テレビ、新聞、ネットなど、連日のように報道されるトヨタのリコール問題が世界のメデアを賑わせている。
先頃のGMの破綻を受け、世界のトップブランドに上り詰めたトヨタ・・・。
頂点を極めたという思いや自信が、慢心を生み、驕りがあったのではと言う厳しい論調が多い。米メーカーCTS社製だという部品は米国、カナダ、欧州、中国など460万台超のリコールに・・・。トラックも、プロペラシャフトにひびが入るというアメリカ製部品・・・。
「無い」といわれていた我が国の新型プリウスのリコールは、運転操作・ブレーキの走行感覚系のインターフエイス、EV時代の新たな問題を提示していることになる。
トヨタの信頼性の喪失は、しかし、これまでに営々と積み上げてきた日本への信頼、ブランドイメージを大きく揺すぶるものになっている。
トヨタの急速なグローバル化のひずみ、販売拡大を意図すると、おのずと現地生産や現地調達が要求されることになる。
言葉が違い、習慣や意識も違う人材が雇用されることになり、品質をつくり維持するための教育の難しさが言われる。厳しい品質管理の手法が海外展開の現地社員や部品メーカーに浸透しない状態であったこと・・・。
また、我が国に於いての問題は、世代交代による技術継承の問題もあり、低価格化競争の厳しさがあり、韓国の現代自動車との価格競争が問題を大きくしたのだともいわれている。
召喚された席で、豊田社長はそのことについては率直に反省の弁を述べていた。
業界に於いて「品質」をリードした企業のプライド、その自信は結果対応の遅れを生み、不信感を増大させてしまった。
ライバルのほくそ笑み・・・・
リコールのニュースに素早く反応したのは韓国、「トヨタの失敗、韓国で大量報道、トヨタ自動車の大量リコール問題に韓国が異様なほどの関心を示している。「日本の没落に快感」、「韓国車に好機期待」、「海外進出への教訓」・・・・。
1面トップや特集として大きく紙面をさき、マスコミが連日関連ニユースを大々的に伝えているのだ。韓国での被害はアメリカから輸入したわずか400台足らずだが、ニュース量は日本よりはるかに多い。報道の背景には、日本への強い対抗心と競争意識があり、日本の失敗を喜び、快感を覚えるという特有の対日感情がある。と同時に世界の自動車市場で販売を伸ばしつつある韓国には、トヨタの失敗と後退は韓国のシエア拡大の絶好のチャンスと考える強い期待感もあるのだ」(5日付産経新聞)
勿論、トヨタのリコールを喜ぶのは一人韓国だけの話ではない。みな虎視耽々とその座を狙っているからだ。 破綻したGMもまた、取って代わろうとするトヨタの失敗を喜ばないわけはない、全てに世界一でありたいとするアメリカのプライドもあるからだ。
社長の召喚! アメリカ議会にもGM親派議員は多いはずだ。簡単に沈静化させたくはないという心情も当然あるだろう。地元選挙民のためであり、ビッグ3のために・・・。
ただ、一方では「他山の石」として急速に増えている企業の海外進出、生産にとっては貴重な教訓となるもの羨望と嫉妬がない交じりになって、その一挙手一投足を注目し動向を見つめている。
トヨタだけでなく日本航空、西武有楽町店の閉鎖、「難破船サイレンに夜も眠れない日本列島」(2日付韓国日報)「トップ神話に酔いしれ品質低下-日本株式会社墜落」(同ハンギョレ新聞)「揺れる日本列島」「日本列島沈没」など、日本の没落を強調する報道が多く見受けられる。このため、日本の報道が冷静に映るようで、「静かな日本、米国は興奮-トヨタ問題に温度差』と意外な感じを伝え(同中央日報)「崩壊したのはトヨタが採択した“非トヨタ路線”だ」と言う分析もある。
「ひとごとではない、トヨタの二の舞を演ずることがないように緊張を緩めず、確りとした内部点検の姿勢が必要だ。傲慢や、慢心は墜落に繋がる。携帯電話、造船、液晶など善戦している韓国企業もトヨタの危機を教訓にすべきだ」(1日付東亜日報・社説)などと指摘している。(前出 5日付産経新聞))
企業グローバル化の問題・・・・
日本企業は、これまで企業間の切磋琢磨する中で品質・技術力、デザイン力、価格などの競争によってMade in Japanとして世界的に評価される企業ブランドをつくり上げてきた。
