人間の機械化・・・。人間の、さらなる技術開発力によって「身体の能力」を拡張することを目指し、人間の機能を機械に置き換えてもいる。その究極のテーマともなるのが人間の「頭脳」であり、その機械化だろう。いよいよ「知能」を人工的につくり出そうという機運は世界的で、既に実用化されてもいるのだが、その機械化は極めて困難を極めるものだろう。壮大な目標からは、まだまだ緒についたばかりなのではとも思う。しかし、その成果如何によっては、我々の生活は一変するというインパクトをもつた取り組みでもある。
そんな世界的な研究開発競争の中で、先頃、我が国における一つの試みとして立ち上げられたのは「ロボットは東大に入れるか」という興味深いテーマを掲げたプロジェクトだった。AIの受験生、「東ロボくん」を、2016年度までには大学入試センター試験で高得点をとらせる。さらに、2021年には東京大学入試に合格することを目標としたものだ。しかし、問題文の「意味」を理解することが難しく、東大受験を断念したのだと云ういきさつがあった。
そのプロジェクトリーダーである新井紀子教授(国立情報学研究所)は、「東ロボくんは科目の得意、不得意があるというより意味を読み取るのが苦手」なのだと言う。「卓抜な計算力と暗記力があり、問題文を計算式に解析できれば簡単に答えは出せる。が、問題文の意味を理解出来なければ、現状ではお手上げなのだ。それでも、約5年間の試行錯誤とデープラーニングを経て名の知れた私立大学に受かるレベルにはなってはいたのだ」と。「東ロボくんが偏差値57で東大受験を諦めた理由」。(「ダイヤモンド・オンライン」より)
実は、このプロジェクトの「真」の目的は東大に合格することではなく、「AIには何が出来るか」、「どこまで任せられるか」ということを見極めることだったのだと。それは、また、「AIの時代」に「人間は何をするべきか」という深い問いでもあったのだ。
とにかく、いまは、「AIは『何をするのか』という目標を与えない限り、何も出来ないし、人間を凌駕することは出来ないのです」と。新井紀子教授の後日談だ。
「しかし、日進月歩の進化を見せるAIとその周辺技術など、これまで人間が行ってきたことの相当部分を肩代わりし、社会を大きく変えることは確実だろう」とも言う。
確かに、AIが「独学し、認識する」という属性をもつならば、さまざまな事象の予測や状況の変化に対応し、適切な判断を下すことも出来るようになるのだろう。これまでのAIとは全く次元の異なる成長ステージへの進化でもあると言うことだ。
ビッグデータを効率よく分析するソフトも登場し活躍する頃には先端技術の可能性は広がり、「あったらいいな!」という「モノ」、「介護」や「生活支援ロボット」、「先進医療機器」、「自動運転と高度支援」、「VR」、「AR」、「IoT」などの技術革新はAIと繋がることで、一層の飛躍があるということだ。それらは、テクノロジー関連産業の変革を促すに止まらず、人間社会のさまざまな側面をも大きく変化させることにもなる。ただ、人間の頭脳の機械化にはまだまだクリアーせねばならない問題も多い。「心」や「感情」を持たない機械化のAIは、人間の心を激しく揺さぶる感情を理解し寄り添うことは難しい。また、「驚き」や「ひらめき」によるユニークな思考や過去には全く存在しなかった「事例」への対処などだ。それは、東ロボ君が言語の意味を理解することや文脈の理解や読解が難しいと考えられていたことに通ずるのだろうと思う。人間としての深く巾広い思考形態はAIのデープラーニングを経ても、人間の人間的な成長過程での多様な機微にも触れる思考とは異なるものだろうと考えるからだ。 (2018/12・9記) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
メモ:
●人工知能=Artificial Intelligenceの英語の頭文字を取り「AI」と。AIとは人間の「脳」が行っている知的な作業を、人工的につくりだした「知能」を持つコンピュータが模倣し、実行することを意味する。AIという言葉の誕生は1956年にジョン・マッカーシーにより命名されている。2016年には「ディープラーニング」を契機に、AIが社会に衝撃を与え急速に発達した年であると。2017年には実用的なシステムも登場し「AI元年」と、言われている。
●「いのち輝く未来社会のデザイン―2025年国際博覧会(万博)」を日本(大阪)で開くことが23日、パリで開かれた「博覧会国際事務局(BIE)総会」で決まった!
開催期間は2025年5月3日~11月3日の185日間。あの岡本太郎のモニュメント「太陽の塔」を残した大阪万博(1970年)、以来55年ぶりという。大阪湾の人工島・夢洲(ゆめしま)を会場とし、テーマは「いのち輝く未来社会のデザイン」。まさに、AIやVR、などという我が国が取り組んできた最先端科学技術の次代への「カタチ」の饗宴ともなるはずだ!世界が共生する未来社会!中心となる建物はおかず、パビリオンを分散し「非中心」の世界感を描くイデアも・・・。
●デザイン活動の社会的な存在意義は「よりよいモノづくり」、次代へ向けての科学・技術による可能性、新しい生き方の可能性を提示することになる。いま、世界経済はIT革命の渦中にあり、その世界的な充実・拡大のナワバリ争いが激化している。同質的なIT社会で、個人的な感性にも応えねばならないのだろう。想像し提案する一人としてのデザイナーは、先端技術の可能性を意識、熟考し提示することが求められることに。「人間らしい機微に触れる豊かなデザインを!
●いまは、ユーザーに聞くことで分かる「ニーズ」などと言うモノは、ほとんどが既に有ると考えるべきで、充たされていると。
これまでの延長線上のモノ・サービスでは「欲しい」と言う動機は生まれないのだと。この閉塞的な状況にイノベーションを生みアイデアを生み出す手法は、「インサイト」なのだと!マーケティングの意味は、相手の立場で考えた時の視点=「インサイト」、直訳すると「洞察力」、「見識」、「視野に入る」など。つまり、相手の視点であり心理状態が、どのように思っているのかという視点のこと。ユーザーの隠れたニーズや潜在的意識を消費行動に引き出すために。ターゲットとされている人の「行動や態度の根底にある本音、確信、潜在的な欲求」を捉えるのだ。
●最近は、「センサー」「VR」「AR拡張現実」「ブロックチェーン」「量子コンピュータ」「ゲノム編集」「ロボテクス」「IoT」などといった、さまざまなテクノロジーが未来を創るものとして注目されている。ただ、それら人間の知力にも相当するのだろう「AI」の更なる進化が重要で、その進化によって、さまざまな技術が開花するのではと期待もされている。
AIブームといわれてもいるいま、人間がある程度の学習の方向性をコントロールして記憶させるという「機械学習」から、AIが独自のデイープラーニングによっての知力の進化は目覚ましく、人間のコントロールなしに「人間を超える発想を」生み出すのかも知れない期待感も。
ただ、AIに負けず「脳力」のある人間が慎重に選び「判断」せねば、アイデアが生かされないことにもなる。