■増子瑞穂さんの「キャスター・マッシー通信」連載 - 31(4/29/2006)
「先ず、優しさを思う席」
ようやく暖かくなってきましたね。今年は例年になく大活躍したダウンともしばしお別れです。さて、私、9月に出産する事になりました。現在妊娠6ヶ月です。
お陰さまで体はすこぶる快調で、仕事は7月いっぱいまで続ける予定です。
とはいえ、初体験の「つわり」というやつは辛かった。私も妊娠するまで知識がほとんどなかったのですが、妊娠というのは最初の2、3ヶ月が一番辛いのです。まだまだお腹が目立たず周囲から見て、妊婦とわからない頃。症状は様々らしいのですが、私の場合は地味な二日酔いが延々続く感じ。でも人によっては一日中寝こまなければならず、時には入院が必要な場合も!幸い私は仕事を続けられる程度でした。実は日芸の卒展の企画のあたりが丁度それにあたっていて、結構辛かったのですが、学生パワーをいただきなんとか乗り越えられました。協力してくれた皆さん本当にありがとう!
妊婦になってから日々の中でこれまで体験しなかった事に遭遇します。それは電車で席を譲られるということ。何年前からか、電車やバスの「シルバーシート」は「優先席」と名前を変え、お年寄りのためのものから、他にも妊娠している人や乳幼児をつれている人、けがをしている人のための席になりました。
実際妊婦になってみてこの理由がよくわかります。
妊娠中頃になってお腹が目立つようになると、周囲が気を使ってなるべく安静にさせがちなのですが、これは少しちがいます。5ヶ月を過ぎて安定期に入ると妊婦は体力をつける意味でも太り過ぎを防ぐ意味でも結構体を動かした方がいいのです。(もちろん順調な妊婦の場合ですが。)ですから、私も会社の中ではなるべく階段を使ったりちょっとした用を見つけて立ったり座ったりしています。
でもそれは安全が確保されている場所での話。電車の中では、大きく揺れたり、急ブレーキがかかったりと、はずみでお腹をぶつけてしまう恐れがあります。なので電車ではなるべく座るようにしたほうがいいと思っています。そんなときに「優先席」の存在はとてもありがたいのです。目の前で座っていた人がスッと席を譲ってくれる事も多くなりました。席と一緒に優しさももらった気がしてとてもうれしくなります。
しかし、そうではない場合も。どう見ても健康的な、若い人や中年が平気な顔をして優先席に座っているのもよく見かけます。音楽で完全に周囲の音を遮断していたり、本を読みふけっていたり、熟睡していたり。先日などはお年寄りが、さらにお年寄りに席を譲っているのを目撃してしまいました。周囲に譲るべき人材は沢山いたのに。あいている優先席に座るか座らないかは人それぞれの考え方があると思います。妊娠前の考え方は座らない派でしたが、もし座るのであれば、席を必要としている人がいないかどうか常に気を配りながら座るのが望ましいのでは、と思っています。明らかにどこぞの企業とわかるバッチをつけて熟睡しているサラリーマンを見ると、景気回復なんてまだまだ先だなと思ったりします。
ほんの少しの気配りで仕事はなりたっていますから。それでも、優先席に限らず席を譲ってくれる人はたくさんいます。サラリーマン、若い女性、様々です。感謝しながらこの経験を何かに生かせないかと日々考えています。
ひとつだけ、提案があります。少なくとも、優先席で熟睡してしまうのはやめませんか。人としてみっともないし、そこから何も始まらない気がします。春爛漫で、電車に揺られてついウトウトって気持ちいいんで
すけどね。
2006.4.29 みどりの日
増子瑞穂