デザインは常に未来へ向けた「モノづくり」・・・。
その発想は理想とし、あるべき未来の姿と人々の意志を反映した時代の先端を拓くものでもある。
「デザイン・ビジョン」は、そのデザインを動機付け、コンセプトを確かなものにする。
社会生活の先を読み、次代への潮流を捉えることがデザインの適切な方向性を見出し得るものにもなる。あるべき方向を見失わず、本質へ触れる感性と洞察力を大切にしたい。
デザインビジョンは、まさに時代を捉え描く力。
その能力は勿論、一鳥一石に身に付くという簡単なものではないが「意識した」日々の生活、心がけが大切なのだ!
人が生き続ける社会、また、それを取り巻く環境の、その先にある変化は混沌として捉え難いもの・・・。
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「1970年代、アメリカでは未来社会を予測した本が、様々な著者によって出版されており、なかでもジヨン・ネイビッツによる『メガトレンド』がその最右翼であった。引用しているデータの多様さと的確さはまさには驚嘆するもの。産業構造の変化と、われわれのライフスタイルの変化との相関関係を現実に即して合理的に説明してもいる。変化の時代にあって、人々は自分たちの生活が今後どの様な方向に進んでいくかに、大いに関心を持っている。’82年に出版された『メガトレンド』は、アメリカ社会の今後を左右する10の巨大な潮流と動向を示したもの、それはそのまま我が国の未来を知る上でも重要な手掛かりとなるはずである」と、翻訳者竹村健一氏は述べている。
当時のアメリカは工業大国としての確固たる地位を保っていた。
そして、宇宙開発競争、工業化社会から情報化社会への移行が現実となつた時代でもある。コンピュータによって成長、教育、学習を通じて頭脳力の拡充がはかられ、それまでの自動車によって結合された物理的空間に対して、電子技術によって結合された概念上の空間が築かれようとしていた。
ジョン・ネービッによると「アメリカ人が今生きている時代はまるで現在を過去と未来から切り離したような時代」と表現していた。「工業化され経済的に独立した社会、一方では高度のテクノロジーを駆使して諸問題の短期解決を目指している・・・。けれどアメリカ人が取った態度は人間的といえる「未知の未来」を恐れるあまり、「既知の過去」にすがっていたのだ。
変動と模索の時代、工業社会から情報化社会へ移行するにつれて、体力のかわりに知力を働かせて物を創造するようになる。最大の難関は新しい時代に働く者の育成。簡単な算数問題も解けず、基礎的な文章もかけないような今日の大学卒業者には期待できない」とも。どこかの国でもよく聞いたことだが・・・。
「アメリカ人が未来の有望産業を考案する気もなく、破綻した企業と絶縁も出来無いまま足踏みしている間に、日本および、第三世界の『もう一つの日本』ともいえる諸国は、電子工学や生物工学、その他の新しい分野で自由自在にアメリカの面目をつぶしていることである。しかし、アメリカの企業にも、長期計画と妥当な報酬制度の利点を悟り世界有数の企業として情報や知識、専門的技術を提供すれば更に飛躍する好機がつかめると認識したように思われる企業がある」
70~’80年代といえば、アメリカ・サンフランシスコ南東部の峡谷・シリコンバレーに半導体メーカー、高度のエレクトロニクス企業群が進出しており、新たな産業としての兆しを見せていた。サンマイクロ・システムズ、アップル、マイクロソフトなど・・・。
それらはまだまだ小さな芽、やがて全世界を覆う巨大企業になったものだ。
その予測、読み取りは興味深い・・・。
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当時、我が国においても「未来学」ブーム(’70)があった。
大阪万博(’70)が行われ、田中角栄による列島改造論(’72)に沸き、東京ディズニーランドも開業(’83)した。
’74年にはGNP世界1、右肩上がりの経済発展は脅威と言われ、未来学者ハーマン・カーンをして「21世紀は日本の世紀だ!」とも言わしめた時代だった。
確かに、このメガトレンド・10の潮流は、その後の我が国、今日の社会にも重なるものでIT革命、フラットな世界の出現を予感させるに十分なものでもあった。
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また、「これからの10年・大予測」に著者・船井幸雄氏は「地球規模の大変化が2020年までに起こる」のだという。共産主義の破綻を指摘し、次に資本主義の矛盾を、崩壊を予測してもいる。その変化、法則性にも興味ひかれている。
さらに、<これまでの常識的な生き方>に対して、<→これからの生き方>に急速に変化しているのだとか、氏の著述に従って対比、記載してみた。
(1)他に干渉し、自他を評価し、→他に干渉しない、自他共に評価しない、 (2)自分が1番大事で、→自他共に同じで、 (3)区別、差別をする、→区別、差別をしない、 (4)分けて考える、→まとめて考える、 (5)肩書き、資格等をありがたく思う、→名前や肩書き、資格、賞罰などは不要、 (6)もらうことを考える、→与えよう (7)秘密をつくり、→秘密や嘘を無くそう、 (8)例外事項は無視、→例外やびっくりこそ大事、 (9)比較を喜んでやり、→比較はやめよう、 (10)理性に従って生きるのが何より大事、→感性に従って生きよう、 (11)時には良心に反することも、→良心こそ何より大切、絶対に良心に従おう、 (12)競争は善であり、→競争は悪であり、絶対に行ってはならない、 (13)複雑な生き方を進化の証拠だと思って喜び、→単純に生きよう、 (14)絶えず他人の目を気にして、→他人の目なんか気にしない、
確かに、これまでの常識としてきた生き方が急速に変化している。
日常的に目にする非常識?超常識的?な生き方が次世代ということになる!
(May 31 /’07 記)
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追伸:麻疹による思いがけない休講、20年ほども前に読んだ「メガトレンド」をはじめ数冊の予測の書を引っ張り出して読み返してみた。当時の予測の信憑性を確認し、これからの予測を検証したいと考えたものだ。
vision:
未来を見通す力、先見性、洞察力、想像力 心に描く像:未来図、理想像 美しい光景
マクロ、特にテーマに関わるミクロなビジョンが発想を助けるものになる。
我が国に於けるモノの輸出、あわせて優れた頭脳が輸出されてもいるのだとか。
その事に危機感を持った政府は技術者の待遇改善の再考を促してもいる。
韓国、台湾、中国、アジア諸国等の技術発展途上国にとっては、その頭脳・技術輸入に糸目をつけない。秘書付きのビップ待遇、1億円以上の報酬提示など技術者としてのプライドをくすぐられるもの。青色発光ダイオードで知られる中村修二氏も間髪を入れない数箇所のヘッドハンテング、魅力的な条件提示に驚いている。
しかし、国内での評価、反応は殆ど無かったのだと告白している。頭脳の価値評価が出来ない経営者、流失は、我が国の巨大な損失でもある!