイデアを忘れないように素早く描き移す作業。多分、そこからノルマとされるA2版、40枚のパッド紙面を埋めることになる。
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セミナーも提出時間が迫ると全身の思考回路がダイレクトにつながり、頭と手、足が夫々の意志によって機能し始めるようだ。
緊迫した空間の中では思考力、集中力が増し4枚のパッドにまとめ上げるプレゼンの作業は手際よく実に早いものになる。
最終日の朝、7時の締め切りまで1時間・・・。
毎年見慣れている徹夜作業とは言え、今年は案外淡々として進んでいる。
壁面にグループとしての作業手順、スケジュールが張り出されている。
その所為なのだろう・・・。
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疲労感の中で床一面に並べられた作品に見入る学生たち・・・。自分の作品の出来栄え、他との比較に不安げな顔も・・・。
しかし、やり終えたと言う安堵感に満足げだった。全員が配布された40枚をクリアーしていた。
床面の広さからレンダリングとその説明となる二枚を広げる。38枚余のスケッチ類はその下に重ねて置くことに。
取り敢えずは、その二枚が勝負なのだ!
通り過ぎようとする審査員の足を止めるものでなければならない・・・。
・新しい提案であるのか?
・目的用途にふさわしく、魅力的な造形であるのか?
・使い易さが考えられ、そのカタチを見せているのか?
・生産的であるのか?など・・・。
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今回も駆けつけて頂いた佐々木、中林氏に加へ栄久庵、肥田、土田、林、佐藤、そして私が審査に当る事に・・・。
各自が20ポイントをもって作品にマークする仕組みは30年来のもの・・・。
審査の基本、夫々の<視点>からの判断が尊重されるために記名式になっている。
まずは、全作品を俯瞰してみる。さらに、作品の列の間を思い思いに見て回り、良いと思われるものを手元の紙にメモを取る。
その数回の繰り返しで全体のレベルや個別のレベルを把握することになる。
気になる作品については座り込んでその提案の内容や発想のプロセスをスケッチパッドで確認する。勿論デザイン条件を考慮してのことだ。が例年以上にポイントが入らない・・・。みな似たり寄ったりの・・・。
それでも今回は、5ポイント以上の作品が集められ、その内容、質が比較される。
過不足ない、一定の水準は満遍なくポイントを集める・・・。
しかし、必ずしも他よりもレベルが高いと言うことにはならない。その矛盾点の調整でもある。
この序列化の適正を得ることはいつも難航する。一長一短。レベルが拮抗していることもある。作品の順位が入れ替わる。一対比較による慎重な差し替え。
夫々に、「もう一歩の造形力、表現力が欲しい・・・」と思う作品が多く、審査には苦労した。
今年度、1席、2席、3席、そして努力賞・・・。難航した序列化も一応の結果を得たが最優秀賞に相当するものがなく残念だった。
「受賞者諸君!頑張ったね、おめでとう!」
「意識」すれば、学ぶ効果は数倍になる・・・
「デザイナーになる」、その志し・・・。しかし、その能力は一朝一夕に身に付くというものではない。
常日頃の生活、その中に何かを求める心、好奇心と観察する目を持つことが重要なのだ。それが「デザイン力」、デザイナーとしての資質となるものだろう。
デザインは自らの生活の中で、<目的意識>を持って、<皮膚感覚>を持って学ぶことでもある。
その意味では今回、これまでにない自覚、心構えを見せてくれたセミナーでもあったと思っている。
また、自分の制作に追われながらも後輩の相談に乗り、手助けを惜しまない上級生の姿を見掛ける・・・。その心を忘れないで欲しいとも思う。
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<40枚>を目標とする中で、意識するとしないとに関わらず、実に多くのことを学んでいるのだ。
今回、ここ数年の傾向を廃してスケッチ力、造形力のデザインスキルの訓練を意識させるテーマを選んだ。
適切なカタチを求める造形力が余り意識されず、能力の退化を感じるようになったからだ。プレゼンテイション時の「レンダリング」「カタチ」の意味も見失われ、混乱してもいる・・・。
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ある意味で、<A2版、40枚>の紙面を集中し、思考しつつ埋めていく作業は大変な数量でもある。
各自が独り、挑戦してみたらいい。そのことを直ぐに実感する筈だ・・・。
独りではとても出来ないことも仲間となら出来る・・・。
発想に行き結った時、他人の<ヒント>で、次に繋がる事も分かる。
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このセミナーでの訓練に学ぶものは多いはずだ。
勿論、失敗も大きな学習、飛躍へのステップでもある。
ともあれ、作品の結果、入賞の有無に関わらず参加した人の全てが大きく成長している。その自分を<実感>し<自負>して欲しい・・・。
今年31回目、軽井沢セミナーが終わった。
(’06/6・29 記)