「考えるより、感じて欲しい」、と・・・・
昨日からの雨・・・。
もう止むのでは、と思わせぶりな気配を見せながらまだ降り続いていた。
上野駅公園口出口。しかし、そこは既に人々で溢れ、行列が出来ていた。
上野にある美術館や博物館の入場券を予め買う列だったのだ。
そこから人々は思い思いの方角に歩き出していた。
いま話題の「ルーブル展」や「阿修羅展」の開催もあり、多くはそこに向かっているようにみえる。
「Story of・・・」カルティエ クリエイション/めぐり逢う美の記憶展は東京国立博物館 表慶館(’09/3・28~5・31)で開催されていた。
日仏交歓150周年記念の特別展でカルティエの“記憶”を体感させる演出と展示も話題になっていたものだ。1,370点余ものティアラ、ネックレス、ブレスレット、ブローチ、ペンダントなどの宝飾品を所蔵するカルティエコレクションのなかから、約276点が展示され、日本では3度目なのだという。世界でも有数のジュエラー、「カルティエ」の展覧会であり宝飾品のひとつひとつに宿る“記憶”にフォーカスし、ジュエリーにまつわる映像や文字を背景に映し出すというのだ。
「宝飾品と言うと、石の美しさや造形を楽しむことが中心ですが、今回はカルティエのクリエイションが生み出した時間や歴史に焦点を当てました。
どんなふうに生まれて、誰にどのように使われてきたのか。作品ひとつひとつに宿る物語を映像化しました。作品に眠る“記憶”を蘇らせて、それがあたかも自分の頭のなかにぼんやりと浮かんでいるような、不思議な感覚を体験してもらおうと思ったのです」と。この展覧会の監修と会場構成を手がけたデザイナー吉岡徳仁さん。
頭で考えるよりも「感じてほしい」と・・・・・
会場は薄暗く、ショーケースの上部に組み込まれたスポットライトの光に反射する宝飾品を浮かび上がらせている。その背景にはまるで蜃気楼のようにふわりと宙に浮かんで見せる映像が幻想的でもあった。
王侯貴族やマハラジャ、女優などの映像が浮かび飛沫状になっては消える・・・。
ガラス面に額を押し付けると暫し時間を忘れて見入る女性も・・・。
人の流れが淀みがちだ。
暗がりに目を凝らして見渡してみると来館者の多くが女性。
幾つかの展示室を回る中で、ひときわ大きなため息は彼女らのものだった。
ジュエリー工房の作業台を前に職人が作業をしている後姿の映像が重なる・・・。
工房の作業台を中心にぐるりと取り巻いて眺めているように、向こう正面にはその手元を見つめる人々の顔が見える。
その正面に回りこんでみると、その作業台での作業映像はなく工房の製作風景やそのプロセスを説明する映像に変わっていた。
数人の職人が拡大鏡を目に、数百個のダイヤモンドやヒスイなどをフレームに嵌め込み、組み合わせる繊細な加工作業・・・。
微かに香水の香りが・・・・・
過去の「記憶」は未来への「予感」へと変わる白いシンボリックな香水の香りが漂う空間・・・。
訪れた人々の記憶に残したいという“仕掛け”・・・。
2年をかけたプロジェクトだと言うその仕掛けも、逆ピラミッドのデスプレイに投映される映像は特殊なガラス加工技術があってのことらしい。
技術力と現場力が結集した結果だともいう。
カルティエの眩いほどの宝飾品に触発されたが、私にはそれにも増して繊細な作業を営々と繰り返す職人の技に興味引かれていた。
デザインへの思い、デザインの源、自身について・・・・
この監修と会場構成を手がけた吉岡徳仁さんはエル・デコ インターナシヨナル デザインアワード2009で、デザイナー・オブ・ザ・イヤーを受賞している。
あまり語られることもないと云う吉岡自身について、「エル・デコ」誌 102号では、特別企画として102の質問で問いかけている。
その中から、興味ある幾つかの項目を転載させて頂いた。
(1)「story of・・・」展で作り上げていく中で出会った新鮮な喜びは?
・歴史の奥深さと、現代も歴史の1部だと言うこと思い知らされました。
(17)自分のデザインを定義すると?
