夏まっさかり。毎日暑い暑い。子供達にとっては絶好の水遊びの季節がやってきました。海や川やプールで楽しそうな声が聞こえてきます。しかし連日、痛ましい水の事故のニュースにも胸が痛みます。
梅雨明けの少し前、日本赤十字による救急救命の講習を受けてきました。幼児や乳児に対する心肺蘇生法です。心臓マッサージというとなじみがあるかもしれません。心肺蘇生法は専用の人形を意識のない子供と仮定して行われます。人形は幼児のタロウくんと乳児のハナちゃんです。リアルで少し身じろぎしてしまいます。また公共の場に多く普及してきたAEDも使って講習は行われました。まず倒れている子供の周りに危険なものがないか確認します。
いきなりですが、ここが大きなポイントです。周囲の安全を確認すること、つまり「自分自身の安全を確保すること」が大切です。自分が安全な状態であってはじめて倒れている子供を助けられるとのこと。なるほど、と考えさせられました。安全を確認したら軽く肩をたたきながら耳元で声をかけます。乳児の場合は敏感な足の裏をたたきます。慌てているからといって、決して子供の体を乱暴にゆすってはなりません。「タロウくん!どうしたの!」相手が人形であることは忘れ本番さながらに真剣に声をかけます。
周りに協力できる人がいれば救急車とAEDの手配をお願いします。このとき必ず「119番に通報してください」とお願いすることが大事だそうです。協力を求められた方も動揺してしまい、110番やときには117番などに電話してしまうことがあるそうです。ちなみに117番は時報です。もし周りに協力してくれる人がいなかったら傷病者が子供の場合は119番通報より先に心肺蘇生を始めます。8歳未満の子供は呼吸停止による心停止がほとんどで、すぐに心肺蘇生を行えば救命できる可能性が高いそうです。
まず、アゴを二本の指で引き上げ気道を確保し呼吸をしているかどうか確認します。呼吸がなければ息を2回連続して吹き込みます。そして手のひらで胸を30回圧迫します。強さは胸の厚みの3分の1が沈み込むくらい。乳児の場合は中指と薬指、2本の指で圧迫します。この30回の圧迫と2回の人工呼吸を5サイクル繰り返します。この5サイクルでだいたい2分間かかります。もし、周りに協力できる人がいなかったら、ここまで一人で行って初めて119番に通報します。またAEDが近くにある場合は人工呼吸と心臓マッサージを行ってから傷病者に装着します。(1歳未満の乳児にはAEDは使用しません。)AEDは音声案内と点滅ランプで実施することが指示されます。この人工呼吸と心臓マッサージ、AEDの装着をしながら救急車を待ちます。救急車の平均到着時間は6分ほど。この間の心肺蘇生をするかしないかで救命の確率は大きく変わってきます。もし一命をとりとめたとしても、もう笑ったり泣いたり遊んだりできないのかもしれないのです。倒れている子供の意識を確認して、気道を確保して呼吸を確認して、人工呼吸と心臓マッサージをして、119番通報して、AEDを装着して、さらに人工呼吸と心臓マッサージを繰り返しながら救急車の到着を待って。
ここまで思い出しながら書いてきましたが、本当に目の前で起こったらできるのか。ましてや自分の子供だったら頭が真っ白になってしまうかもしれません。AEDも音声案内があるとはいえ、使ったことがなければ二の足を踏んでしまうでしょう。講習の機会を利用して繰り返し体で覚えるしかありません。
もちろん、それ以前に事故に遭わないようにすることも大切です。あらかじめ天候の様子を十分に把握したり、危険な場所には近づかないようにしたり。マリンスポーツの場合は、ライフジャケットを着用することも重要です。どんなにセクシーなビキニを着ていようと自分や大切な人の命を守るため、ライフジャケットを身につけることも忘れずに。
このコラムを書いている間にも、神戸市灘区の川で子供3人を含む4人が亡くなる事故がありました。映像をみると、普段はおだやかで憩いの場という言葉がぴったりな川です。胸が痛みます。子供を守る立場の人には、より高い危険予知能力が求められているのかもしれません。
もうすぐ2歳になる息子は水が大好きです。怖がる様子もありません。これから水の怖さも伝えて行かなければ。楽しさを教えるよりも怖さを教えることの方が難しいと日々感じています。
どうか皆さん、事故のないよう楽しい夏休みを過ごしてください。
2008.7.30
増子瑞穂