しかしここ数年、アジアの製品生産国との間に差別化は困難になるという非常に大きな課題にも直面し、低価格化に市場を失っている・・・。
先進メーカにとっては追従されない研究開発の「速さ」が要求され、相対的に「経費」が削減され、技術者のスピリットが醸成されることもない希薄な研究組織になっているのではと懸念されることだ。
トヨタのリコール問題は、これらのことも原因しているのではと思われることだ。
しかしいま、最先端の環境技術を競い合う新しい世紀になり、自動車産業、EV走行のソフト開発問題など、時代は確実に変化し、また新たな問題を提示することになった。
後発メーカーは、様々な分野から短絡的にキヤッチアップを狙い、先行メーカーを見極め、機密を窺い、製品を分解して限りなく近いかたちに製品をつくり上げていく。
製品だけで理解できないノウハウは、経験十分な技術者を採用、あるいは企業自体を買収するなどしてキヤッチアップすることになる。
新技術の開発に投資しない反面、低価格市場にあわせて商品化することになる。
次に、超えるための品質と市場競争力を意識し「質」の経営改革に着手することになる。
進化論に学ぶ知恵、未来へ・・・・
デザインを学ぶ者にとっては常に「変化」は意識しているものだ。
その変化を捉え、適応するための変化を自ら考え行動せねばならない。
いま我が国は成熟社会であり、物の消費は限られている。
賃金、コスト高の中で低価格商品との競合が死命を制することになるある。
ただ、「車は『機能価値』のみにあらず、『意味的価値』が最も重視される要素だ」と、延岡健太郎一ツ橋大学教授の指摘も有るが、既にデザイン領域においては数十年も前から言われ続けて来たことだ。これまでの有り余るノウハウによる高付加価値化、高品質化、信頼性などの産業への転換が重要だろう。
生物が環境に適応し、あるいは環境を変化させることで生き延びてきた。
魚は海の中で「多産」によって「多死」を乗り越え、渡り鳥は安全を求めて、子育ての際に敵がいない北の地に移る。ハチは暑さに応じて巣に風を送って過ごしやすい環境に・・・。
改めて、本当の強者とは何かを考えさせられる。
「それは常に目立って活躍するものではなく、余力を保ちながら、いざと言うときに力を発揮するものかもしれない」進化論はそう指摘する。
かって、トヨタ 渡辺捷昭前社長は「強いものが生き残るのではなく、環境変化に対応できたものだけが生き残るのだ」と言う進化論的な主張をされたことがあった。
自国像に自信のない日本人。だから「変化」への対応力が高い?
本年度中にも中国にGDPが抜かれ、世界第2位だった日本は3位に・・・。
「しかし、人口は10倍あり、1人当たりのGDP(国内総生産)では日本の1割り程度に過ぎない。中国の発展段階では、平均余命や1人の電気消費量などで比較すると40年前の日本にほぼ対応している。経済規模こそ大きいが、まだまだ発展途上だ。生活水準だけでなく、社会制度などを合わせたトータルで比べれば、両国間の格差は経済面での格差よりさらに大きい。
中国が日本に追いつくには相当な時間がかかる。日本はもっと自信を持って欲しい。よく日中の経済は競合していると言われるが、私は補完関係だと見ている。ハイテク分野にはまだまだ及ばないからだ」という。(朝日新聞7日付 関 志雄/野村資本市場研究所シニアフエロー、著書『チヤイナ・アズ・ナンバーワン』など)
また、『100年予測』の著者であり、影のCIAの異名を持つ民間情報機関ストラトフォーを主宰するジョージ・フリードマンは「米国の繁栄はこれから」と強気だ。
唯一の対立軸は「日本」だと警戒する。それは、「自国像に全く自信のない国民性。低成長を受け入れるなど環境変化に対する高い需要力、対応力があるからだ」と・・・。
「日本企業はグローバル化し海外に進出することで人口減などの問題にも対応する。宇宙でのソラーエナージなどの新技術にも注目している」という。
「日本企業が今後も強い技術とノウハウを持ち続ければ、今の強さを持ち続ける事になるだろう。技術、経営管理能力、企業組織、技術革新力はみな日本の大きな資産だ。
