30年にわたった平成年間が間もなく終わり、新元号に移る・・・。
昭和末期、後にバブルと呼ばれた好景気の中で迎えた、この平成元年(1989年)には、名古屋市制100周年という記念事業として、”ひと・夢・デザイン-都市が奏でるシンフォニー” をテーマに「世界デザイン博覧会」が7月15日から135日間にわたって開催されている。同時に、「世界デザイン会議」も開催され、世界からデザイナーが参集されていた。
ソ連邦の崩壊、東西ベルリンの壁が崩壊し、東西冷戦の融和を感じさせるエポックメーキングな時代だった。
我が国の平均寿命は男女ともに世界一、「世界時価総額ランキング」の 上位50社のうち日本企業が実に32社もランクインしている。しかし、平成4年(1992年)、順調というべきか、右肩上がりが続いていた我が国経済が突然のバブル崩壊に直面する。その後の複合不況、ダウン・サイジングによる生き残り・・・。凡そ20年という年月の経済活動が停滞するという極めて大きな反動を経験せざるを得ないことになっていた。不運だったのは、世界を覆いつつあったIT革命という新しいステージに乗り遅れてしまったということだろう。「世界時価総額ランキング」の 平成30年は上位50社のうち日本企業が、ただの1社?とその凋落ぶり、山頂から谷底に転げ落ちたと言う思いだった。
誰が計算したのだろうか、東京の山手線内の土地が、あの広大なアメリカ全土との等価交換出来る価値なのだと言うのだから、ただ、浮かれ驚くばかりだったバブル時代の話だ!
●1995年にWindows95が発売されて以来、インターネットが急速に普及し、多くのIT関連企業が大きく成長している。2016年の時価総額トップ10にはアップル、グーグル、マイクロソフト、アマゾンドットコム、フェイスブック―GAFAと呼ばれる、アメリカのIT巨大企業4社がランクインしている。グーグルやアマゾン、フェイスブックなどは1992年の時点では、まだ設立もされていなかった企業だ。これら新しい分野の企業、特にGAFAによって人々の生活スタイルは変わり、新しいサービスが世界のインフラの一部となって独占し、優位に立っていることが今日の問題にもなっている。また、追従し対立もする中国企業は、1990年代から現在まで、世界の知恵やマザーマシーンを集めて躍進、大きな経済成長を成し遂げており経済規模では日本を抜き、アメリカに次ぐ経済大国にも。それに連れて企業も大きく成長し、テンセント、アリババ、4大銀行をはじめ多くの企業が世界の時価総額トップ50にランクインしている。人口の多さが経済規模の大きさともなり、国家による戦略的なアプローチもあって企業規模の大きさに繋がり、さらに世界の覇権争いを公言し、米中経済問題を引き起こし、今年度の世界の好不況を左右することにもなっている。
――平成元年の世界 時価総額ランキング 50位以内の日本企業数は日本32社で、アメリカ15社、イギリス3社に。平成30年の世界 時価総額ランキング 50位以内にアメリカ31社、中国7社、イギリス2社、スイス2社、フランス2社、韓国1社、香港1社、台湾1社、ベルギー1社と並び、日本はトヨタ1社のみと大幅に減少した。バブル崩壊以来の経済停滞が長引いたことで、7社もランクインしていた銀行が不良債権処理などの影響もあり大きく時価総額を減らしたことも大きい要因だった。
●日本企業の「小粒化」が進んでいるのだと言われている。
この2、30年に、米国企業の時価総額は2.6倍になったが、日本は1.7倍にとどまっていることもある。