・形ではなく感覚をデザインする、と言うこと。
(22)吉岡さんが独自のデザインを生み出す源となっているものは何ですか?
・自然。飛行機の窓から見える雲や、電車から見る川の流れの速さ、海の波の高さ・・・。そういう自然とリンクする何かが自分の中にあるんです。
(35)この世に存在する最高のデザインは何だと思いますか?
・自然物の全て。勿論、ぼくらもしっぜんの1ぶですが、人間はアリ1匹作れないんですよね。
(36)自分のなかで「この感情を失ったら自分ではなくなる」と思う感情は?
・感動。人間は感動する動物ですから。
(44)宝物は何ですか?
・アイデアです。
(45)吉岡さんのアイデアが枯渇しないのはなぜででしょう。
・アイデアが出せるようになるかどうかは訓練次第なんですよ。スポーツと同じで、学生時代にこんなことばかりやっていて何になるだろう?と思いながらやっていた基礎的なことが、いちばん重要だったと思います。
(62)デザイナーとして活動するようになっていちばんの「学び」はなんですか?
・作品は自分の中だけではなく、人に喜ばれて初めて完成すると言うこと。
独自のこだわり・・・。
・「人が生産したものではない、自然の美が生み出された。やはり、「自然」と「感覚」ですね!アリ1匹も作れない人間、自然の偉大さを実感している・・・」と
・「かたちのデザインの時代は終わってきたんじやーないかと思う。
じゃー デザイナーは何をやればよいのかと言うと、僕が一番重要な要素と思っているものは身近なものの美しさを再発見したり、自然の美しさであるとか、そういうところにヒントがあると思っている」と。
・また、ELL DECO日本版 編集長は「普段、自分が何気なく使っているものが こんな美しい世界を作ることができるんだというマジックって誰にも出来ないんですけど、そこが吉岡さんが国境を越えて評価されている理由だと思います」と
(TV-ZERO カルチュアー特集より)
「作品」を見ること、「著書」を読み、「話」を聞くことだ!
学生諸君からも尊敬するデザイナーとしてもよく聞いていた名前だ。
尊敬するデザイナーならば徹底的に知ること、「生き方」や「方法論」に学ぶことも必要だろう!
ただ、「作品や名前を知っています・・・」と、いうだけでは「知っている」などとは云えないからだ・・・。
(2009/5・31 記)
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メモ:
吉岡徳仁(よしおかとくじん)
1967年生まれ。倉俣史朗、三宅一生のもとでデザインを学び、2000年、吉岡徳仁デザイン事務所を設立。紙の椅子「Honey-pop」やヤマギワの照明「ToFU」、104度の窯で焼き上げる椅子「PANE chair(パンの椅子)」などがニューヨーク近代美術館(MoMA)をはじめとする世界の主要美術館のパーマネントコレクションに選定。
2007年の「デザインマイアミ」
近作には
・小さく四角い布を椅子の骨格に貼り付けて花束のような椅子
・また料理用グラシン紙を4kgを使いハニカム状に加工し、ソフアー状に成型した椅子
・ストロー200万本を使い、大空間に竜巻を演出してみせるデモンストレーシヨン
・「ヴィーナス結晶の椅子」ポリエステル繊維を椅子型にし、特殊な溶液につけて繊維を付着させたもの。1ヶ月ほどで自然に吸着が進み200gの椅子が完成するのだとか。
●エコカー開発は戦国時代へ、日産が目指すブルー・オーシヤン戦略!
ハイブリット車が市場を占めるのか、と思われる中で、その次を目指した電気自動車の開発に日産自動車は挑戦していた。
来年度より売り出すのだとか・・・。
かい17年をかけた独自開発のバッテリーは飛躍的に小型化され、高性能に・・・。
走行環境インフラの布石も既にあって、30分の急速充電で100キロの走行が可能だとか。
昨年、東京から北海道・洞爺湖まで858.7kmの走行で電気自動車で走行実験した自動車評論家・館内端(日大・理工学部卒)氏によれば、使った電気電気85.65kwh、CO2排出量35.12kg、電気代1,713円だった。
また、ガソリン消費量 85.9L、CO2排出量199kg、ガソリン代9,449円だったとしている。
ハイブリット車でも最低3,000円は掛かるのではと推測されている。