「ここまで連勝するとは‥‥」。
新人らしからぬ少年の参入にも高をくくっていた若手や古参棋士も心中穏やかではなかったろう。慌ててAI思考時代の天才と言われ始めた藤井四段を徹底的に研究することに。同じように、幼児期には神童、天才と言われプロ入りした棋士たちも多い世界だが、こと更に、コンピュータAIによる分析、指し手の特徴や欠点などの分析研究が戦力に重要だと気づかされたということだろう。 そんな包囲網の中での対戦にも14歳2ヶ月の最年少プロは勝ち進んだこと、29連勝という前人未到の記録を達成し、その素朴な人柄の魅力もあって将棋ブームをも引き起こしていたことだ。
また、藤井五段(15歳)は、棋士界の第一人者と認められて『国民栄誉賞』を受賞したばかりの羽生善治2冠(47歳)と朝日杯オープン戦準決勝で初対局、羽生の反撃を下し鮮やかな攻めで勝利している。「ずっと難しい局面だった。微妙な局面で私の方がミスをしてしまった」と、これもまた、天才と呼ばれていた羽生善治は敗戦を語っていた。ただ1戦のことであれ、まだまだ未熟であるはずの15歳、32歳も違い実践実績を上げて来たはずの敗戦はショックだったに違いない。藤井六段について「しっかり落ち着いた指し回しで、安定感がある。時間が短い中、決勝でも1手1手冷静に指されていた。10代は成長期、大きな可能性を秘めており、これからも伸びていくと思う」と。
ところで先日、第45回 将棋大賞の選考会が東京・千駄ケ谷の将棋会館で行われた。2017年度の『最優秀棋士賞』に、史上初の永世七冠を達成した羽生善治竜王(棋聖)が決定、受賞は2年ぶりだが22回目になるのだとか。
史上最年少プロ藤井聡太六段は、公式戦29連勝を記録し、朝日杯将棋オープン戦でも羽生に勝利しての優勝・・・。
とにかく「対局数」、「勝利数」、「勝率」、「連勝」と言う対局記録の4部門全てに実績ある先輩棋士を差しおいてダントツのトップだから凄い! 審査委員9名中の4名の票を得たというが、議論あっての結果だったろう。最優秀棋士賞と同等の『特別賞』、併せて『新人賞』を受賞している。
「昨今の将棋界は尋常ではないスピードで変化を続けているので、フットワーク軽く前進を続けたい」と羽生善治竜王がコメント。棋士にとってのAI。いま、AI思考力の進化は人間の思考力を超えてなお進化を続けている。その相乗効果となるのだろう、藤井六段の才能もまた、厳しい対戦を経るごとに学習し、天才はより深く研ぎ澄まされていくのだろう。
(2018・4・7記)
・トップ棋士でも頭を悩ませる難問だという、「ツメ将棋解答選手権チャンピオン戦」、小2からズバズバ解いていたと言う藤井少年、小6から中学2年までに3連覇。同選手権はツメ将棋を解く「速度」と「正確さ」を競う。今回も、東京、大阪、名古屋の3会場にプロやアマなど105人が参加した。チャンピオン戦は前後半各90分。1問10点、前後半各5問の100点満点だ。最大39手でツム難易度の高い問題に挑戦し、正解した問題数とタイムで順位が決まる。藤井は午前の第1ラウンド(R)では制限時間90分のうち全会場で最速の55分。5問全問正解で単独トップにたつと午後の第2Rでも制限時間一杯を使い全問正解の100点満点の4連覇を成し遂げている。