ただでさえ慌ただしい師走の選挙だった。
「なによりも景気を良くして欲しい!」
そんな常日頃の苛立ち、怒りを込めた1票だったに違いない。
バブル後の閉塞感は、「失われた10年」といわれ、それもはや20年余が過ぎようとしているのだから・・・。
ながい自民党政権の腐敗に辟易とし、清新を売りにした「マニュフェスト」を掲げる民主党に期待し、次を託したものだったが不安は的中した。経験不足には苦い思いをさせられたとの「思い」を持った人は少なくなかったのだ。
先日の読売新聞には、「『無血の平成維新』『国民への大政奉還』―当時の鳩山由紀夫首相が所信表明演説に用いた言葉からして夢見心地である◆素人っぽい初々しさだけが取りえの<子供の政治>には懲り懲りした。玄人の仕事師による、地に足のついた<大人の政治>が恋しい・・・。衆院選で民主党を壊滅的な惨敗に導いた有権者の心を最大公約数の言葉にすれば、そういうことかも知れない」(12・27日の読売新聞/「編集手帳」)と。
我が国、教育の特殊性かも知れない。 そのことを意識し日本の、そして世界のライバルを視野に切磋琢磨する「志し」が、成長過程の教育に足りないのではないのか、とすら考えていたからだ。
“安倍ノミックス”に期待!進むか改革・・・・
選挙の結果については多くのマスメデアによっても予想されていた。政権交代が安倍総理の実現を読んで、じりじりと円安傾向に・・・。最近は、1ドル=86円台前半と数年ぶりの円安水準となり、株価も年初来高値を記録して大納会を終えている。
「円高に苦しんできた輸出企業を中心に、業績の大幅な回復への期待が膨らんでいるのだ」と喜ぶ。「超円高」「高い法人税率」「労働規制」「自由貿易協定への対応の遅れ」「CO2削減目標」「震災とこれに伴う電力不足」。たしかに今の輸出産業にとっては、「6重苦」と表現したい条件がそろい、個別企業の努力をむなしいものにしているのだ。なかでも、最大の苦しみであった円高が、「やっと是正に向かっている」と日本自動車工業会の豊田章男会長。トヨタは、対ドルで1円の円高による営業減益幅が350億円に達する。しかし現在は想定レートを79円に設定しており、仮に、「85円代の円安水準が1年続くとすれば、逆に2100億円の増益要因になる」のだという。
これまでの厳しい逆風―円安が恒常的になり、「6重苦」のすべてを改革する政策が示されれば、再び、自動車や電機産業、海外事業比率が高い企業などにも明るい兆しが見えてくるはずだ、と。“安倍ノミックス”にも期待、新年の夢膨らむ師走にもなった。
自らが捉え、実感する発想を・・・・
どうやらいまは様々な分野の、大小を問わない意識ある多くの企業が海外のマーケットを開拓しようと挑戦しはじめている。
デザイナーにとっても先進国、世界企業というこれまでの優越感、そして先入観にとらわれない立場からターゲットとなる国、人々からの要求を条件とし発想するモノづくりが何よりも大切なこと。それぞれの国や地域にある「生活」を熟知することであり、「美意識」や「装飾美」などについても理解できる能力が問われる。近代デザインのルーツであり、ツールとなった先進国の美意識、造形の美学が全てではないからだ。
ただ、人が「生きる」という本質的な部分においては変わるものではないだろう。たとえば、生活や使用者のニーズとして捉える日本人の感性、「気配り」や、「思いやる心」がデザイン力として生かされることは大きいことだろう。
いまは、ITの深化もあって、しがらみに囚われない自由なモノづくりの環境が醸成されつつあるようにみえる。
日頃から温めているユニークなアイデアをスケッチにおいて、検討を繰り返しながら製品化する・・・。家電や自動車の分野でも1人、あるいは数人のベンチャー企業が厳しいなかでも夢を持って挑戦を続けている。創業期のパナソニックやシャープ、ソ二ーあるいは、日産やホンダがそうだったように・・・。それらの大企業も、さらなる不退転の意思を見せて「6重苦」に挑戦している。規模の大小を問わず、アイデアとデザイン、そして行動力が勝負になるのだろう。
デザインが新たな可能性を拓く・・・・
特に、ITの普及・深化は世界的であり、モノとユーザーとの関係は変わりユーザーの主体性がつよくなったのだ。パソコンで育ち、物心ついたときから身体の一部として携帯があるという世代でもある。そんなユーザーが市場を占め、デジタルマーケティングという消費者行動に応えることもできるのだ。またいまは、大企業に限らず、個人や中小の企業でも、多くの情報やユーザーに同じアプローチをし、小さな企業にも大企業並みのチャンスは生まれている。
