学生、各自が<スキルアップを目指す>もの。併せて、<学ぶことの自覚>を促すものでもある。
とかく、我が国では「学ぶこと」は「習うこと」と考えて、受身の姿勢に終始していることが多い。しかし、本来「学ぶ」ということは自ら<学ぶ姿勢>をとり、《目的意識》を持つてこそ向上するもの、実りあるものとなるものである。
しかし今日、それは残念ながら、ほどとおいものになっているようだ。
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今年で28年目を迎えることになったセミナー、その動機は益々重要な意味を持つてきたと考えており、実感もしている。
このセミナーは社会にも、受講したOB諸君によっても高く評価され本学工業デザイン専攻の特色ともなっている。
卒業生との再会は、良くその話題になる。「あのセミナー、その時は苦しかったが、今思うと本当に良かった・・・」と。「あの体験は今も役に立っていますよ」とも・・・。
懐かしそうに話してくれた林(はやし)君は卒業後20年。ソニーデザインの特別講義で先日、来校した折のことだ。
ちなみに彼はそのセミナーで138枚のパッドを提示した記録ホルダーでもあっる。
「是非、今後も続けて下さい」とも言った。
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デザインは常に時代の先端にあるもの・・・。未来を目指し、時代の問題と対峙するものでもある。
初めてセミナーを開催してから今日まで、時代の趨勢を読み、微調整を心掛け、時として修正を加える。しかし、その精神は今日へ繋がっている。
本年度は、<第28回>を迎えるにあたり、その意義を確認し、また学生諸君の意職を喚起したい。
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いま、我が国の社会環境・国際情勢、そして科学技術環境、教育環境には極めて大きな変化が有る。人間としての能力、人間としての在り方が問われるという本質的な問題を含んでいるのだ。
「のびのび」「自然」「ゆったり」「成績や出世より人間らしさ」など、否定出来ないタテマエ論的教育。人間としての生き方に矛盾と混乱がみられる。
そのことも十分に理解しながら、各自、《学ぶことの目的》を明確に意識したいものである。セミナーを体験したことが必ず今後のデザイン学習に生きたものとなることを確信する。そんな自分を信じることの出来るものにして欲しい。
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セミナーでは問題の背景、価値観や変化を読み取る予備調査を事前の1~2週間を当てる事にした。
必要情報の収集分析、チャート作成レベルの共同作業もまた、本セミナーとしての目標に付加されるものになつた。
いま、この時代、セミナーの意味が益々大きなものであると思へてならない。本学の特色あるセミナーとして自負しうるものとしても…。
《セミナーの目標――各自の目標》
(1)各個人の心身の健康管理。心身のチエックを!
・「心身の健康」がより良いデザインを生み出す条件である。
(2)3泊4日・80時間の限られた時間を最大限に使うアイデアを考える。
・アイデアを考える時間→スケッチする時間→テーマを考え・メモる時間(それぞ
れの時間量、作業量はパッドの枚数量=スケッチ表示内容量に比例する)
(3)デザインスキル=情報収集力→認識・分析力→発想力→表示力/スケッチ力・メモ
文章力・レイアウト・その他の訓練(配布されたパッド枚数は最低ライン、そこか
ら更に何枚紙面をアイデアで埋められるか!そのことに挑戦を!)
(4)組織・グループへの協調→自分は何をすべきかを考え行動する(責任や分担を各
自が自覚し行動して欲しい)
(5)何かを学ぶことは「辛く」「苦しく」「嫌な」こと?
それを何故やるのか? そのことを十分考えて自分自身の目的意識の再確認を!
敢えて挑戦する、そのことを「楽しめる」ようにしたいもの。
(6)その他・・・・
《セミナーの学年次目標》
大学院:学部で習得したデザインスキルの再確認。
一層の社会性を自覚し、高い次元のデザインを目指す挑戦を!
プロといわれるデザインスキル、発想力を獲得する努力を!
4年:学部最上級生としての自覚。授業及びセミナーにより体得したデザインスキル、その他の再確認を!
上級生として下級生の「目標となる態度」と「心配り」をする。
研修目標に添って最大限の自分自身への挑戦を行うことを期待したい。
卒製のためのトレーニング、或は実社会への心積りとして…。その態度を下級生が見習習っていることも自覚して欲しい。
3年:上級性としてのデザインスキルの再確認。さらに充実拡大を図る自分自身への挑戦を試みること。セミナー経験者としては4年生を助け、チームスタッフへの気配りも。この後の、演習、企業研修の予備訓練とも考え、リアリティーのある発想とその広がりを心がけて欲しい。
2年:昨年の経験を生かし、自分自身への厳しい挑戦を試みて欲しい。上級生に負けない頑張りが能力を向上させ、自らの目的意識を明確にするものである。
また、チームの一員としての自覚、リーダーの指示に従い下級生との協調を考えて欲しい。
1年:初めての経験となるがまず心身の健康。聞き観察することでデザインスキルとは何かを考え、その体得を考える。上級生、特に見習うべき先輩を見習うことで熟達する努力、併せて、発想にも意を注いで欲しい。
《デザインのプロセス》
@ まず、心構え→自分自身への挑戦を!試みる。
A デザイン問題の背景・分析と記述(予備調査チヤート――グループ分析と自己分析による問題の背景の認識を、自分の予測も・・・)
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テーマに対するアプローチは当日、集合時から始まる。メモやスケッチをする・・・。
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B 発想・アイデアの開発――現地で、デザイン条件に対する多様、大量のアイデアスケッチを。
(各自40枚からの挑戦!そこから、どれだけ多くのパッド枚数、紙面を埋めるアイデアを発想出来かが目標!)
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C アイデア・解決方針
評価能力の自己確認(くれぐれも教師、上級生など、他に依存した態度は判断・決断力を持てないことになる)
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D アイデアからの選択決定・最適な造形を探る→多様な造形の開発(造形のリ・フアインを繰り返すスケッチの量)
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E レンダリング、コンセプト、取り扱い説明、図面などのプレゼンテイションは明快に。(デザインセンスが見えるレイアウト表示を・・・)
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F 最終プレゼンテイション
最終提示パッド(4枚)とアイデアスケッチパッドの提出(4枚を含めた全枚数を記載)
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G 最終審査・講評→各自作品の解釈・評価との比較(反省と自己能力の確認。フイ―ドバックのメモを取る)
* 後日、返還作品の見直し、リフアインは必ず行うことが重要。
(ポートフォリオ用としても・・・)
*グループ関係――リーダー:人心把握によるグループの統括。責任感を持つ。
サブリーダー:リーダーを補助しスタッツフをまとめる。
スタッフ:グループを意識し、他人への配慮・協調を考える。