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増子瑞穂さんの「キャスター・マッシー通信」連載 - 33(6/30/2006)

「車内での出来事」

ここに書くべきかどうか迷ったんですけど、これも妊婦だからこその体験だと思うので記しておくことにします。

先日、山手線での出来事です。妊娠もまもなく8ヶ月になるころ、日に日に腹は大きくなり、よろよろ歩く日々が続いていました。
その日も仕事のため、朝9:50分頃池袋駅から山手線に乗ろうとしていました。
ホームに着くともう電車は止まっていて、ドアが開いていましたが時間調整で停車していたようです。ゆっくりと乗ろうとしたところ、丁度ベルがなりました。
すると後ろから50代後半くらいの女性が、駆け込んで来て私にぶつかるようにして乗り込みました。幸いドアの手すりにつかまり、転倒することはありませんでしたが、一瞬ヒヤッとしました。
中年女性は悪びれる様子もなく「あらあらごめんなさいねぇ。」とニコニコ顔。
わたしは思わず、「危ないですよ。」とつとめて冷静にたしなめるように言いました。
すると、その中年女性は「突き飛ばしたわけじゃないじゃいのよっ!」と逆上。
他の人も駆け込んでる、だの、こっちも忙しい、だの、明らかに理不尽なことを口走り始めたのです。
こちらは妊婦であり、足元がおぼつかないし、ましてや後ろから押されたら危ないことこの上ないこともきちんと説明したのですが、逆上した中年女性にはもう聴く耳はありません。自分の行動を正当化しようと必死です。
最初は対応していたのですが、そのうちばかばかしくなってきたというか、相手にするのもストレスになってきたので、ほうっておくことにしたところ、ますます中年女性は逆上し一人で話し続けています。
聞けば、「自分も足が悪く大変な思いをすることがよくあるけど、席を譲ってもらえることはそうそうない。体が弱い人もがんばっているんだから少しぶつけられたくらいで文句を言うな。」との内容。(この際、足が悪くても駆け込み乗車ができるのかという問題は置いておく事にします。)
この女性がこういう考え方になってしまったのも、電車で大変な思いを重ねてきてしまったからなのかな、と気の毒に思えてきました。もっとやさしい世の中なら、この人もこうはならなかっただろうにと。
前々回のコラムでも優先席について触れ、一般の人が座る座らないは自由と書かせていただきましたが、やはり、必要のない人は座るべきではないと思いました。
あの席はやはり、必要としている人のために開けておくべき場所なのだと。
しかし、今の状態「おゆずりください」や「みなさまのやさしいお気づかいを」などの表示やデザインでは無理なのだと思います。
例えば映画館の椅子のように普段は折りたたまれていて座れないようになっており、表示も「一般の方は座らないでください!」などといった強いものにするとか。

外国で子供を産んだ友人の話では、小学校から、体の不自由な人、妊婦などの対応を教育するそうです。なので、子供でもそういった場面になると、ドアを開けてくれたり、席を譲ってくれたりするそうです。
日本も子供に英語などを学ばせる前に、教えるべきことがあるのではと話していました。

さて、その中年女性のその後ですが、散々一人で騒いだあげく、今度は仲介に入ってくれたサラリーマンに逆上し始め、電車を降りていきました。なんともトホホな話です。
しかし、私が妊婦と仕事を両立させられるのもあと1ヶ月。日々起こるドラマを貴重な体験ととらえつつ今日も電車に揺られています。

2006.6.30
増子瑞穂



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