イノベーションはIT革命を軸に次世代の可能性に目を向けて、劇的な変化の時代を予測していたように見える。その頃世界の生産基地としての我が国においてはバブルショックと重なるが、リーダーや企業組織がそれらの情勢に応じた対応が出来ず、新陳代謝を躊躇していたことにもよる。また、あるレポートによるとAI、ロボットに象徴される第4次産業革命のイノベーションが世界的に急進展しているなかで、しかし、破壊的なアイデアをもった起業が日本には少なく、下記にあるマザーマシーンの低開発国への生産拠点を移すことでノウハウを先方に取られることになり、結果、現地国が独自に生産を始めると言うお決まりのパターンを取ることになった。アメリカが次のステージをつくり上げて成長を継続しているのに対して我が国は、そのステージに乗り遅れ、無作為に海外生産を移したことで、低価格競争にも巻き込まれてしまったと言うことになる。兎に角、グローバルなIT革命の渦中にあることを意識し、多様に高度に描かれる未来社会の開発競争を改めて捉えなおし、我が国としての強みを見出すことが肝要だろうとも。
――27年間、トップだった日本製品(参考:マザーマシーン)
「一国の繁栄は、その国の優れた生産力にかかっている」――1989年、米国・マサチューセッツ工科大学(MIT)産業生産性調査委員会がMade in America: Regaining the Productive Edge(邦訳『Made in America―アメリカ再生のための米日欧産業比較』)の冒頭に残した名言である。工業力を落とした米国経済の再生を念じ、勢いを増す日本と欧州の基幹産業の生産力を調査・分析して警告した。対象業種は、自動車・化学・民間航空機・電子機器・工作機械など8業種にまたがり、いわく冒頭の「一国の繁栄は…」と結論付けた。つまり「工業力=国力」と結んだ。それから20年余りの間に、工業力は米国から日本に移り、今後は中国、インドに移ろうとしている。工作機械産業の成長は経済成長率に大きく関連する。これを象徴するように、現在、工作機械需要は人口13億人の中国、11億人のインドなどに代表されるアジア新興国で沸き起こっている。これらの国々の需要は桁はずれのボリュームがあり、iPhoneやiPadに代表されるスマートフォンやタブレット端末の部品を委託製造(EMS)する中国の企業では、1社で1度に2000台を超すマシニングセンタが導入されている。このため、中国市場では、地元中国メーカーに加え台湾、韓国勢が低価格の工作機械で攻勢を掛けている。その中国市場、インド市場も含めて、アジア市場では、まさに日本とドイツのメーカーと、両国への追い上げが急である中国、台湾、韓国のメーカーが争奪戦を展開している。近未来、日本の工作機械産業は”米国化”に向かい、衰退してしまうのだろうか。(以下省略)
(「日本の工作機械産業に明日はあるか、一国の繁栄を支える工作機械産業」彦坂昌男 金型新聞・日本産機新聞編集部長)
●会社人間と言われ、個人や家族の前に会社が優先され、ひたすら会社のために働くことで多くの成果を上げた成功事例も多い。その極みがバブルだったのだともいえる。
時代が移りいまは、働くことに対する社会的な在り方が検討されている。デザイナーのクリエイテーブな成果は、必ずしも計って結果が得られるというものではないだけにその在り方については慎重に考えられねばならないだろう。その意味では「自己開発力」が大切で、能力あるデザイナーには案外、相応の働き易い環境になるのではないだろうか。
●日本では、人間関係を覆っている組織という仲間意識の「空気」を破るのは極めて難しい。業界領域の壁もあるが、空気感を破っても仲間の不正を指摘することで、その暗黙の信頼を裏切ることは出来ないという感覚でもあり、なにより上司から左遷されることを恐れる。この空気感は「暗黙のなれ合い」だろう?有名企業の不祥事が続いている。無資格者による検査問題、素材品質データの改ざんも明るみになると、自動車や飛行機の材料を供給しており、事故につながるのではとも恐れる・・・。世界で活躍する日本企業の不正が相次ぐと、まだ他にもあるに違いないと思われることにもなる。これまで日本品質は、世界で高い評価を受けており誇らしくも思っていたことだが、しかし、このままでは日本への信頼は、たちまち地に堕ちてしまうのだろう!