しかし、問題は一貫性に欠ける政治力で、その影響力はバランスを欠くことだ」(エズラ・ボーゲル ハーバード大学教授『ジャパン・アズ・ナンバーワン』の著者‘79)
日本は常に「変化」を感じ、捉えながらも挑戦者としての「心」を持ち続けることが必要なのだろう。
(2010/2・28 記)
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メモ:
● トヨタブランドの信頼性・・・・
1989年国際デザイン博覧会(名古屋)が開催された中で、トヨタの豊田章一郎社長(現名誉会長)には、デザイン関係大学、教育者のための立食パーテイにご招待戴いたことがあった。ビールを手に、親しく自動車ずくりのご苦労話しなど・・・。特にGMなどを視察した折、組立てラインで働く労働者の体格や筋力の違いに驚き、ロボットの導入を急いだお話しなど、いまも鮮明に記憶している。
今回のリコール問題ではその矢面に立たされた豊田章男社長はそのご子息であるらしい。まだ数ヶ月の新社長であり、世界に32万人とも言われるトヨタフアミリーの頂点に立つには、まだまだ実感を伴わないことでもあったのだろう。
トヨタ創業家・後継として順調なグローバル化のストーリーに乗るはずであったろう。
が、極めて厳しい試練のスタートになった。しかし、その存在の大きさを自覚し、新たな時代のトヨタ・ブランド再生の新たなストーリーを創造して欲しい。そう期待している。
アメリカの『コンシュマー・レポート』(2010)による車の評価ではトヨタのレクサスが1位に選ばれている。それでも他社に比べた安全性や信頼性は高いのだという・・・。
● 岡田J・・基本重視の『先』がない・・・・
この日は負けた。「岡チヤン不合格」の横断幕を掲げてサポーターが不満を表現したものだ。日本にないものを、韓国は持っていた。簡単に言えば、「勝つためにゴールを奪う」との強い気持ちだ。
ゴールに向かう迫力を見せるのは韓国だった。速い、何人もの選手が相手陣になだれ込んでいく迫力、そして最後のシュートの精度。まさに見事の一言、渾身の一撃だった。
翻って、日本はどうか。岡田監督が言う。「前に人数が足りなくなった」「パスをつなぐ意識が強すぎた」。ただ、選手同士が連動して短いパスをつなぐ意識を、繰り返し、すり込んできたのは指揮官自身。それが得点への道との判断だが、従順すぎる選手にはパス自体が目的になる悪い癖がある。タイトルをかけた日韓戦という、勝利以外に求められるものがない試合にそれが出た。どうすればゴールを奪って勝てるか。すべてのプレーはそこからの逆算のはず。そんな当たり前の意識が、今の日本代表はおろそかになっている。
強引なミドルシュートの2点目を含め、この日の韓国がいいお手本になる。
単調な攻撃で完敗。戦術よりも個人の判断力。「リスク承知で世界と違うプレーをしない限り、太刀打ちできない」。また、殻を破らないと独創性、個性ある変幻自在な動きは期待できないだろう・・・。
私自身も、テレビで観戦しながら、何かふがいない攻撃振りが不満で見るのをやめた。
翌、2日の読売新聞では「基本重視の『先』がない」と言う記事が目にとまった。
云い得ている!なにか我が国のデザイン事情とも重ね合わせて・・・。
まるで基本重視の「先」がないのだ!基本を学ぶが激変する社会を読めず、これまでのレールの上をただ、走っているだけ・・・。
我が国の方法論やマネージメント重視を打ち上げた流れがそうさせた? 感性としての創造・発想力がないのだ。多くの企業が参戦し競い合う時代、時には勇気をもって飛び込んでいくことが必要なのだ。
● ヨナは韓国を代表するブランド・・・
五輪フイギュアースケート金メダリスト「ヨナは韓国を代表するブランド」、先進一流国家入りを目標とする李明博大統領直属の「国家ブランド委員会」は、「国家の格」を高めようと様々な策を立案してきたが「ヨナ以上にブランド力を向上したものはいない」(政府関係者)という。米経済誌フオーブスは『バンクーバー五輪出場全選手の中で、年収1位(約800万ドル=7億1400万円)に選んでいる。韓国の最大財閥サムスンなどの企業の「顔」としてCM出演料1本当たり、約12億ウオン(=9200万円)。