■増子瑞穂さんの「キャスター・マッシー通信」連載 - 82(10/02/2010)
「親がしいたレール、自分でしいたレール。」
先日、息子が4歳の誕生日を迎えました。記念に新幹線に乗って東北方面へ旅行に行ってきました。乗ったのは息子の憧れ、2階建ての新幹線MAXです。2歳の誕生日の頃、同じように新幹線MAXに乗って旅行をしたコラムを書きました。あの頃はまだベビーカーが手放せず、らせん階段を昇り降りしなければならない2階建ての新幹 線に苦労したものです。4歳になりベビーカーも必要なく階段もスイスイ昇り降りできるまでに成長し、本当に楽になったと感じます。娘も5ヶ月、まだ抱っこひもでどこへでも行け、身動きがとりやすい時期です。
新幹線MAXに大喜びだった息子。先日などは「日本の最新型新幹線をカリフォルニア州のシュワルツェネッガー知事が視察」というニュースを真剣に見ていました。
このように新幹線をはじめ電車が大好きな息子ですが、電車に魅せられたきっかけは、プラレールです。実在する新幹線や在来線をモデルにした本物そっくりの電車のおもちゃです。このプラレールを好きになった事がきっかけで、本物の車両にも興味がわいたというわけです。今回の旅行にも息子の手には誕生日プレゼントのプラ レールMAXがしっかりと握りしめられていました。
またこの夏、プラレールはマクドナルドのハッピーセットのおもちゃにもなりました。普通のプラレールのおよそ半分の長さの車両がセットのおまけ。全種類制覇を目指して夢中になった家庭も多い事でしょう。もちろん我が家もそうです。
1959年(昭和34年)、プラスチック汽車・レールセットという名前のプラレールが初めて発売されてから50年あまり。プラレールは今の子ども達のお父さん、あるいはおじいさんの世代から受け継がれているおもちゃです。私には男の兄弟がいないのですが、なぜかうちにもプラレールのおもちゃがありました。きっとどこ からかお下がりでもらったのだと思います。それくらいプラレールは子どものいる家庭に結びついたおもちゃだということでしょう。
新幹線や山手線、地下鉄、各私鉄、さらに蒸気機関車などたくさんの種類があるプラレールの車両ですが、その名前の通り主役はレール、プラスチックのレールにあります。
レールは、長さ215ミリの1本の直線レールが基本になっています。この直線レールの半分の長さのレールや、4分の1の長さのレール、また直線レールの2倍の長さのレール、さらに曲線のレールを組み合わせて線路をつなげます。曲線のレールの半径の長さは、基本の直線レールと同じ215ミリ。曲線を組み合わせてもきれ いにつながるように設計されています。
もちろん最初のうち、子どもは何も考えずどんどんつなげてしまい、つじつまが合わなくなってしまいます。それでも何度もレールをつなげていくうちに、なんとなく足したり引いたりの算数的な感覚が身につきます。そしてなによりも手を使うことが子どもの発達に役立つのではないかと思います。
時々、ほんの数ヶ月で子どもがプラレールに飽きてしまうという話を聞きます。もちろん、子どもの好みはそれぞれですから息子のように電車に夢中になる子もいれば、クルマに夢中になる子、戦隊ものに夢中になる子など様々でしょう。それでもプラレールを長く楽しむため、プラレールの楽しさに気づくための、我が家のコツを ひとつご紹介します。
プラレールの車両は中に電池を入れて、レールの上を自動で走らせる事ができます。長くつなげたレール上を自動で走る電車の様子は、大人が見ていても楽しいものです。しかし、我が家ではずっと車両に電池を入れていませんでした。小さな子どもにとって、自動で動くおもちゃは楽しいけれど、飽きてしまうのも早いのです。そ れは、「動くのを見ているだけ」になってしまっているからではないかと考えています。
自動で電車を走らせることを遊びの目的にした場合。小さい子どもはどうしても自分でレールをうまくつなぐことができず、結局親がレールをつないでやることになってしまいます。これではレールをつなぐという本来の「遊び」が、電車を自動で走らせるための単なる「手段」になってしまいます。子どもは、親がしいたレールを 走る電車をただ見ているだけ。これでは飽きるのが早いのも仕方がないかもしれません。
そこで一定の期間、車両に電池を入れないことにします。すると、自動で電車を走らせることが目的ではなくなります。レールをつなげること自体が遊びになります。子どもは何度でもレールをつなげてはバラバラにしを繰り返します。そして子どもがつなげたレールで、車両を手で転がして遊ばせるのです。子どもが小さいうちは これで充分だと思います。
そしてある程度成長して、自分で電池を出し入れ出来るくらいになったら、そこで初めて車両に電池を入れて遊ばせるのです。自分で電池の出し入れが出来るようになっているということは、手先が充分に器用になっているということ。その頃には自分の知恵と手でレールをつなげる楽しさに気づくようになっています。
うまくレールがつながっていないと、電車は止まってしまったり脱線してしまったりします。すると子どもはまたレールをつなぎなおします。つなげては電車を走らせ、またつなげて。レールのつなげ方はそれこそ無限です。新たにレールをつなげるたび、子どもの創造力が豊かになっていくのを感じます。自分でつなげたレールを 走る電車の姿は、子どもにとってまた格別なことでしょう。
レールを足したり引いたりしてつなげる、手をたくさん使って遊ぶ楽しさに気づくとプラレールも長く楽しめるのではないかと思っています。
ちなみにこのプラレール、以前コラムで紹介した大きめのレゴ、デュプロとも相性抜群です。大きめに作られたデュプロはプラレールで作った世界で駅になったり橋になったりします。積み木などもいつの間にか橋脚になっていたりします。時々テレビのリモコンが見つからないと思っていると、駅の役割を果たしていることも。1 本のレールから様々な見立て遊びにもつながり、想像力も豊かになっているようです。
レールをつなぐ毎日。いつかレールをつないで遊ぶのを卒業してしまっても、創造力と想像力は未来につながっているのだと思います。
追記
プラレールを扱うおもちゃ屋のご主人に伺った、プラレールまめ知識をひとつ。まもなく冬がやってきますが、気温が下がるとプラスチックが固くなり、細かな接続部分などが割れやすくなるそうです。ですからこの季節には特に、レールをつなげたり、はなしたりするときは注意が必要です。逆に夏はプラスチックが柔らかくなり 、よくしなるため割れにくくなるそうです。季節にも気を配りながらプラレールを楽しめるとプラレールの達人へ一歩近づけるかもしれませんね。
2010年9月30日
増子瑞穂
http://members3.jcom.home.ne.jp/massyweb/
公式ブログ
http://gree.jp/mashiko_mizuho/blog
参考コラム
新幹線MAXについてのコラム
http://www.nudn.net/maccy/58.html
レゴデュプロについてのコラム
http://www.nudn.net/maccy/72.html
● 本物の新幹線MAXとプラレールのMAX
●プラレールの車両。短いものはハッピーセットのプラレール
●基本の直線レールや曲線レール
●創造力と想像力でつなげていく
●立体的!達人のプラレールの世界(撮影協力:趣味の店ひばりが丘店)