スピーデイで変化が激しい時代でもある。形式的ともみえるコンセプト作成に多くの時間を費やすよりも確信を持って新らしい可能性にアプローチすることが重要だろう。
デザイナーの能力が問われることになるが、結果次第では直ちに軌道修正するといった柔軟で、スピーデイなプロセスを注意深く試みる。手に触れる発想が極めて現実的であり、一人の独創性が問われることになる時代でもある。常識を突き抜けた独創はデザイナー自らの生体から発するヒラメキでもある。
勿論、デザイナーであることは、常に先入観にとらわれないことであり、新鮮な眼差しを世界のユーザーに向けることから発想の芽は生まれ、そのカタチを得るために手で触れる感触が大切だろう。
ユニークなアイデアやイノベーションの可能性を見極め、評価し、決断する力がリーダには求められる。「変化」を求める積極性が発展の素であり、直ちに行動に移すプロセスが重要であることは言うまでもないからだ。
「デジタルネットワークによって、ものづくりが可能になると、そのアイデアや、デザインが特に重要になる。
少品種、大量生産の時代には否定された「多様性」や「個性」、「ユニークなアイデア」こそが、いまは貴重なデザインの強みになる。モノづくりの先端にあった日本。しかしいまは、「6重苦」という大きなハンデイを背負わされることで新興国の台頭に苦戦しており、デザインすら否定されかねないという厳しい現実である。
しかし、「安部ノミックス」によってこれらの改革が進めば・・・。
この国が持っている伝統。そして、新たな可能性は、多くの優れた科学技術などの層の厚さと広さを考えても、新しい日本のモノづくり、デザインとしての可能性を膨らませることもできるはずだ!
(2012/12・31 記)
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メモ:
・ノーベル医学・生理学賞を受賞した京都大学の山中伸弥教授、iPS細胞=人工多能性幹細胞は、傷んだ臓器などの再生医療の実現へ大きく動かした。
「まだ1人の患者も救っていませんから・・・。マラソンに例えると丁度折り返し地点、これからが本当の勝負です」と。「これからは、このノーベル賞も私にとっては過去形になります。これからの研究がやはり本当に大切ですので、これからの研究を一生懸命やっていきたいと思います」と。なんとも謙虚で誠実な姿勢には好感が持たれる。
・電気自動車やLED照明など日本のハイテク産業分野において欠かせないレアアース。しかし、その約9割を中国に依存しており、脱中国が重要課題の1つ。ところで、2012年6月、東京大学大学院工学系研究科エネルギー・資源フロンティアセンター加藤泰浩教授が日本の排他的経済水域内で大量のレアアース泥を発見。尖閣諸島や南鳥島における地下資源の発見は我が国が資源国としての可能性であり未来を明るいものにしている。
・iPhone Designed by Apple in California Assembled in China
その生産拠点は「FOXCONN富士康科技集団」(およそ100万人を雇用)
「アップル製品をアメリカで製造するにはどうすればいい?」とオバマ大統領がジョブスに尋ねた。
「工場を国内に戻すことは不可能」と。しかし、今アメリカでは「製造業の復活」を真剣に考えているのだと報道されていた。100万人の雇用創出を謳うオバマ大統領の選挙公約でもある。
海外に進出した生産を自国に取り戻すことが着々と進行しているというのだ。
そんなアメリカにおける製造業を国内生産に切り替えるのだという話を、もう数十年も前にも聞いたことがあった。生産の無人化、効率化を徹底することで安い人件費に変えようというものだった。しかし、アメリカから製造業が失われる流れは止めることは出来なかったようだ。
・ジャパンディスプレイが高性能液晶を武器に、タブレット向けパネルの受注増を狙つているのだという。ディスプレー技術はソニー、東芝、日立製作所の中小型パネル事業が統合して4月に発足したジャパンディスプレイ(JD)だ。東芝の高精細技術に日立の高コントラスト技術、ソニーのタッチパネル内蔵技術などを“てんこ盛り”にした高性能ディスプレーを開発した。 JDの有賀修二CBO(チーフビジネスオフィサー)は、「新ディスプレーは薄型・高精細で低消費電力。端末の製造コスト低減にもつながる技術だ」と語る。展示会ではスマートフォン(高機能携帯電話)用、タブレット用、車載用の3種類を出品し、技術力をアピールした。発足から半年が過ぎ、JDの業績は好調そのものだという。